ベトナムの経済発展に関する公開シンポジウム/2月1日

ベトナムの5カ年計画策定と今後の日越経済協力関係


ベトナムは現在、西暦2000年を目標とする5カ年計画の策定作業に取り組んでいる。日本政府は、ベトナム政府の要請を受け、5カ年計画策定に関するアドバイスを行なっているが、さらに開発計画、産業政策、財政金融政策の策定を通じて、ベトナムの国づくりに協力しようとしている。今後、ベトナムが東南アジア地域で果たすべき役割とわが国の支援策を探る公開シンポジウム「21世紀に向けたベトナムの経済発展と地域発展における役割」が、経団連、外務省、国際協力推進協会との共催により開催された。

  1. 対越総合政策支援について
    ―小倉和夫外務審議官発言
  2. これまで日本政府は、ベトナムに対して道路、水道、電力、港湾など主にインフラ整備を中心に経済協力を実施してきた。これに対して、市場の整備や政策立案などのソフト面での支援も必要になっている。日本政府は、ベトナム側の要請に応えて、開発計画の策定や市場経済化に関して「対越総合政策支援」を進めている。日本にとって国家の開発計画全体を包括的に扱う協力は初めての試みである。現在、開発計画の策定に関する調査を進めており、96年4月からは産業政策、財政金融政策の策定に関する調査を行う予定である。

  3. ベトナム政府の取組みについて
    ―フック計画投資省次官発言
  4. 96年〜2000年に関する5カ年計画は、今年6月の共産党大会に提出される。計画の策定に当たっては、日本政府からも支援を受けている。
    91年〜95年の5年間に、ベトナムは年平均成長率8.2%の高度成長を遂げた。農業も増産を続け、94年には2,600万tのコメを生産し、210万tを輸出するまでになった。農村での食糧不足は解消し、タイ、米国に次いで世界第3位のコメ輸出国となっている。ベトナム経済における農業の比率は減少しており、工業、サービス業の割合が高まっている。経済状況の改善に伴い、生活水準も確実に向上している。
    96年からの5カ年計画においては、過去5年間よりも高い9.5%〜10%の成長率を見込んでいる。新5カ年計画では、国家財政の健全化にも力を入れる。95年の物価上昇率は13%であったが、今後は10%以下に抑制したい。国内貯蓄を高め、輸出を拡大し、海外からの投資をさらに誘致するために努力する。
    ベトナムでは人口の75%が農村部に集中しており、農業開発は重要な課題である。2000年には3,000万tの食糧生産を達成したい。工業の近代化に全力を挙げ、特に輸出指向型産業を振興したい。そのためにも工業団地、一般道路、鉄道、港湾などのインフラ整備に努力する。
    人材育成は優先的な政策課題であり、教育、医療、文化事業などに力を入れたい。特に農村部での教育の充実を図る。
    国営企業の民営化とともに、労働市場、資本市場、不動産市場の整備も進める必要がある。行政機構の簡素化と法制度の整備も進めていく。
    ベトナムはアジア太平洋地域との関係を重視している。ベトナムへの外国投資は190億ドルであるが、このうち120億ドルが東・東南アジア諸国からのものである。貿易でも輸出入ともに東・東南アジア諸国が75%を占める。
    ASEAN加盟に伴い、ベトナムはAFTA(ASEAN自由貿易地域)にも参加しており、関税引下げ作業を進めている。この他、メコン川流域の総合開発計画に関しても、ベトナムは前向きに取り組んでいる。中国、ラオス、カンボジアとの関係強化に向けて、政治、経済面での交流を積極的に進めている。

  5. 投資環境改善に関する要望
    ―西尾哲日本ベトナム経済委員長発言
  6. 1月31日開催の「第1回日越経済協議」に経済界の要望や意見を反映させるため、経団連では、アンケート調査を実施した。この調査結果の概要を紹介したい。
    まず、投資関連の手続きについて、ベトナム側の積極的な対応が高く評価されている。運用面での一層の改善を望みたい。審査期間短縮に向けてのベトナム側の改善努力を評価する意見は多いが、審査・認可基準については改善されたとの評価は少なく、引き続き明確化に努めてほしい。国家計画委員会(SPC)と国家協力投資委員会(SCCI)が統合され、新たに計画投資省(MPI)が設置されたことは、投資窓口の一本化として高く評価されており、その効果が期待される。
    土地使用料は相変わらず高く、改善が望まれる。立ち退きに関する各省庁の規定や土地関連情報を明確にするとともに、投資許可後の土地取得を容易にしてほしいとの要望が多い。さらに、手続き面では会社設立、設備輸入などの一層の簡素化にも取り組んでほしい。外貨交換、海外送金、口座開設についても、規定の明確化、手続きの簡素化が求められる。
    電力事情の改善、外国人向け医療施設、学校、住宅の充実を望む声が強い。工業団地周辺のインフラ整備を優先的に進めてもらいたい。合弁事業に関する要望では、重要事項の決議で全会一致が求められる外資法の規定を改正してほしい。
    汚職や不正行為に対するベトナム政府の取り組みは、非常に高く評価されている。民間への未払い債務の返済については、企業がベトナムへの融資を検討する上での最大の障害となっており、ベトナム側の前向きの対応が望まれる。接収資産に関しても、日越政府間で十分に協議してほしいとの要望も寄せられている。
    このほか、駐在員事務所や合弁企業で働く外国人に対する規制の見直し、部品に課される関税、中古機械の輸入の取扱い、輸出売上げ税の撤廃、人材育成についても要望が出されている。
    以上はビジネスの現場からの意見である。ベトナムの関係当局が、こうした民間企業の声に引き続き耳を傾け、改善に積極的に取り組めば、両国間の投資・貿易は今後とも拡大していくものと思う。


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