アジア・大洋州地域大使との懇談会/12月14日

アジア・大洋州地域駐在の日本大使と懇談


経団連では、日本・東京商工会議所との共催により、大使会議出席のため帰国中のアジア・大洋州地域の日本大使(25公館)を招いて懇談会を開催した。会議では、韓国、中国、東南アジア、南西アジアの情勢ならびにこの地域の諸問題について意見交換を行なった。

  1. 山下在韓国大使説明要旨
    1. 金泳三政権は、新韓国の建設を目指し、(1)不正の追求、(2)経済の再活性、(3)国家の綱紀粛正を進め、文民政権という旗印の下、民主化を図っている。

    2. 95年6月の地方選挙では与党が敗北したため、96年4月の総選挙に向けて、現在韓国の政治情勢は不透明な状況である。ただ、一連の政府、経済界要人の逮捕が今後の韓国経済に与える影響は少ないだろう。

    3. 韓国経済は基本的に好調(成長率 94年 8.4%、95年9.3%〔見込み〕)であるが、輸出や設備投資の伸び悩み等により、96年の韓国政府見通しは7.4%である。今後韓国が引き続き外資を導入し、成長を続けるには、労使問題の改善は必須である。

    4. 日韓関係のよりよい発展は、日本の過去の歴史認識の是正も含め、人的交流(とくに青少年レベル)、文化交流が最も効果的であり、日本大使館では力を入れている。
      日韓間の最大の問題は、日本の大幅な出超である。9月時点で日本の対韓国貿易黒字は約120億ドルであり(韓国のGNPは約3,800億ドル)、年末には160億ドルに達する見込み。これは韓国の経済構造に起因する問題であるため、短期的な解消は難しい。産業技術協力財団を設立し、問題解決に向け努力している。

    5. 北朝鮮では、94年7月の金日成主席の死去以来、まだ後継者が決まっていない。その理由も不明である。
      北朝鮮の経済状況、とくに食料事情は楽観を許さない。年間の穀物消費量670万tに対し、昨年の生産量は約400万tであった。今年は大雨、大洪水の害もあり、極めて深刻な事態となっている。

  2. 佐藤在中国大使説明要旨
    1. 今年は戦後50年にあたるため、日中両国とも緊張感を抱いていたが、特段問題はなく、11月の日中首脳・外相会議も和やかな雰囲気で行われた。

    2. 中国の核実験については、二国間問題ではなく、あくまでも国際政治の問題として扱うというのが日本政府の方針である。

    3. 台湾問題で米中関係が一時悪化したが、両国とも、互いに一層の配慮が必要なことをよく認識したようであり、両国関係は好転しつつある。

    4. ポスト トウ小平の影響は少ないだろう。中国の最大の課題は、改革開放路線を堅持し、経済のリストラを緩やかに行うことである。中央政府はこの課題をよく認識し、第9次5カ年計画、人事対策、汚職への対応等の問題を手際よく処理している。政権委譲の段取りは着実に進んでいる。

  3. 渡辺在インドネシア大使説明要旨
    1. 東南アジアは日米中の動向に大いに注目している。この3国が、いずれも東南アジアの支配を目指さず、協調・協力して、域内の平和と安定に貢献することを望んでいる。とくに日米関係を重視しており、日本が日米安保の枠内でリーダーシップを発揮することを期待している。
      ASEANは、ようやく正常化した中国との関係を壊さず、ASEAN地域フォーラム等多国間の対話の場を通じて、中国の関心を東南アジアに引きつけつつ、国際的に中国を取り込んでいきたいと考えている。
      また、投資を中心とする米国の経済的なプレゼンスを東南アジアにつなぎとめておきたいという思いが強い反面、米国が人権問題等で一方的な政策をとることを懸念している。そのため、APECを通ずる関係強化、とくに域内経済界の連携強化を高く評価している。

    2. ASEANは、カンボジア、ラオス、ミャンマーを含めた東南アジアが今後数年間6〜7%の成長を続けると見ており、日本がリーダーシップを発揮して、一層の関係拡大を図ってほしいと期待している。従来のODAに加えて、民間の活力を導入するBOO(Build Own & Operate)等のプロジェクトは、受入れ国の債務を増やさないので、歓迎されている。

    3. この地域の長期的な課題は、インフラの改善、経済的、社会的、人種的格差の是正、環境保全を視野に入れた持続的な経済開発である。

    4. ASEANは域内の求心力維持に配慮しつつ、同時に域外へも積極的にアプローチをしている。96年3月、バンコクで欧州との首脳会議を開催する予定である。欧州側も、ドイツをはじめアジアとの関係強化を重視しており、この会議への関心は高い。

  4. 谷野在インド大使説明要旨
    1. 91年夏以来の自由化(改革開放)政策により、最近インドに対する経済界の関心が急速に高まっている。
      日本の経済人によると、インドの魅力は、巨大な市場(1.5〜2億人の中産階級)、安くて優秀(英語ができる)な労働力、官僚が優秀で清潔なこと、中国と比較して、法制度が透明なことである。

    2. 問題点は、規制緩和が地方まで徹底していないこと、ニューデリーにホテル、オフィス・ビルが足りないこと、土地規制で家賃が高いこと、商標をはじめとする知的所有権の保護が不十分なこと、そして道路、港湾、電力等のインフラの整備が不十分なことである。

    3. 96年春に総選挙が予定されている。現与党の国民会議派は少数与党第一党となり、連立政権を樹立するだろうという見方が強い。国民のコンセンサスができているので、自由化の波が変わることはないだろう。


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