国際協力プロジェクト推進協議会(会長 春名和雄氏)/12月8日〜10日

開発協力において高まる民間セクターの役割


国際協力プロジェクト推進協議会では、開発協力における第2回ディッチリー会議を世銀およびCDC(英連邦開発公社)の協力のもと、オックスフォード郊外のディッチリー・パークにて開催した。
同会議には、世界銀行のフランク専務理事、リシャール副総裁をはじめとする国際開発金融機関や欧州各国政府関係機関幹部、日本からは関係企業代表者の他、大蔵省、外務省関係者が参加するなど、開発協力の第一線で活躍する有識者が一同に会した。参加者は、3日間にわたり寝食を共にしながら「開発協力における民間当融資の役割と国際的連携」について率直な意見交換を行うとともに、交流を深めた。
以下は、春名会長の開会挨拶と意見交換の概要である。

  1. 春名和雄会長挨拶概要
    1. ディッチリー会議は、開発協力の国際的ネットワークを構築し、民間経済協力の発展に寄与することを目的に始めたものである。94年3月の第1回会議では、「開発と民間部門の役割」をテーマに参加者の日頃の苦労や体験をざっくばらんに話し合った。また、JAIDO(日本国際協力機構)と同様の目的を持つ民間投融資機関から、同社が取り組むべき課題について数々の助言を受けることができた。その後、この会議の成果は、同社の増資を通じた財政基盤の拡充や融資業務の開始などの形で大きく実を結んだ。

    2. 近年、途上国では、市場経済化、民営化などの民間主導型経済開発が主流になり、先進各国の民間部門による資金および技術ノウハウ移転に対するニーズが高まっている。しかし、現状では、リスクの高い途上国において民間企業としての利益を確保しつつ、かつ相手国の産業発展にも資する開発投資プロジェクトを実現するには、さまざまなリスクが伴う。特に、インフラ関連プロジェクトについてはこうした問題が顕著である。

    3. 現在、わが国では民間企業の「援助離れ」や途上国の民営化や経済成長に伴う新たなニーズの発生を背景に、政府開発援助が大きな転換期を迎えている。そのため、政府では、大蔵省、外務省、通産省等が中心となり、途上国の民活インフラ事業における政府・公的機関・民間企業の対応のあり方に関して検討を行なっている。

    4. 一方、経団連は、昨年12月に経団連政策提言「冷戦後のわが国の国際貢献と経済協力の役割」を発表し、「ODAと民間部門の活動が途上国の経済発展において車の両輪として有効に機能するよう、このふたつを結びつけて相乗効果を発揮させる仕組みを一層充実すべき」と経済協力における官民協調の重要性を指摘した。

    5. 開発協力における民間部門の役割が増大している世界の潮流を見ると、公的部門と民間部門の協力は、日本だけでなく先進各国の共通の課題になっているように思われる。

    6. 民間の投融資を促進する国際的枠組みや先進各国政府の保証機能の拡充にむけ、各国がこれまで以上に知恵を出し合い、精力的に話し合っていくことが望まれる。

  2. 意見交換
  3. 議論は、セッション1「冷戦後の経済協力の役割」、セッション2「対途上国民間投融資の役割」、セッション3「民活インフラと融資」をテーマに行われた。以下は主な論点である。

    1. 経済のグローバル化と高度情報化によって、世界経済は急激に変化している。このダイナミックな変化を念頭に置き、国際的連携のもとに開発協力を進めていく必要がある。

    2. 民間セクターは経済発展のエンジンの役割を果たしており、開発協力における民間部門の役割は今後、ますます高まっていく。

    3. 成長の著しいアジアおよび民営化が軌道に乗りつつある中南米などが持続的に発展していくためには、インフラの整備が不可欠であり、これらの地域のインフラ投資需要に応える手段として民活インフラが有益である。

    4. このような状況を鑑み、世銀、IFCなどの国際開発金融機関は、民間資源の有効活用に向けて組織・制度改革に取り組んでいく必要がある。特に、資金提供者としての役割とともに、保証機能の拡充などを通じた資金提供の触媒としての役割を強化していくことが求められている。

    5. 経済開発と社会開発を車の両輪にして取り組んでいかなければ、持続的発展は実現しない。アフリカなど成長の滞っている低所得国における貧困の撲滅は、全世界で取り組んでいくべき最重要課題である。国際開発金融機関は、(1)安定的マクロ経済運営への助言、(2)法制度整備の支援、(3)人的開発支援などの面でイニシアチブをとっていく必要がある。

    6. 世銀、IFCなどの国際金融機関とJAIDO、CDC(英連邦開発公社)、DEG(ドイツ開発途上国投融資会社)、IFU(デンマーク開発途上国工業化基金)、FMO(オランダ開発金融会社)などの開発投資機関の有機的連携を進めていく必要がある。

    7. 先進諸国の民間企業が政府の支援を得て、第三国市場協力を推進していくことも重要である。

  4. その他
  5. 参加者の賛同を得て、国際協力プロジェクト推進協議会では、開発協力における第3回ディッチリー会議を1997年を目処に開催する方針を固めた。

左から春名会長、フランク世銀専務理事、サニン前コロンビア外務大臣


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