消費者・生活者委員会企画部会(部会長 立石信雄氏)/12月19日

自由で公正な民間取引慣行を確保するための公正取引委員会の取組みについて聞く


消費者・生活者の立場からみた規制緩和を進めるにあたっては、公的規制のみでなく、消費者・生活者に不便を生じさせている民間の商慣行についても、改善を図る必要がある。
そこで消費者・生活者委員会企画部会では、公正取引委員会事務局の鈴木取引課長、斉藤流通室長を招き、自由で公正な取引慣行を確保するための公取の取組みについて説明を聞いた。

 立石信雄部会長

  1. 鈴木恭蔵 取引課長説明
    1. 流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針について
      1. 公取の目指す「取引」の望ましい方向は、商品の低価格ということより、消費者に多様な選択肢を確保することである。そのために民間企業による自由で公正な競争を促進し、市場に多様な商品が出回るよう、さまざまな活動を進めている。その一環として、91年7月に、独禁法上、問題となる流通・取引慣行をまとめた「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針(ガイドライン)」を発表した。

      2. ガイドラインで指摘した問題行為の一つに「再販売価格維持行為」がある。メーカーが流通業者の販売価格を指定し、それを維持させる同行為は、独禁法上、厳しく規制されている。何故なら固定的な販売価格によって一定の販売利益が保証されれば、(1)小売業者は殿様商売となって売れ筋商品しか取り扱わなくなり、(2)メーカー側も多様な商品を提供するための企業努力を怠り、その結果、自由な競争が阻害されるからである。

    2. 著作物の再販制度について
    3. このように再販行為は、原則的に独禁法の違法行為とされるが、公取の指定再販商品(一部化粧品および医薬品)と著作物(新聞、書籍、雑誌、音楽用CD等)については、その適用除外とされている(再販売価格維持制度)。しかし再販制度が導入された53年以来、わが国の流通・取引構造や経済情勢は大きく変化し、また電子出版物、CD-ROMなどの新しいメディアの登場で著作物の定義が難しくなってきたことから、公取では、再販制度の見直しについて検討を始め、その結果を92年4月に発表した。その中で、指定再販商品については、98年3月末までに指定取消のための手続きを実施することとした。
      他方、著作物については、その取扱いを明確化するため、適用除外の認められる著作物の範囲について、幅広い観点から検討を進めている。その一環として「政府規制等と競争政策に関する研究会 再販問題検討小委員会」で、著作物の再販制度の問題点、および関係業界の主張に対する基本的考え方などをまとめ、今年7月に概要以下の中間報告を発表した。

      1. 著作物の再販制度の主要な問題点

        1. 協調的企業行動による競争制限

          再販制度の下、協調的な企業行動が促され、競争が制限される恐れがある。例えば新聞の場合、過去に4回、価格の同調的値上げが実施された。書籍の場合、再販契約を結ぶかどうかは出版社の自由とされながらも、実際は、取次と再販契約を結ばないと出版できないとする業者が多数を占める。

        2. 流通システムの固定化

          再販制により流通システムが固定化し、事業者が消費者の多様なニーズに対応することを怠りがちになる。その結果、書店で消費者からの書籍の注文を処理するのに時間がかかる、コンビニなどで一般新聞を入手できないなどの不便が生じている。

        3. 非効率的な取引慣行

          書籍・雑誌については、再販制により値引き処分ができないため、売れ残った商品の廃棄率が高く、資源の有効利用からみても問題を生じている。また新聞の場合、値引き勧誘ができないことが、過大な販売促進費の支出や過剰な景品付き販売などをもたらしている。

      2. 関係業界の主張に対する考え方

        1. 再販制がなくなり価格競争になれば、売れ残るリスクの高い専門書などを書店や出版社が取り扱わなくなり、小売り店の多様な品揃えが確保されないとする主張については、値引き競争の対象になるのはベストセラー本であって、専門書などはあまり影響を受けないと思われる。

        2. 再販制が廃止されれば新聞の宅配が維持できないとする主張については、購読者の間で宅配に強い需要があること、新聞社や新聞販売店にとっても宅配が広告収入確保のための部数拡大の重要な手段となっていることを考えれば、再販制と共に宅配制がなくなるとは思われない。

      3. 国民を巻き込んだ議論を

        12月に発表された行政改革委員会規制緩和小委員会の最終報告で、著作物の再販制見直しは、継続審議事項となった。報告書が出るまでマスコミは連日、自社媒体を通して見直し反対の大キャンペーンを展開したが、われわれには自前のメディアが無いので、論点を公平に国民に伝える機会が無かった。結論はともかく、論点を広く公開し、国民ベースでの議論をすることが真の言論の自由につながるのではないか。

  2. 斉藤哲夫 流通対策室長説明
    1. 国産品および輸入品の低価格販売に関する調査について
    2. 近年、価格破壊が進んでいるが、そのような低価格販売が常に円滑に行われるとは限らない。そこで公取の流通問題研究会では、近年、価格が低下した商品、低価格化の促進要因、同阻害要因について、調査を実施した。
      低価格販売が進んだ商品は、トイレタリー商品、加工食品、衣料品、酒類等で、価格低下を促進したのは、小売業者間の競争の激化、メーカー等との直接取引による仕入れ価格の引下げなどである。規制緩和による影響をそれ程大きくない。他方、低価格販売を阻害している要因としては、販売免許や再販制などの規制の存在、およびメーカー等の力が強く販売価格について関与を受けることなどが指摘された。


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