日本ベトナム経済委員会(委員長 西尾哲氏)/12月11日

ベトナムの投資促進策と計画投資省の役割
―グエン・ニャック同省次官と懇談


ベトナムでは95年10月の国会で、投資環境改善の一環として行政機構が統廃合され、それまでの国家計画委員会(SPC)と国家協力投資委員会(SCCI)が、計画投資省(MPI)として新たに創設された。これに伴い、日本ベトナム経済委員会のベトナム側のカウンターパートも国家計画委員会から計画投資省に変更された。グエン・ニャック(Nguyen Nhac) 同省次官から、今後のベトナムの投資促進策と計画投資省の役割などについて説明を聞いた。

  1. 経済開発と外資誘致
  2. 87年12月の外国投資法の施行以来、95年10月10日までに認可した投資案件は1,568件、190億ドルに達した。これは年率50%の増加率である。2000年までに1人当たりGDPを2倍にする目標を実現するためには、今後400〜500億ドルの投資を必要とする。このうち海外からの直接投資は150〜180 億ドルを見込んでいる。
    石油精製所の建設によって、液化ガス、尿素、肥料、ポリ塩化ビニル、ガス等の石油化学産業を育成したい。自動車、鉄鋼、セメント、機械、消費財の生産、インフラを備えた工業地区の建設、輸出拡大、ハイテク産業の振興に取り組みたい。労働集約型の農業、林業、漁業、農産物加工への投資促進のための優遇措置を設けている。
    インフラの不足が経済開発と外資誘致の障害となっているが、財政資金には限界があり、ODAや世界銀行、アジア開発銀行のプロジェクトのほか、海外からの民間直接投資による石炭火力発電所(北部)や石油火力発電所(南部)の建設、港湾、高速道路、水道整備等に取り組んでいる。
    ベトナムは政治社会が安定しており、土地、天然資源のほか、勤勉な熟練労働力に恵まれているが、資本、技術、経営ノウハウを欠いている。憲法と諸法令のなかで、外国資産の国有化や収用は行わないことを保障している。投下資本や利益の海外送金も可能であり、会社設立時あるいは輸出品生産のために設備や原材料を輸入する場合には関税が免除される。インフラ関連プロジェクトに対しても、優遇措置が供与される。
    ベトナム政府は、28カ国と投資保護協定を、また18カ国と租税条約を結んでいる。MIGA(多国間投資保証機構)や58年ニューヨーク仲裁協定にも加盟している。投資環境改善のために基準や手続を整備し、投資申請から実行までに要する時間の短縮に努力している。

  3. 行政手続の簡素化
  4. 94年12月28日、投資手続の簡素化と申請書類の削減を求める首相命令が出され、プロジェクト審査に要する時間は短縮された。4000万ドル以上の投資案件に対する首相認可には60〜65日、その他案件に対する計画投資大臣の認可には45日を必要とする。投資認可が出された後、30日以内に土地使用権証書が発行される。
    建設許可の手続についても最大限に簡素化された。工業地区に関する規則が制定されたが、これまでの輸出加工区に関する規則よりも開放的になっている。95年1月1日から新しい土地使用料を適用しており、外国企業向けの料金は平均25%引き下げられた。
    投資手続改善の結果、95年1月から10月16日までに認可された外国投資急増は314 件、56億8,300万ドルに達した。通年で70〜80億ドルとなり、前年比70%増が見込まれる。95年は日本の投資が急増し、年末までに10億ドルを超えるだろう。これは93年の3倍であり、過去6年分の投資額の2倍に相当する。日本は投資国として94年末に第5位だったが、いまや第2位となり、近く第1位になるものと思われる。
    行政手続の改革は重要だが、それが全てではない。効率と生産性を考慮して投資を最終的に決定するのは投資家である。投資環境をさらに改善し、外資にとっての魅力を高めるようにしたい。

  5. 外国投資法の改正作業
  6. 95年10月の国会は、労働法、土地法、国内投資促進法、国営企業法、企業破産法、民法、税法など重要法案を可決した。今回の国会決議に基づき、計画投資省では96年10月の国会提出に向けて外国投資法の改正作業に入る。
    87年12月に施行された外国投資法は、90年と92年に改正されたが、現在までに同法の具体的な運用のために多くの規則や命令が公布されてきた。それらの規則や命令は法律として成文化され、投資活動を支える法的基盤を形成している。外国投資関連諸法令の制定に伴い、法体系全体の整合性を確保するために外国投資法の改正が必要となる。今回の改正は投資誘致策の補完と多様化を目的とする。これらの措置は法制度や投資環境の改善に貢献する。今後、法改正作業の一環として調査を進める予定であるが、これまでの日本ベトナム合同経済会議で日本側が指摘している事項にも注意を払いたい。

  7. 行政機構の統廃合と計画投資省の機能
  8. 行政機構の統廃合に伴い、国家協力投資委員会(SCCI)と国家計画委員会(SPC)が「計画投資省」(MPI)として統合された。これまで国家協力投資委員会は、ベトナムの経済開発に取り組み、海外の民間直接投資への門戸開放や、重要プロジェクトの導入にも成功してきた。また、外資誘致のために法的な枠組みを作ってきた。
    近代化と工業化の新段階を迎えるにあたり、外国投資と国内投資、ODA資金について、国と地方での配分を調整する必要が生じている。内外の資本をはじめ、土地、労働力、天然資源を有効に使うためには、整合性のある統一的な計画が必要になる。2つの委員会の統合は投資活動の円滑化と、投資政策の一本化を促すことになろう。統合によって、関係の行政組織数が削減され、プロジェクト審査の手続も簡素化されよう。

グエン・ニャック次官と握手する西尾委員長


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