国際熱核融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議/1月23日

国際熱核融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議を開催


国際熱核融合実験炉(ITER)日本誘致推進会議(会長 豊田会長、運営委員長 増澤国土政策委員長)は第2回会議を開催し、科学技術庁の興審議官から、ITERをめぐる最近の情勢と日本誘致に向けた課題について説明を聞くとともに懇談した。

  1. 科学技術庁 興審議官説明
    1. ITER計画をめぐる国内情勢
    2. 昨年12月、ドイツのガルヒンクで開催されたITER理事会において私は、わが国の現状について、「ITER計画に対しては、各方面から多大な関心が示されている。国内3カ所でITER誘致の動きがあるほか、経団連がITER計画の実現と日本誘致をアピールするなど、ITER計画に対する支持が急速に高まりつつある。今回の理事会で中間設計書が確定されれば、日本国内の動きはさらに弾みがつくであろう」と説明した。

    3. わが国原子力政策と核融合開発
    4. わが国の原子力政策は現在、軽水炉原子力発電体系の確立が中心課題となっているが、核融合開発はその一環として、原子力科学技術の多様な展開のひとつに位置づけられている。核融合は人類の恒久的なエネルギー源となることが期待されており、国としても自らの研究開発ポテンシャルを有効に活用しながら、主体的に国際協力を推進することが求められる。

    5. 第三段階核融合研究開発基本計画の目標
    6. 現在の核融合研究開発は、臨界プラズマ条件を目指す第二段階計画の目標を達成したことから、原子力委員会が92年6月策定した第三段階核融合研究開発基本計画に基づいて進められている。その内容は核融合実験炉としてトカマク型を建設し、自己点火条件の達成と長時間燃焼の実現を目指すとともに、炉工学の基礎を形成することである。この計画では、原型炉までの研究開発を明確に打ち出している。

    7. 第9回ITER理事会の成果
    8. 第9回ITER理事会では、ITER中間設計に関する文書の確定が行われ、詳細設計報告作業のベースが固まった。
      建設協議は1996年半ば以降具体化していくと考えられるが、今回の理事会では、建設協議を円滑に進めるために「特別作業グループ」の設立が決まった。「特別作業グループ」は、ITERの立地、許認可、ホスト国の支援等、ITER建設・運営等に関する事項を検討し、本年7月に予定されている次回の理事会に向けて提案を作成する。同グループの共同議長には、苫米地(とまべち)日本原子力研究所客員研究員とカノビオEU第12総局顧問が選出された。

    9. ITERをめぐる各極の状況
    10. 米国では、96年度のITER関連予算が前年の3分の2に削減されるなど厳しい状況にある。その背景には、エネルギー問題への楽観論があり、今後も核融合開発への風当たりは強いものと考えられる。しかし米国はロシアとともに本計画の提唱者であることから、今回の理事会でも、工学設計活動への貢献継続を確認したところである。
      EUは、建設段階に強い関心を示しており、本年3月以降、極内のサイト候補地の選定を開始するとのことである。
      ロシアは、ITERに関して連邦レベルで支持しており、科学研究の要としてITERを重要視する姿勢を示している。

    11. 内外のサイト候補地の動き
    12. 国内では、北海道苫小牧東部工業基地、青森県むつ小川原工業基地、茨城県那珂町の3カ所について誘致の動きがある。海外では、EUから候補地としてスウェーデンのストーズヴィク、フランスのカダラッシュ、ドイツのグライフスバルト等の名前が出された。また、イタリアにも動きがあるほか、カナダにおいても誘致を検討しているとの説明があった。

    13. ITERにかかわる関連活動
    14. 1月下旬、米国のサンディエゴにおいて第1回国際産業界会合が開催され、核融合・ITERへの取組みやITER建設段階における産業界の役割に関して意見交換が行われる予定である。日本からは日本原子力産業会議が中心となって参加する。

    15. わが国の取組み
    16. わが国としては、まず工学設計活動を着実に進め、建設段階につなげていきたい。そのためにわが国にとって必要となるのは、第三段階基本計画上のITERの位置づけである。ITERを同計画に掲げるトカマク型実験炉として位置づけ、国としての開発を推進していくには、原子力委員会・核融合会議での検討を受け判断を下し、広く国民の理解を得つつ、進めていく必要がある。
      その他、国内候補地・建設コストの負担のあり方等の検討、人材の確保、国内各方面からの支援、安全規制の整備が求められる。

  2. 質疑応答
  3. 経団連側:
    ITERの建設地はどのようにして決定されるのか。
    興審議官:
    建設地の決定は外交交渉による。建設協議の結果、締結される条約や協定については外務省が政府としてとりまとめることとなろうが、科学技術庁としては、国会や産業界の理解を得ながら当面は、1997年度予算の概算要求に向けて、所要の予算計上を検討する。

    経団連側:
    ITER計画が先延ばしになるなどの変更はあり得るか。
    興審議官:
    米国が厳しい状況にあることから、予測はつきにくい。米国抜きでは開発が進まない恐れがあるため、米国に再三ITER推進を求めているところである。

    経団連側:
    科学技術庁として日本誘致の意思をいつ表明するのか。
    興審議官:
    工学設計活動が98年半ばまでとなっていることを考えると、可能な限り97年度予算で、建設を前提とした予算を計上できることが望ましく、日本政府としての誘致の意思表明も、このような予算との関連で判断することになろう。


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