ミャンマー研究会(座長 春名和雄氏)/1月29日

「ミャンマー経済シンポジウム」がヤンゴンで開催される


ESCAP(国連アジア太平洋経済社会委員会)と日本政府の共催で、ミャンマー経済シンポジウムが、約200名の参加者を得てヤンゴンで開催された。ミャンマーのほか、日本、中国、インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイからのパネリストが、ミャンマー経済の現状や投資環境、対外関係などについて報告を行なった。経団連のミャンマー研究会からも約40名が出席し、春名座長からは、95年12月の研究会提言『ミャンマーの経済発展のために』(本誌No.23)に基づき同国への期待を伝えるとともに、投資環境の改善を求めた。

  1. 経済改革への取組み
    〔ミャンマー政府関係者の発言〕
  2. ミャンマーはASEANとの関係強化に努めている。ミャンマーの貿易の80%はアジア諸国とのものであり、日本、中国、マレーシア、シンガポール、タイからの投資が全体の43%を占めている。国家法秩序回復評議会(SLORC)は複数政党制による民主主義の確立を目指しており、憲法制定に向け国民会議を開催している。88年以降、市場経済化と自由貿易政策を進めている。輸出の65%が農林産物であり、農業振興の結果、米、豆の輸出が増加している。輸入は工業製品、資本財が中心で、最近は消費財の輸入も増えている。中国、タイ、韓国、インド、パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、ラオス、欧州7か国と貿易協定を結んでいる。中国などとの国境貿易も奨励している。

    民営化委員会(委員長 キン・ニュン第一書記)を通じて、国営企業の民営化を進めている。民間の登録企業数は95年11月現在で14,397社となり、GNPに占める民間の比率は94/95年度は76%を占めた。88年以降、税制上の優遇措置を講じて外国投資を誘致している。合弁の最低出資比率は35%で、100%外資も可能である。95年12月末現在、18か国から165件、30億8,400万ドルの外国投資案件が認可されている。日本からの投資は5件、1億ドル強だが、最近、工業団地プロジェクトを認可した。日本からは特に輸出指向型の産業を誘致したい。

    ミャンマーには中央銀行の下に国営銀行4行、民間銀行16行が存在し、外国銀行は32の駐在員事務所(タイ6行、シンガポール5行、フランス4行、日本2行等)を置いている。保険は国営公社1社のみで、今後民間の参入を進めたい。ミャンマーの税制は14種類の税からなり、商業税、所得税、固定資産税等が歳入の75%を占め、残りの25%は関税収入による。為替管理面では、ミャンマー人によるFEC(外貨証券)の使用を認め、FEC両替所を開設した。外国人は入国時に300ドル相当のFECの購入を義務づけられているが、超過分は出国時に換金される。資本市場の創設に向け、日本の大手証券会社と覚書を結んだ。現在、法制局で証券法を審査している。

  3. ミャンマーを取り巻く経済関係
    〔各国参加者の発言〕
  4. 日本:

    今後、ミャンマーが経済成長を順調に続けるためには、インフラの整備、二重為替の一本化、国内政治の安定、情報の公開、行政機構の整備、長期的な経済計画の作成、教育と経済運営を担う人材育成などが必要である。ミャンマーでは性急な政策は避け、持続可能な開発を進めるべきであり、豊富な資源や一次産品を有効に活用し、アジアの食糧基地として発展することが有益である。

    中国:

    95年の中国からの対ミャンマー輸出は6億1,800万ドル、輸入は1億4,900万ドルであり、国境貿易については94年の対ミャンマー輸出が2億3,300万ドル、輸入が1億3,700万ドルであった。中国は衣料品、化学品等の軽工業品を輸出し、ミャンマーからはヒスイ、米、木材等を輸入している。中国の対ミャンマー投資は現在第15位だが、今後さらに増加するだろう。

    インド:

    インドの輸入総額に占めるミャンマーからの輸入は2%に過ぎないが、ミャンマー向け輸出は16%を占め、重要な輸出相手国となっている。95年2月、インド企業117社がヤンゴンでの貿易フェアに参加した。ESCAPが検討する「南アジア・インドシナ・東南アジア回廊計画」は両国の関係強化に重要な役割を果たすだろう。

    マレーシア:

    マレーシアからはミャンマーに労働集約型産業を移転できる。95年末のマレーシアの対ミャンマー投資は2億2,700万ドルで、第6位である。95年の対ミャンマー輸出は2億3,000万ドルであり、輸入は2,900万ドルである。

    シンガポール:

    95年の対ミャンマー輸出は11億9,800万ドルであり、主な製品はテレビ、石油製品、乳製品等である。対ミャンマー投資は観光分野を中心に積極的に進めている。96年10月からのミャンマー観光年に備え、食品、宝石、手工業品の展示会など6つのイベントを計画している。93年以降シンガポールからは毎年、貿易・投資ミッションを派遣しており、95年6月には貿易投資に関する閣僚級作業委員会(ミャンマー側キン・ニュン第一書記、シンガポール側貿易大臣の共同議長)の開催につき合意した。ミャンマーでは中小企業の役割が大きい。また、国内および東南アジア域内でのネットワーク化が重要になっている。電子・組立産業は日本からNIEsに、繊維縫製産業等はNIEsからASEANに移転され、国境を超えたネットワークが形成されつつある。ミャンマーは鉄道、港、空港、工業団地開発、水力発電、電気通信の開発に力を入れてほしい。

    タイ:

    タイからは軽工業品をミャンマーに輸出し、木材、魚、宝石を輸入している。タイの対ミャンマー投資は現在23件、2億6,400万ドルで、ホテル、金融業、魚・エビ等の食品加工、軽工業、繊維製品等が対象となっている。タイは輸出開発委員会(委員長:バンハーン首相)を通じて輸出拡大に努力している。ミャンマーも輸出増加と投資誘致のために規制緩和、手続きの簡素化などに取り組む必要がある。タイにとってミャンマーは、タイ北部から海へのゲートウェイとして、また発電用ガスと電力の供給地として重要である。タイでは繊維、靴、米・タピオカ・砂糖等の農産品加工産業が競争力を失いつつあり、ミャンマーでこれらの産業を誘致してほしい。バンコクの都市計画と公害の失敗例は真似ないでほしい。


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