なびげーたー

わが国の海外直接投資への期待とODA

経団連常務理事 藤原 勝博


経団連では会長を中心とする訪ASEAN・訪欧ミッションをはじめ、多国間、二国間の多数の会議を開催している。外国からの訪問客も季節を問わず多い。

外国の訪問客との会議で話されるテーマのうち、最も多いのがその国への民間直接投資である。日本からの投資を通じた自国の経済発展、雇用機会の創出、技術移転、裾野産業の育成、人材育成など、さまざまな夢と期待を持って意見交換が行われる。これに関連して次の2点に言及したい。

1つには電力、通信、道路、港などの産業インフラに対するわが国民間企業への期待である。
いわゆるBOT、BOOなどが流行語になっているが、その背景には第1に自国の資金不足、先進国政府からの資金援助の減少がある。これを民間資金でカバーしようというのである。
第2にはインフラの企画・建設・運営に効率性の高い民間企業の知恵と経験を活用したいという側面である。
第3に国営企業の民営化が世界的な流行となり、政府、公的機関を対象とする従来のODAが、時代の要請にそぐわなくなっている側面もある。
さらに底流には、経済発展を促すにはODAによるインフラだけでは不十分で、民間直接投資による輸出型産業を誘致したいという政策があり、今日の円高の下、海外投資気運の強い日本の民間企業への期待がいよいよ高まっているともいえよう。
しかし、インフラは所要資金もリスクも大きい。個別民間企業だけでは期待に十分に応えられない。内外の民間企業によるコンソーシアムをはじめ国際開発金融機関、ODA資金、政府の投資保険、輸銀融資など、あらゆる資源を動員して対応するほかはない。日本の民間企業のみならず、政府のODA政策にとっても今後の大きな課題といえよう。

2つ目は拡大する海外投資の下での民間経営、技術人材の活用の問題である。
一般に開発途上国では、経営や技術指導に当たる人材はまだまだ不足している。一方、日本の民間企業には海外での経営経験も豊富な中高年ビジネスマン・技術者がたくさんいる。急激な産業構造変化の下、日本国内では需要は少ないが、能力、経験、意欲の点から海外では十分に需要のある人材も多い。
「顔の見える開発協力」、ODAにおけるハードからソフトへの転換が求められている今日、人材面での日本企業からの供給と海外の需要をどうマッチングさせるか、これもわが国にとって大きな課題であると思う。経団連では、経済協力委員会の中に「国際貢献・人材派遣構想部会」をスタートさせ、こうした課題に取り組んでいく。


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