在中南米諸国大使との昼食懇談会(座長 齋藤評議員会議長)/1月19日

在中南米諸国大使と懇談


経団連では、中南米大使会議に出席するため一時帰国中の在中南米諸国大使(22カ国)および佐藤中南米局長を招き、昼食懇談会を開催した。会議では、佐藤局長から中南米諸国情勢とわが国の対中南米外交政策について、角田駐ウルグアイ大使からメルコスールおよびウルグアイ情勢、石原駐エル・サルバドル大使から中米及びエル・サルバドル情勢、寺田駐メキシコ大使からメキシコ情勢、塚田駐ブラジル大使からブラジル情勢についてそれぞれ説明を聞いた。
以下は、その概要である。

  1. 佐藤中南米局長説明要旨
    1. 中南米情勢
    2. 中南米地域では、90年代に入り民主化が定着し、政治的に安定の方向に向かっている。経済的には、メキシコ金融危機により地域全体の成長は鈍化したが、各国で経済改革の進展によりインフレが抑制され、着実な成長が見られる。わが国政府としては、これら地域の経済が再び成長軌道に戻り、安定と発展の90年代が続くことを期待している。
      また、APECへのメキシコ、チリの参加に見られるように、中南米諸国ではアジア太平洋志向が強まっており、これを注視している。

    3. わが国の対中南米外交政策
    4. わが国政府としては、メルコスール等の地域統合の動きに対して、関係国との政策対話を行う等、積極的に取り組んでいきたい。具体的には、統合プロセスの中で相手国政府への働きかけやインフラ整備等を通じて、わが国民間企業の活動を積極的に支援していく。また、中南米諸国とアジア諸国との交流の橋渡し役を果していきたい。

  2. 角田駐ウルグアイ大使説明要旨
    1. メルコスールの動向と今後の見通し
      1. メルコスールは、合計2億人の人口、1200万平方kmの面積、7400億ドルのGNP(93年)を持つ4カ国が、91年から開始した統合プロセスである。共同市場の形成を目的とし、95年より不完全ではあるが関税同盟として発足した。

      2. 4カ国間の貿易は顕著な増大を見ている。95年上半期の輸出は前年同期比で、アルゼンチンで89%、ウルグアイで34%、ブラジルで14%増加している。域外からの輸入も大幅増大しており、開かれた統合といえる。

      3. 昨年12月の第9回首脳会議では、2000年までに関税同盟から共同市場へ移行するための行動計画が策定された。また、「メルコスール2000宣言」が採択され、今後、加盟国の社会全般にわたっての統合を目指す。

      4. メルコスールは中南米地域最大の経済統合であり、経済圏は拡大しつつある。昨年12月には、自由貿易地域形成につきボリビアと合意し、チリとは協議中である。さらに最大の貿易・投資相手先であるEUとの間では、地域間協力枠組み協定に署名した。同協定に基づき、今後5年間、メルコスールの域内整備にEUが協力を行い、2002年から関税率・例外品目設定等細目について具体的交渉を行うが、自由貿易地域の実現には、10〜15年かかると予測される。

      5. メルコスールは、農牧産品や鉱産物等の一次産品需要の急増するアジア市場への進出に強い関心を持っている。また、インフラ整備を含む広範な分野における日本からの投資を期待している。

    2. ウルグアイ情勢について
    3. ウルグアイは人口315万人の小国であるが、民度の高い民主主義国であり、1人当たりGNPが年4000ドルと発展途上国の中でも中上位国である。ウルグアイにはメルコスール事務局が置かれており、EUにおけるブリュッセルと同様の地位を得ることを目指している。

  3. 石原駐エル・サルバドル大使説明要旨
    1. 中米7か国のGNPは、総計330億ドルである。
      エル・サルバドル、ニカラグアにおける内戦終了後、中米では民主化と開発、そして政治統合に向けて活発な動きが見られる。政治統合については、中米議会(グアテマラ)、中米司法裁判所(ニカラグア)、そして中米統合機構(事務局:エル・サルバドル)が設置されている。首脳会談は年2回開催され、関係閣僚会合も頻繁に行われている。これら会合では、貿易、経済問題に止まらず環境問題、治安問題について検討し、また、地域プロジェクトとして電力網、鉄道網の整備についても検討を行なっている。

    2. わが国は、昨年、エル・サルバドルにおいて中米諸国との対話と協力に関するフォーラムを開催する等、中米の民主化と開発を支援している。本年は東京で第2回会合を開催し、対日輸出の拡大、日本からの投資の誘致を主要テーマとして扱う予定である。

  4. 寺田駐メキシコ大使説明要旨
    1. メキシコ政府は、96年1月1日より、国内企業への貸付利子に対する源泉徴収率を4.9 %から15%に引き上げた。ただし、例外として、租税条約締結国からの貸付利子については、旧来通りの課税率を認めている。そこで、オルティス蔵相に対し、税率引き上げは対墨投資を減少させる恐れがある旨説明し、現在交渉の最終段階にある租税条約締結までわが国企業に対する課税適用の免除を申し入れた。

    2. 金融危機の影響により、95年の成長率はマイナス7%であったが、96年の目標として、経済成長率3%、インフレ率20.5%、為替レート$1=7.7ペソを掲げている。メキシコは金融危機を克服しつつあり、明るい展望が見えてきていると言えよう。

  5. 塚田駐ブラジル大使説明要旨
  6. ブラジル経済は、カルドーゾ大統領就任後、抜本的な経済改革政策である「レアル・プラン」の導入によってインフレが鎮静化するなど、大局的に良くなっている。大統領の支持率も依然高い。今後は、レアル・プラン推進に必要な憲法改正措置の動きに注目していく必要がある。


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