なびげーたー

日米経済ハンドブックを刊行

国際経済部長 市川 博也


客観的な事実に基づく、日米両国のビジネス関係の実態を実務家の視点で明らかにした日米経済ハンドブックを「今後の日米協力を考える部会」が刊行する。これは建設的な日米関係構築の気運を高めることを期待したものである。

今年は米国大統領選挙の年。4月にはクリントン大統領の訪日が予定されている。日米の貿易問題は米国大統領選の争点にはなりにくいと言われてはいるが、日米両国間に存在するパーセプション・ギャップを埋める努力は依然として重要である。

アメリカ委員会(槙原稔委員長)の「今後の日米協力を考える部会」(上原隆部会長)では、このほど日米の産業の現状比較、両国における日本企業や米系企業の活動、業界間の産業協力、相互依存関係に光をあてたビジュアルなハンドブック(日本語、英語)を作成し、2月下旬には各方面に配付する予定である。今後の建設的な日米関係構築に向けた各界の議論を促進することが目的である。

中心部である産業編は、次の21業種を網羅している。(食品工業、紙パルプ、化学、医薬品、板ガラス、鉄鋼、建設機械、重電、エレクトロニクス、制御機械、自動車、宇宙、建設、商社、小売、航空、銀行、証券、生命保険、損害保険、電気通信サービス)

このガイドブックは、日米の競争と協調の関係が産業毎に多種多様であることを簡潔に示している。米国が圧倒的な競争力を誇示している業種、比較的関係が良好な業種、国内市場への相互浸透や国際的な協力関係が良好な業種もある。経済摩擦だけが日米経済関係の特徴ではないことが理解できる。

1974年の日米繊維交渉以来、日米間の通商・経済分野の交渉は20余年続いているが、日米経済交渉の深化・拡大の経緯がこのガイドブックで掴むことができる。

今日の日米間の企業レベルの関係は、競争と協調を併せ持つ高度な関係にある。しかし、企業関係の実態の理解を欠いた日米両国間の議論が時として行われている。このガイドブックの作成に当たって中心的な役割を果たした上原部会長の苦労も、このような視点からの日米関係のパーセプションの是正にある。このガイドブックは企業経営者を主たる対象としたものであるが、特に多岐にわたる日米の相互依存関係を業界毎に、客観資料を基にビジュアルな形で整理する点に力を注いでいる。企業経営者が自分の関わる業界だけでなく、他の業界の相互依存関係も広く理解し、日米経済関係の在り方を考えるための材料を提供している。このハンドブックは、日米関係全般に深く関わってきた部会の委員の方々の作業の結晶である。経団連のような産業を横断した組織ならではの成果であろう。


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