日本トルコ経済委員会(委員長 関 和平氏)/2月14日〜16日

第9回日本トルコ合同経済委員会を開催


日本トルコ経済委員会では、2月14日から16日にかけて、トルコの首都アンカラにおいて第9回日本トルコ合同経済委員会を開催した。同会合には、経団連側から関日本トルコ経済委員長以下55名が、トルコ側からはタラ委員長(エンカ・グループ会長)以下131名が参加した。昨年12月のトルコの総選挙の結果を受け、組閣に向けた連立協議が山場を迎えた中での合同経済委員会の開催となったが、デミレル大統領、連立の渦中にある主要5政党の代表、主要官庁からの代表の参加も得て、トルコの今後の経済政策、トルコとEUの関税同盟の影響、トルコの民営化、トルコ国内の主要プロジェクト、中央アジアや環黒海諸国での協力等をめぐり参加者の間で活発な意見交換が行われた。以下はデミレル大統領のスピーチの要旨および合同経済委員会の概要である。

関 委員長
関 委員長

  1. デミレル大統領スピーチ要旨
    1. 現在、世界はEU、NAFTA等の地域経済統合と急速な情報化により、経済のグローバル化が進みつつある。21世紀に向けてダイナミックに変化している世界において、トルコは地域協力の強化と情報化の促進に努め、世界の安全と平和の構築に貢献していくつもりである。
      民主主義国家であるトルコは、地理的に恵まれ、地域統合においてリーダーシップを発揮する潜在能力を兼ね備えた国である。EUとは本年1月に関税同盟を締結し、EUへの加盟に向けて大きく前進した。また、4億人の人口を有する巨大なマーケットして有望なBSEC(環黒海経済協力機構)においてリーダーシップを発揮するとともに、中央アジアにおいても経済的、文化的活動を活発に展開している。
      アジア太平洋地域はトルコにとり重要な地域であり、特にダイナミックな民間セクターを持つ日本との協力を重視している。環黒海および中央アジア諸国へのアクセスとして是非トルコを利用していただきたい。EUとの関税同盟を締結し、トルコが新たな局面を迎えた時期に日本トルコ合同経済委員会を開催することは喜ばしいことであり、具体的成果を期待したい。

    2. 経団連側メンバーとの意見交換

      経団連側:
      トルコは環黒海、中央アジアでEUのような経済圏を作るつもりか。
      大統領:
      EUとトルコの関係は50年におよび、この間にトルコは競争力をつけ、先進工業国へと変貌してきた。関税同盟の締結により、国内経済は短期的に問題が生じるかもしれないが、困難を克服していきたい。中央アジア諸国は、困難に遭遇しながらも着実に自由主義経済に移行している。環黒海諸国も4億の人口を抱え、経済的な潜在能力が大きい。将来的には政治的協力関係の構築も考えられるが、EUとは異なり多様な文化、イデオロギーを持つ国々であり、ステップ・バイ・ステップで対応していく必要がある。

      経団連側:
      財政赤字とインフレへの取組みを伺いたい。
      大統領:
      アタチュルク初代大統領の示した民主化の道は決して容易ではないが、現在、建国時の国家の目標に近づきつつあると確信している。この10年間は年平均5%の経済成長率を達成するとともに、環境問題に配慮しながらインフラ整備と教育・保健医療施設の拡充、人口抑制、民間部門の活性化、輸出の促進、観光などサービス部門の拡大に取り組んでいる。安定した経済成長を維持するために、財政赤字の削減とインフレ抑制は不可欠である。対外債務に関しては、この10年間、返済期限をしっかりと遵守してきた。
      3年前、トヨタが現地工場を開設した際、豊田会長が「われわれはトルコの将来に投資をしている」と挨拶されたのを思い出す。日本には今日のトルコだけでなく、中央アジア、環黒海、中東におけるトルコの活躍を視野に入れ、将来のトルコに投資してもらいたい。

  2. 合同経済委員会概要
    1. 開会セッションにおいて、主要5政党(福祉党、正道党、祖国党、共和人民党、民主左派党)の代表より、トルコ経済の現状認識と今後の経済政策について聞いた。全ての政党代表は、財政赤字の削減とインフレの抑制を中心としたマクロ経済の安定、経済構造改革、インフラ整備を重要課題として取り組むべき課題として挙げ、日本との経済関係の強化を強調していた。EUとの関税同盟については、イスラム教の流れをくむ福祉党を除き、トルコ経済を強化する上で必要なプロセスであるとの共通の見解を述べた。

    2. 全体会議では、トルコとEUの関税同盟、製造業と金融分野での協力、トルコにおける民営化と主要プロジェクトについて、トルコ政府・経済界の代表より詳細な説明受け、意見交換を行なった。分科会では、グループ1(貿易、観光)とグループ2(産業技術協力、プロジェクト・ファイナンス)に分かれ、具体的な協力の事例や提案を交え、パネルディスカッション形式で意見交換を行なった。

    3. 2日目の全体会議においては、中央アジアおよび環黒海諸国におけるトルコの地域協力の取組みについて聞いた。トルコ側からは、このような地域で日本とパートナーシップを組むために、日本にもBSEC(環黒海経済協力機構)にオブザーバー参加してもらいたいとの提案があった。また、2月9日に日本と外交関係が樹立されたボスニア・ヘルツェゴビナのソムン駐トルコ大使より、戦災にも係わらずボスニアの企業は技術と能力を有しており、祖国の再建のためにトルコと日本で協力してもらいたいとの発言があった。

    4. 記念すべき10回目の次回会合は、来年度中に日本で開催する方向で双方で検討を進めることとなった。


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