新しい全総計画に関するワーキング・グループ/1月19日

新しい全総計画のあり方について


経団連では、国土審議会における新しい全国総合開発計画策定の作業に合わせて経済界としての考えをとりまとめるため、標記ワーキング・グループ(座長 竹内 宏氏)の活動を開始した。第1回会合では、国土庁計画・調整局の飯塚総務課長並びに浜野計画課長より、国土審議会の審議の模様と今後の課題等について話を聞いた。

  1. 国土庁説明
    1. 国土審議会のこれまでの経緯と今後のスケジュール
    2. 国土をめぐる情勢は近年大きく変化していることから、新しい国土政策の確立が求められている。国土審議会調査部会では、1994年6月に四全総の総点検作業の結果をまとめた報告を発表したが、それを受けて、同年11月には同審議会の下に計画部会が設置され、新しい全総計画策定に向けた検討が着手された。同部会では、昨年12月11日に「新しい全国総合開発計画の基本的考え方」をとりまとめたが、今後これをもとに広く国民の意見を聴きながら検討を進め、本年秋には中間案をとりまとめ、さらに検討を深めたうえで来春には新しい国土計画を決定したいと考えている。

    3. 全総計画の今日的意義
    4. 国民の中には「もう全総計画の時代は終わったのではないか」という声も聞かれるが、現在わが国は、阪神・淡路大震災の発生、地球時代の到来、人口の減少・高齢化、高度情報化時代の到来等大転換期にあり、また将来の方向性が見えないことに対する不安やある種の閉塞間が漂っている状況にある。このようななか新しい全総計画において、国土開発の新しいビジョンを示すことは意義あるものと考えている。

    5. 「基本的考え方」の概要
    6. (1) 国土づくりの基本目標
      「基本的考え方」では、価値観の変化や新しい時代の流れを踏まえ、
      1. わが国を個人や企業にとってより魅力的なものとすること、
      2. 性、年齢を問わず国民一人ひとりを大切な知的資源として捉えること、
      3. 人と自然の共存を目指すこと、
      4. 世界のなかの日本という視点に立って地球環境問題の解決や人類史的貢献を目指すとともに、世界におけるわが国の文化的アイデンティティを創出すること、
      の4つの認識の下、「生活の豊かさと自然環境の豊かさが両立する世界に開かれた活力ある国土の構築」を基本目標として掲げている。

      (2) 目指すべき国土の姿
      そのうえで、太平洋ベルト地帯(第一国土軸)の形成から東京一極集中へとつながってきたこれまでの国土構造を転換し、新しい国土軸を形成することを訴えている。具体的には、西日本国土軸、北東国土軸、日本海国土軸、太平洋新国土軸からなる新しい国土構造のイメージを提示した。第一国土軸から離れた地域においては多様な自然を生かした新しい日本文化と生活様式の創造を目指す一方、第一国土軸においては過密に伴う問題を解決し、集積地帯と周辺地域とが連携したより魅力的な居住地域として再生させる必要がある。

      (3) 新しい全総計画における主要課題
      計画の主要課題としては、
      1. 自然災害への懸念と高齢化社会への不安に対する国土の安全と暮らしの安心の確保、
      2. 価値観に応じた暮らしの選択可能性を拡大するための地域自立の促進、
      3. 自然の保全、回復、創出と環境への負荷の軽減、
      4. 産業の空洞化の懸念と地域の雇用創出のための地域経済基盤の強化、
      5. アジアの相互依存関係の深化と世界への積極的貢献
      の5つをあげている。それらの達成のためには、地域連携の促進と地域自立の基礎づくり、多自然居住地域の新たな位置づけと都市・産業集積の高質化が必要である。

      (4) 社会資本整備の課題
      社会資本の整備の面では、
      1. 地域間の機会均等を確保するという視点に立ちアクセス条件を整備していくこと、
      2. ソフト面での対応の推進、費用負担・整備財源のあり方等整備の枠組みを再検討すること、
      3. 高規格幹線道路、下水道、都市公園などの社会資本について、21世紀初頭以降の投資余力の大幅な減少が見込まれるまでの間に概成を目指すこと、
      4. 地球時代に対応した国際交流基盤の整備、高度情報通信社会構築に向けての対応、国土の新しい可能性を創出する技術開発への積極的取り組みを進めること
      などを求めている。また国土開発関連諸制度や国土利用関連諸制度等の既存の枠組みについても再検討を行い、その再構築について明確な指針を打ち出すよう求めている。

  2. 経団連からの意見
    1. 交流基盤などのハードの整備を併せて行わなければ新国土軸の形成は難しい。

    2. 公共投資は経済性・効率性のみを重視して大都市に集中させるべきではない。国家のセキュリティの観点からも公平な整備が必要である。

    3. 人間の体にたとえると交通基盤は骨、産業・文化は筋肉、情報通信は血液である。地域では特に骨の部分が足りない。交通基盤の整備を急ぐよう訴えるべきである。

    4. 権限と財源がパッケージで地方分権がなされないと、地域が自立するためのプロジェクトや基盤整備を自らの手で行うことはできない。


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