国際協力プロジェクト推進協議会(会長 春名和雄氏)/12月20日

JAIDO活動報告会ならびにプロジェクト・ファイナンスに関するセミナーを開催


国際協力プロジェクト推進協議会(会長 春名和雄氏)では、JAIDO活動報告会ならびにプロジェクト・ファイナンスに関するセミナーを開催し、由布震一JAIDO(日本国際協力機構)社長より同社が取り組むプロジェクトの現状について説明を受けるとともに、インターナショナル・プロジェクト・ファイナンス社のミッシェル・アランド代表取締役を招き、「プロジェクト・ファイナンスの実践的アプローチ」について説明を聴取した。
以下はその概要である。

  1. JAIDOの活動について
    由布震一JAIDO社長
  2. 由布社長

    1. 日本の膨大な貿易黒字の還流を目的にJAIDOが設立されてから7年になろうとしている。この間の途上国の市場主義経済へのシフトに伴う日本企業への資金、技術、経営ノウハウ提供に対するニーズの高まりは、JAIDOにも投資要請の増加という形で顕著に現れている。

    2. JAIDOは、途上国のニーズに沿った経済協力性の高い事業を展開している。案件の多くは、現地の政府・経済界の要請に応えるために始められたものである。

    3. プロジェクトのうちのいくつかは、国際金融公社(IFC)、欧州復興開発銀行(EBRD)、米州投資公社(IIC)などの世銀グループ、米国企業基金、フランスの経済協力振興投資会社(PROPARCO)、英連邦開発公社(CDC)などの欧米の政府系金融機関と協力して進められており、当社は、推進が困難な案件への投融資を呼び込む媒介としての役割を果たしている。

    4. 東欧向けの投資は、米国政府の日本政府への要請に基づき始められた経緯があるが、現在、14案件を手掛けている。

    5. 日本のエネルギー政策上、重要な地域である中東に対しては、日本政府の支援を得てサウジアラビアを中心に案件発掘に努めている。

    6. 案件推進が最も難しいサブサハラについては、南アのケープタウンでドライ・ドッグ案件を推進している。

    7. 外資導入を積極的に促進するラテンアメリカとの協力関係も強化している。特に、コロンビアについては経団連の日本・コロンビア委員会において提示された具体的案件を実現すべく活動を展開している。

    8. 世界の成長センターであるアジアにおいては、サポーティング・インダストリーの育成に力を入れている。今後、成長が期待されるベトナム、カンボジア、ミャンマーに対しても積極的に関与していくつもりだ。

    9. 今後は、途上国の経済開発に貢献する数百億円規模の大型案件、いわゆるナショナル・プロジェクトを当社がアレンジャーとなり、経団連と協力して推進していきたい。関係者各位のご協力をお願いする次第である。

  3. プロジェクト・ファイナンスの実践的アプローチ
    ミッシェル・アランド プロジェクト・ファイナンス・インターナショナル社代表取締役
    1. 一般的に、プロジェクト・ファイナンスは相手国政府の保証を求めないノン・リコース・ファイナンスと言われるが、正確には、貸手と借り手が起こりうるリスクを認識し、そのリスクを両者(場合によっては、相手国政府も含む)で分担するという意味でリミテッド・リコース・ファイナンスである。

    2. 日本は、欧米と比較してプロジェクト・ファイナンスの歴史が浅い。現在、邦銀にもプロジェクト・ファイナンスの専門部署が設置されているが、海外の現地子会社のプロジェクトに対するファイナンスが大方を占めている。これが、プロジェクト・ファイナンスは、英米の商業銀行が得意とする分野といわれる由縁である。

    3. プロジェクト・ファイナンスを実践する上で重要なことは、事業参画者がファイナンスの方策、予想されるリスクの分散について認識を共有することである。そのためには、コマーシャル・リスクやポリティカル・リスクなどの起こりうるさまざまなリスクをブレイク・ダウンし、これらのリスクをいかにヘッジするかについてシュミレーションを実施することが必要になる。ただし、新技術を用いたプロジェクトの場合は技術が実証されていないため、リスクを想定することは難しい。

    4. シュミレーションの段階が終わると、次にリスク・シェアリングを決めるセキュリティー・パッケージの作成に入る。セキュリティー・パッケージは、収益に関するエスクロ勘定の設定、プロジェクトの操業コスト試算、スポンサーの利権確保、資産抵当の設置、緊急事態の際の保証などからなる。

    5. この5年間、プロジェクト・ファイナンス市場に参入する民間銀行が増えている。新規参入企業の増加は、セキュリティー・パッケージのディスカウント化をもたらし、ファイナンスする側に過度の負担を生じさせている。これは、長期的に好ましいことではない。

    6. 世銀グループ、EBRDなどの国際開発金融機関は、政府の契約義務不履行により生じたデフォルト支払い保証などの政治リスクへの措置を設け、民間投融資支援策を拡充している。

    7. プロジェクト・ファイナンスは、複雑な書類の作成、立場の異なる参画者間での交渉など、契約を合意に結びつけるまでかなりの時間を要する。そのため、ファイナンス・アドバイザー、プロモーター、スポンサーなど各参画者の忍耐力と、プロジェクト実現に向けての強い意思が必要となる。


日本語のホームページへ