日本ベトナム経済委員会(委員長 西尾哲氏)/2月1日

ベトナムの投資環境改善に関しヴォー・ホン・フック計画投資省次官と懇談


日本政府とベトナム政府は、1月31日、第1回日越経済協議を東京で開催した。経団連では、政府間協議に経済界の意見を反映させるため、ベトナムで事業を行う上での問題点や要望を取りまとめ、日本政府に提出した。政府間協議にはベトナムから計画投資省のヴォー・ホン・フック次官が出席したが、同省は日本ベトナム経済委員会のカウンターパートである。日本ベトナム経済委員会では、フック次官から経済協議の模様などについて聞いた(進行 荒木正雄インドシナ研究会座長)。

  1. フック計画投資省次官発言要旨
  2. フック次官フック次官

    1. 日越経済協議について
    2. 日越経済協議は、政府間合意に基づき、毎年、東京−ハノイと交互に開かれることになった。今回は、
      1. 両国の経済情勢と経済政策、
      2. 二国間経済関係の現状と評価(総論、貿易、投資)、
      3. 国際経済問題
      などについて討議した。
      両国間の経済関係は、今後とも一段と緊密化するとの見方で一致した。日本のベトナム向けODAは、92年度の再開時に円借款455億円、無償資金協力16億円であったが、95年度は800億円で、このうち円借款は700億円となっている。
      日本からの投資は、95年末までの累計額(実行ベース)が21億ドルで、香港、台湾に続いて第3位となっている。ベトナムの対外貿易における日本の占める割合は、93年の場合、輸出32.0%、輸入13.2%となっており、日本は最大の貿易相手国となっている。日本は、政府間、民間ともにベトナムの最も重要なパートナーである。
      今回の経済協議では、ベトナムから無償資金協力を中心とした日本のODAの増額を要請した。援助の重要分野としては、
      1. 人材養成、
      2. 経済基盤としてのインフラ整備、
      3. 教育と医療、
      4. 環境対策、
      5. 金融制度の整備
      などを強調した。
      民間投資に対する日本政府の協力についても要請した。例えば、工業団地周辺のインフラについてもODA資金を使って整備できるようにしてもらいたいと日本政府に伝えた。そうすれば民間企業の投資がさらに促進されると思う。
      鉄鋼生産と鉱山開発に関するフィージビリティー・スタディーについても、その実施方を要請した。これには鉄鉱石輸出のための専用埠頭建設プロジェクトも含まれる。また、ベトナム製縫製品の対日輸出がしやすくなるよう要請した。ODA以外にも日本輸出入銀行による融資の活用について話し合った。この他、セメント、鉄鋼、石炭、電力、航空産業、肥料、人事交流、東京・ハノイ間の直行便運行などについて意見交換を行なった。
      日本政府からは、ODA資金の効率的使用と民間投資との調和、投資手続きの簡素化、法制度の整備、知的所有権問題の検討などについて指摘があった。知的所有権については多くの途上国でも検討しており、ベトナム政府としても強い関心を持っている。ベトナムの消費者の権利を守り、偽物の製造を防止するために、ベトナム政府は厳しい取り締まりを行なっている。

      ベトナムへの外国投資

    3. その他のフック次官発言概要
    4. 95年7月、ベトナムはASEANに加盟した。AFTA(ASEAN自由貿易地域)実現の目標は2003年であるが、ベトナムは後発であるので、他の加盟国よりも若干遅れて関税の段階的引き下げを進めることで了解を得ている。ベトナム政府としては目標達成に向け、出来るところから実現していきたい。
      ベトナムにとって中国は大きなマーケットであり、中国との経済関係は今後とも発展させたいと思っている。
      なお、ベトナムのWTO加盟について、日本政府は前向きの姿勢を示してくれた。

  3. 懇談
  4. 経団連側:
    円借款の消化率はどの程度か。
    フック次官:
    日本のODAの消化は概ね滞りなく進んでいる。無償資金の消化率が最も高い。円借款もプロジェクトごとにみると、順調に進捗している。計画投資省は、日本大使館、JICA、OECFと緊密な連絡を取っている。

    経団連側:
    ベトナムの自動車需要を表す指標として、新車登録台数はどの程度か。
    フック次官:
    94年の自動車輸入台数はトラック8,500台、乗用車6,000台、95年についてはトラック1万2,000台、乗用車6,000台である。ベトナム政府は自動車輸入を制限している。ガソリンの使用量を地域別にみると、南部50:中部15:北部35という割合になっている。登録については、ナンバー・プレートに基づき各地の警察署で行なっているが、全国ベースで集計するシステムはまだ整っていない。

    経団連側:
    農村開発は、具体的には何に力を入れているのか。
    フック次官:
    上下水道、電気などのインフラ整備のほか、農村開発のための政策金融も行なっている。林業、漁業についても同じように振興に努めている。

    経団連側:
    ベトナムへの投資額は香港が第2位であるが、97年7月の香港の中国返還は、どのような影響を与えるか。
    フック次官:
    ベトナム経済への影響は少ないと思う。投資家にとってベトナムが魅力的であれば、香港からの投資も継続されるだろう。日本からの投資は95年に入ってから急速に増加しており、近く香港からの投資額を上回ることになろう。


日本語のホームページへ