第18回日本・香港経済合同委員会は、1996年1月22日、秋山富一日本側委員長とレイモンド・チン香港側委員長が共同議長を務めるなか、香港で開催された。会議には池田行彦外務大臣とクリストファー・パッテン総督の祝辞が寄せられた。
合同委員会では、日本の経済対策や今後の見通し、香港の経済情勢など、双方にとって関心のあるテーマについて、幅広く議論した。95年は香港の競争力に改善が見られたことで注目された。
日本側は、香港からの対日投資の重要性を強調するとともに、日本市場における香港製品のシェアを増やすための方策をめぐり、香港側と意見を交換した。日本の輸入が増加するのに対して、香港企業として、いかに対応すべきかについても話し合った。さらに、香港の製造業者や輸出入業者が、変わりつつある日本の卸売・小売市場を前に、どのような輸出戦略を立てるべきかについても検証した。会議参加者は、近年、香港の対日輸出が増えていることを歓迎した。その要因について日本側は、日本の輸入業者や消費者の間で香港製品に対するイメージが良くなったこと、中でも品質、デザイン、技術の面で向上があったこと、消費者ニーズへの対応の点で改善が見られたことなどを指摘した。また、日本市場に香港製品をさらに浸透させるためには、香港製品のブランドやアフター・サービスの充実に一層の努力を払うことが有効であると示唆した。
海外投資について日本企業は、中小企業を中心に引き続き関心を持っている。日本企業にとっての香港の魅力についても議論し、例えば、インフラ関連プロジェクト、ハイテク分野の製造業、サービス部門などの将来性をめぐり意見交換を行なった。
香港経済の現状と今後の見通しについて検証した後、1997年以降の香港のビジネス環境についても議論した。日本側は、今後とも香港は自由な貿易港として、税率の低さや公正な法制度、この地域における戦略的な位置づけなどの利点により、アジアの経済発展にとって重要な役割を担い続けるだろうと指摘した。また、香港は、地域の拠点、中国への窓口、さらにはアジアの物流基地として、これまでにも増して多くの日本企業を引きつけるであろうとの見方が示された。
最近、中国の首脳は複数の声明の中で、中国としては、香港が持つ高度の自治と経済のダイナミズムを将来にわたって維持することを強調している。このような中国の強い意思表示について、日本側は、香港の将来に対する日本企業の信頼を高めるうえで重要であるとの見方を示した。中国が第9次5カ年計画に沿って、1997年以降も経済発展を続ければ、ビジネス・センターおよび対中国投資の中継地として香港はますます重要な役割を果たすようになると考えられる。
最後に、95年11月のAPEC大阪会議によって域内の経済発展は大きな弾みをつけたことについて検証が行われた。APECが掲げる貿易自由化について実現した際、どのようなことが期待できるかについて議論した。
第19回日本・香港経済合同委員会は1996年末に東京で開催される。
今回の合同委員会終了後、日本側メンバーは、中国経済の現状を理解し、ビジネスの可能性を探るため、香港貿易発展局が企画したプログラムに沿って、2日間にわたり福州を訪問することになっている。
パッテン香港総督と懇談する秋山委員長