なびげーたー

来年は環境の年

地球環境室長 太田 元


97年は21世紀における環境問題への取組みを占う重要な国際会議が次々開催される。

ローマクラブが成長の限界を訴えた頃は、資源・エネルギー・食料の制約が強く認識された。今やこれらの制約より一足先に環境の悪化が成長の制約になりつつある、しかも、人類の生存すら脅かしつつある、との認識が広まっている。

こうした状況の下で来年7月、第2回地球サミット(国連環境特別総会)がニューヨークで、来年秋には、CO2等の排出量を2000年以降どうコントロールすべきかを決める気候変動枠組条約第3回締約国会議が日本で開催される。

環境管理・監査の国際規格が今夏にも発行する見通しであるが、ISOは続いて環境ラベル、環境パフォーマンス評価、LCA等の規格に取り組んでおり、その総会が来年4月京都で開かれる。

これらの国際会議に合わせて、今年に入り内外の動きが活発になってきている。わが国政府は、第3回締約国会議の主催国として名乗りをあげている関係もあって、地球温暖化問題についてイニシアチブを発揮したいという意向を持っている。

締約国会議に向けての議論はこれから本格化するが、EUや島嶼国等は先進国に対し、2005年、2010年、というような時期を定めCO2の排出量を一定量削減するという目標を設定し、さらに目標達成に必要な政策措置の義務づけを主張している。

温室効果ガスの多くは日常の経済活動、国民生活を通じて不可避的に発生する。排出抑制はわれわれのライフスタイル、さらには文明そのものに対する挑戦であり、解決すべき課題は複雑かつ多岐にわたる。

温暖化メカニズムの一層の解明と効果的対策についての研究がまず必要である。代替エネルギー、CO2の固定化技術等の研究・技術開発も欠かせない。

わが国のように先進国の中でもエネルギー効率は高く、1人当たりのCO2の排出量も低い国とそうでない国との公平性をいかに確保するかといった問題もある。費用対効果の点で、発展途上国において対策を講ずることが望ましいが、これらの国の理解と協力を得るための技術移転や共同実施を含む対策コストの負担メカニズムのあり方も、解決が難しい課題である。

炭素税などの環境税をわが国だけでも導入すべきであるとの議論もある。しかし、効果はほとんど期待できない。効果があがるように高税率にすれば産業競争力の喪失により、産業の空洞化は一段と進み、一方、発展途上国の産業が活発になり、地球全体のCO2の排出総量はかえって増加しよう。これで国民の理解は得られるであろうか。

かといって、このままでも良いとは誰も考えていない。産業界としてもあらためて経団連地球環境憲章の精神に沿って、先見性を発揮し、自主的・積極的な取組みを強化していくことが求められている。


日本語のホームページへ