国際熱融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議/12月5日

国際熱融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議が発足


経団連は国際熱融合実験炉(ITER)の日本誘致に向け、「国際熱融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議」(会長 豊田会長,運営委員長 増澤国土政策委員長)を設置し、12月5日、第1回会議を開催した。当日は、ITERの担当官庁の科学技術庁やプロジェクト実施機関である日本原子力研究所の幹部を招き、国際熱融合実験炉(ITER)をめぐる最近の情勢と日本誘致に向けた課題について説明を聞いた(原研側幹部の役職は会議開催当時のもの)。

  1. 日本原子力研究所 下邨理事長挨拶
    1. 1992年7月から工学設計活動が進められている国際熱融合実験炉(ITER)の中間設計報告書が本年7月にITER理事会に提出された。中間設計報告書は各極で検討され、来週ドイツのガルヒンクで開催される理事会で了承される予定である。理事会後、いよいよ建設に向けて、建設サイトをどのように決定するか、建設に必要な国際的取決めをどのようなものとするか、実施主体や資金分担をどうするかなどについて予備的な検討が始まる。

    2. 日本にITERを建設する合意を形成することが我々の最大の課題であるが、そのためにまず国内においてITER計画への理解を得ることが重要である。経団連「国際熱融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議」の支援・協力を期待している。

  2. 日本原子力研究所 吉川副理事長説明
    1. 核融合の特徴は、
      1. 豊富な燃料資源、
      2. 高い安全性・環境保全性、
      3. 高いエネルギー発生率、
      4. 先端技術開発の推進力、
      である。核融合が開発を促進してきた先端技術には、リニアモーターカーで利用されている超伝導コイルのほか、遠隔操作技術であるロボット、高速計算を行うコンピュータ、高熱負荷が可能な耐熱材料、粒子ビームといったエレクトロニクスや通信分野のマイクロ波などがある。

    2. 核融合研究の進展を省みると、中心密度×保温特性および温度でそれぞれ10年ごとに1桁ずつ進歩している。日本のJT60など世界最先端の核融合実験装置である三大トカマクは、既に4〜5億度まで温度を上げることに成功した。次の段階である炉技術の実証を行うための実験炉(ITER)を経て、順調にいけば2030年に発電炉である原型炉、2050年には実証炉建設へと進むことになる。

    3. ITERはロシア科学アカデミーのベリコフ副総裁を議長、私を共同議長とする理事会の下に共同中央チームが置かれ、約150名の研究者がサンディエゴ、ガルヒンク、那珂の3カ所に分かれて工学設計活動を行っている。近く開催される理事会でITERサイトに関する交渉の準備を行う特別作業部会が設置される予定である。

    4. ITER国際協力のメリットとしては、
      1. 英知の結集(世界の頭脳・技術を結集)、
      2. 資金の節約(一国の負担を軽減)、
      3. 実用化への近道(分担による効率化)、
      4. 人類への貢献(エネルギー・環境問題への貢献)
      があげられる。

    5. 本年7月に理事会に提出された中間設計報告書では、最新の成果に基づくITERの設計は出力150万キロワット(50万キロワットの発電所に相当)、燃焼時間は1000秒としている。建設費用は58±(約8)億ドル(1989年当時の米ドル相当)、運転費は年当たり3.5〜4.0億ドルと見積もられている。サイト要件としては、用地面積70ha(+追加用地60ha)、本体建屋域耐荷重80トン/平方m、130万キロワットの冷却に必要な水量、定常23万キロワットの電力およびピーク時1,500人およびその家族のための社会インフラの整備などがあげられている。世界のトップレベルの科学者が生活するので、魅力ある街づくりが重要である。

    6. ITER建設候補地点としては、わが国では苫小牧市、六ケ所村、那珂町の3カ所が候補にあがっている。欧州ではカダラッシュ(フランス)、グライフスバルト(ドイツ)、スツートビク(スウェーデン)、米国では原子力関係の研究施設等があるサバンナリバーやオークリッジに加え、カリフォルニアが取り沙汰されている。

  3. 科学技術庁 興審議官挨拶
    1. 米国は財政問題が深刻であるため、ITER建設に向けてどのような対応をするかは現時点で微妙である。ロシアはITER計画を進めることによって科学研究を推進したいと考えている。欧州は各界あげて計画推進と誘致に積極的な姿勢を明確に示している。

    2. わが国においては、経団連が本年9月に「ITER建設計画を実現し、併せて日本への誘致を図るべく国をあげた取り組みを求める」旨を盛り込んだ意見書をとりまとめた。政界においても、本件に関する取り組みが徐々に進められているが、今まさに国をあげた取り組みが重要である。経済界の支援を背に一層努力していきたい。

  4. 豊田会長ら経団連首脳が日本原子力研究所那珂研究所を視察
  5. 豊田会長、鈴木副会長、増澤国際熱融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議運営委員長、古川資源・エネルギー対策委員長、山口産業技術委員長ら経団連首脳は12月15日、日本原子力研究所の那珂研究所(茨城県那珂郡那珂町)を訪問し、世界最先端の核融合実験施設であるJT60やITER研究開発棟など関連施設を視察した。


日本原子力研究所那珂研究所を視察する豊田会長一行


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