カルドーゾ ブラジル連邦共和国大統領歓迎午餐会/3月13日

21世紀を見据えた日伯経済関係の発展に向けて


経団連は、日本商工会議所、日本経営者団体連盟、経済同友会、日本貿易会、日本ブラジル経済委員会とともに、国賓として来日したブラジル連邦共和国カルドーゾ大統領の歓迎午餐会を開催した。主催6団体を代表して挨拶した豊田経団連会長は「大統領の今回の訪日が日伯修好100周年記念行事の締めくくりとして意義深く、今後の日伯関係の飛躍をもたらす契機となると確信する」旨述べたのに応え、同大統領は先に訪伯した齋藤裕日本ブラジル経済委員長を団長とする経団連代表団が、両国の経済関係の強化のために果たした役割の重要性について言及するとともに、両国関係は拡大・発展の基調にあり、21世紀に向けた新たな発展の第一歩を踏み入れつつあると強調した。
以下はカルドーゾ大統領の挨拶の概要である。

カルドーゾ大統領

  1. ブラジル経済の現況
  2. 今日、ブラジルにおける日本の企業の存在感は益々大きくなっている。慎重で知られる日本企業もわが国に対する信頼を回復し、投資を再開しつつあることを喜んでいる。これはわが国における経済安定策レアル・プランの成功に因るものであると自負する。すなわち、同プランによりインフレは抑制され、経済成長率は年間3%から4%の範囲で推移している。貿易収支は黒字基調にあり、外貨準備高も500億ドル近くに達し、十分な水準にある。さらに、政府の追求する本来の「目標」である社会的格差の是正に向けて、低所得者層への富の再分配が徐々になされつつある。

  3. ブラジル政府の優先事項
    1. 国内政策
    2. 健全な生産活動や雇用創出のための投資促進には、ルールの安定性、政策の予見性、優先順位の明確な設定等が不可欠な要件であることをわれわれは十分認識している。特に経済の開放化、国営企業の独占廃止、行政改革等は持続的な経済成長のために不可欠であり、後戻りはありえない。また、外貨を獲得するために、従来わが国の法体系に見られた外国資本に対する種々の制約を撤廃したところである。
      ブラジルにおける民営化の促進、公共事業の開放化は言うまでもなく対ブラジル投資を魅力的にしている。民営化は慎重に、公正に、そして充分な責任感をもって遂行されており、他の国々と比較すると、わが国の民営化のテンポがやや遅く感じられるのもやむをえない。
      ブラジルは再び「サクセスストーリー」をつくりあげるべく条件を備えており、今後はブラジル経済の安定化のための役割を忠実に実行していく所存である。

    3. 対外政策
    4. わが国の国際的な枠組みにおいては、先ずメルコスール(南米共同市場)の強化に努めている。メルコスールはアジアとともに、現在の世界市場において最も大きな経済成長の拠点である。メルコスールの基本方針は開放的な地域主義であり、域外に対して決して排他的ではないことにある。現在、メルコスールはチリやボリビアと自由貿易協定を結ぶために最終的な交渉段階にあり、また、隣接した南米諸国と類似の交渉を行なっている。さらに自由貿易の拡大に向けて2005年までにひとつの米州自由貿易圏の確立を目指している。
      一方、メルコスールは昨年12月、EUとも通商および経済関係の促進を目的とした協定を締結した。このようにこれまで優先的なパートナーとの緊密化を進めてきたが、今後はアジアとの関係において新たな時代を模索したいと考えている。この目的のため昨年の中国、マレーシア、去る1月のインド訪問に引き続き、今回はアジア最大の経済パートナーである日本を訪れた次第である。

  4. 日伯関係の展望
    1. わが国と日本は、経済の枠をはるかに超えた強固な絆により結ばれている。過去において日本が困難に遭遇していた時代に手をさしのべ、多くの日系移民を快く受け入れた歴史がブラジルにはある。そして現在では多くの日系ブラジル人が父祖の地を訪れており、このような伝統的な友好の絆は両国にとってかけがえのない財産である。
      しかしながら、今日の両国間の経済関係の再活性化はかかる友好の絆とは別の理由に因るものである。すなわち、ブラジルが良きビジネス・チャンスを提供し、信頼できるパートナーであるからであり、それ故、わが国は日本の官民双方から高い評価を得ているものと確信している。このことは、日本輸出入銀行がブラジルとの通商案件に対してクレジットラインを再開し、各種プロジェクトに対し新規融資を行いつつあることからも明らかである。

    2. 今後の両国間の交流をさらに拡大するにあたり、両国の民間部門が主体となってビジネス・チャンスを模索し、具体化することが重要であり、特に日本企業にはブラジル経済の発展のプロセスに積極的に参画することを切に期待する。
      両国のダイナミックな経済は、高度な相互補完関係にあり、その潜在力をより一層広範囲にかつ積極的に活用することにより、新たなパートナーシップを組むことが可能となる。われわれは今まさにブラジルと日本の関係に新しい時代を開かんとしており、それは挑戦とチャンスに満ちた時代の要請に応えるものである。


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