社会貢献推進委員会(椎名 武雄委員長)/12月14日

企業の社会貢献活動の状況について報告


社会貢献推進委員会では、「1994年度社会貢献・国際文化交流活動実績調査結果」について審議するとともに、専門部会の活動状況および市民活動の環境整備を目的とするNPO法案について報告した。また、「阪神・淡路大震災その後」をテーマとして、現地で復興に携わっている早瀬 昇氏(大阪ボランティア協会理事・事務局長)、山岡義典氏(プランニング・コンサルタント)、有馬実成氏(曹洞宗国際ボランティア会専務理事)を招き、説明を受けた。

  1. 「1994年度社会貢献・国際文化交流活動実績調査」について
    椎名武雄社会貢献推進委員長
    1. この調査は、経団連法人会員ならびに1%クラブ法人会員各社を対象とし、今回で5回目。回答社数は417社(回答率42.0%)。
    2. 94年度の社会貢献活動支出の1社平均は3億8,200万円、前年度比5.7%減。これは、新規回答企業が61社増えたこともある。この5年間おおむね4億円の支出となった。また、支出額の対経常利益比1社平均は3.25%。経常利益比を5年間の推移のなかで比較すると、前年度に続き3%台の水準を維持しており、企業が意欲的に社会貢献活動に取り組んでいることが窺われる。
    3. 阪神・淡路大震災のための支出額は1社平均3,400万円であった。
    4. 94年度に社会貢献推進のために新たな制度を導入した企業は39社(43件)。特に阪神・淡路大震災の影響もあり、社員のボランティア活動を支援するボランティア休職・休暇制度21件が顕著である。その他に青年海外協力隊参加休職制度の8件、マッチング・ギフト制度2件などの導入がみられる。このように各社は、工夫を凝らしつつ社会貢献活動の質的充実を図っている。

  2. 専門部会の活動状況
    1. 青木利元 社会貢献基盤整備専門部会長
    2. 企業と市民活動団体との仲介組織が必要とされているなかで、今年度は、その役割をになうべく設立が予定されているNPO情報センター(仮称)の構想についてヒアリングと意見交換を行なった。

    3. 島田京子 ボランティア専門部会長
    4. 今年度は、米国のフィランスロピー事情、企業・市民と非営利団体とをつなぐ機関としての「市民活動サポートセンター」の役割、公務員のためのボランティア休暇制度導入などについてヒアリングと意見交換を行なった。

    5. 土井智生 社会貢献情報交流専門部会長
    6. 今年度は、福祉の問題に焦点を当てて活動を進めている。これまで、福祉とビジネス、点字図書館への支援などについてヒアリングを行なった。

  3. NPO(非営利組織)法案の動向
    赤松啓次郎 社会貢献制度研究会座長
    1. 社会貢献制度研究会での検討状況
    2. ボランティア団体やNGOなど、NPOの法人化が政治的課題となっている。そこで当研究会では国会議員などを招いてヒアリングを行い、検討を続けてきた。

    3. NPO法案について
      1. 現在の民法による公益法人制度では、官庁の縦割り制、公益を要件とする許可制などが障害となっており、NGOやボランティア団体などの市民活動団体が法人格を取得して多彩な活動を展開することが難しく、国際的にも遅れをとっている。
      2. 経団連も、規制緩和の観点から公益法人制度の運用弾力化を長年にわたって強く主張してきた。そのような中で、阪神・淡路大震災に際してボランティアの活躍が高く評価されたこともあって、政府や与野党でも立法化を検討するようになった。
      3. NPOが市民社会における第三の柱として発展するためには、行政の裁量余地を排除してNPOの自律的活動を助長し、多様な活動を支援する制度の導入が不可欠である。
      4. NPOの税制上の優遇措置も必要であるが、税制のために法人格の取得が困難になるという事態は避けなければならない。

  4. 阪神・淡路大震災その後
    1. 大阪ボランティア協会
      早瀬 昇氏
    2. 阪神・淡路大震災の救援活動では、企業・市民の活動が高く評価された。この活躍は、企業・市民と現地をつなぐコーディネイト機関の存在なしにはあり得なかった。今回の経験を一過性のブームにしないためにも、企業・市民と非営利団体とのパートナーシップをより強固にする必要がある。そのために大阪ボランティア協会としても東京に拠点を置き、広範に活動していくことを計画している。企業のご支援を得たい。

    3. プランニング・コンサルタント
      山岡 義典氏
    4. 阪神・淡路の復興は、時間も労力もかかる「まちづくり」の段階に入ってきた。被災地のまちづくりのためには、住民が主体となってまちづくり活動を継続してゆく必要がある。
      そこで、地元組織の活動とそれに協力する専門家の支援のために、「阪神・淡路ルネッサンス・ファンド」を設立した。ご支援をお願いしたい。

    5. 曹洞宗国際ボランティア会
      有馬 実成氏
    6. 曹洞宗国際ボランティア会では、現在、長田・兵庫区の仮設住宅巡回を中心に活動を行っている。仮設住宅では孤独死や自殺などの問題に直面しており、「心のケア」が重要な課題となっている。ところが、仮設住宅に関わるボランティア団体も資金・運営上の問題を抱え疲弊している。今後、仮設住宅におけるコミュニティー作りにも力を入れていきたいので、ご支援をお願いしたい。

  5. その他
    1. 96年2月8〜9日、経団連ゲストハウスにて恒例のフォーラムを開催する。テーマは、「NPOとともに築く市民社会」である。
    2. IAVE(ボランティア活動推進国際協議会)より、96年9月に世界大会を南アフリカで開催するので、途上国からの参加者を経済的に援助するスカラーシップを提供してもらいたいとの申し出があった。


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