国際産業協力委員会多国間投資協定(MAI)ワーキング・グループ/1月17日

わが国政府は経済界の利益の確保を重視
―OECDにおける多国間投資協定(MAI)交渉


昨年5月の閣僚理事会決定を受け、OECD加盟国は2年間の期限でMAI交渉を行なっている。これまで未整理であった投資分野において包括的な国際条約の構築を目指すこの試みは、経済界に多大な影響を与えるものと予想される。経団連ではMAIワーキング・グループ(座長 山本幸助氏)を設置し、交渉担当官等より説明を聞くとともに必要に応じて意見を提出している。今回、交渉団の副議長である外務省国際機関第二課齋木課長より聞いた。

  1. MAI交渉の背景
    1. OECDでは、4、5年前から投資ルールについて議論を行っており、交渉開始に際して参加国間に共通の土壌があった。従って、投資ルール策定は、先進国と途上国の利害が対立するWTOの場よりOECDで行う方が容易だと判断された。

    2. 交渉に際するわが国政府の基本姿勢は、実務に役立つ投資ルールの構築である。わが国経済界の利益が確保される方向に交渉を進めたい。

  2. MAI交渉の現状
    1. MAIの主たる内容は、
      1. 海外直接投資の自由化に関するルール(内国民待遇、最恵国待遇等)、
      2. 投資保護(資本移動、収用と補償等)、
      3. 紛争処理メカニズム
      の3分野から成る。

    2. 昨年9月から3回に渡る交渉を経て主要3分野の議論は一巡した。各分野とも順次、下部組織であるドラフティング・グループにおいて条文が起草されることになる。

  3. 今後の見通し
    1. 本年5月の閣僚理事会が2年間の期限の半ばであり、エンゲリングMAI交渉団議長から閣僚への報告が行われる。議長はそこで協定案の概要を示したいとの意向を持っている。

    2. 本年12月シンガポールにおいて第1会WTO閣僚会議がある。WTOには投資ルールに係るOECDのみによる立案を懸念する向きがある。他方、OECD諸国は閣僚理事会での課題であるMAIの設立に強い決意で臨んでいる。

    3. 今後、投資ルールの策定について、
      1. OECDである程度考え方を固めた後WTOに引き渡す、
      2. OECDの条約成立後途上国の参加を求めていく、
      のいずれのアプローチとなるかは依然不透明である。

    4. その他の課題として、
      1. 米国、豪州など連邦制国家の地方政府の扱い、
      2. EU、NAFTA等地域経済統合参加国の扱い、
      3. 投資の自由化交渉を巡る各国のスタンス
      などの課題がある。

    5. なお、次回交渉の論点は、投資の定義、租税問題の扱い、キーパーソネル、パフォーマンス要求(ローカルコンテンツ等)、投資インセンティブ等である。


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