日韓・韓日講演会(座長 楠川 徹氏)/12月5日

深田祐介氏を招き「日韓・韓日講演会」を開催


経団連と経済広報センターでは、駐日韓国企業連合会(会長 イ・ス・チョル三星ジャパン社長。駐日韓国系企業322社で構成)との共催で昨年に続き、日韓・韓日講演会を開催した。今回は、作家の深田祐介氏より「アジア情勢と新しい日韓関係」と題して、アジアの最新事情と日韓関係を見る視点について話を聞いた。当日は、樋口経団連副会長、楠川経団連−全経聨経済・経営懇談会座長、李駐日韓国企業連合会会長ほか約300人が出席した。

  1. 局地経済圏の発達とその意義
  2. 世界は19世紀の民族国家の概念を脱して、経済交流圏の時代に入った。一方、アジアでは中国、北朝鮮、ベトナムなど、いまだに社会主義を奉じる国がある。完全な民主化に成功し、文字通り先進国である日本、韓国、台湾が連帯して、北朝鮮問題や中国の軍事大国化等に当たる必要があろう。
    アジアの緊迫した情勢を緩和するカギとなるのは「圏」の発想である。これは、かつての大東亜共栄圏のようなものではなく、各国の平等な関係を前提とするものである。アジア太平洋圏には極地的な経済圏が発達した。例えば、環日本海経済圏では北海道、新潟県、富山県などが中心となり、ロシア、中国東北3省(黒龍江省、吉林省、遼寧省)、韓国、北朝鮮が経済交流を進めている。黄海では、九州をはじめ大阪以西の地域と韓国、中国の山東省、遼寧省が経済圏を形成しつつある。中国の広東省と香港、台湾の華南経済圏はいうに及ばず、台湾と福建省も経済圏を形成している。東南アジアでも成長の三角地帯といわれるバタム島の工業団地を中心とする経済圏が活性化している。
    注目すべきは、アジアのイスラム経済圏といわれる地域でも、ローカルな経済圏を発展させる意図が見られることである。フィリピンのミンダナオ島は住民のほとんどがイスラム教徒で、同じくイスラムのブルネイ、マレーシア、インドネシアとの間で経済の結びつきを強めようとしている。
    中国についても、経済発展が続けば強権体制は揺るがざるをえず、やがてはゆるやかな連邦制に移行することになろう。中国の脅威が減少することになり、アジアの安定にとっては望ましい。北朝鮮もベトナムのように経済開放をせざるをえないのではないか。地域経済圏の発展は経済活動面で、国という概念からの離脱を引き起こすこととなろう。

  3. アジアにおける分業化の進展
  4. 昨年、アジアを回って感じたのは、アジア圏は大きく広がっていること、分業化の方向に向かっていること、そして日本、韓国、台湾が突出して途上国を引っ張っていることである。ただし、日本はベトナムなど新興市場では出遅れている。
    ベトナムでは、韓国の勢いを感じた。台湾の人は、日本がベトナムに進出できない理由を、ボトムアップ方式の意思決定システムにあると指摘した。台湾、韓国はトップダウンなので、経営トップが決断すればよいが、日本の場合そうはいかない。リスクの大きい途上国では、台湾、韓国が積極的になれるので有利だということだった。
    日本でアジアというと、北東アジアから東南アジアまでで、西南アジアはこれまで日本の視野の外にあった。そうした国々の中で、特にインドとミャンマーの将来が注目される。たとえばインド人は、理数系に優れた国民であるが、ラオ政権の経済開放策を受けて米国などが積極的に進出している。バンガロール郊外に8つのソフト・テクノロジーパークを建設し、頭脳立国を目指している。ミャンマーは大変な穀倉地帯で、農業大国としての発展が期待される。特に来世紀は「飢餓の世紀」ともいわれ、食料問題への対処が深刻な問題になることを考えると、三毛作の国は貴重である。日本は農業の技術指導をする必要がある。
    東南アジアの国では、フィリピンが人材派遣国家として期待される。すでに船員、看護婦、メイドなどの派遣で実績をあげている。日本は人材難に直面しており、とくに寝たきり老人の介護などフィリピンからの人材受入れに積極的に対処すべきではないか。
    以上見てきたように、アジアの国がすべて工業立国をめざす必要はなく、分業化の流れを推し進めるべきである。

  5. 今後の日韓関係と日本の役割
  6. これからの日韓関係については、日韓両国が協力してアジア諸国をリードしていくことが求められる。両国が近接しており、文化的背景が同じであることは、ビジネスを円滑に進める上でも非常に重要である。実際、九州と韓国との間は縮まっており、三星自動車の誕生はその象徴的事例である。ビジネスにおいて距離の利益は無視できない。このケースは日本と韓国の将来を決定するほど重要である。
    これまで日本は、良い製品を安く生産することに心掛けてきた。アジアの共通点は、蒙古斑と稲作文化である。日本は今後、稲作の基本である気配りと、勤勉の精神の下、さまざまな技術やノウハウを韓国をはじめとするアジア諸国に移転し育てていく必要がある。


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