アジア委員会(委員長 末松謙一氏)/3月13日
アジアと欧州の首脳が初めて会談
3月1日〜2日、バンコクにおいて、アジア欧州会合(以下ASEM)が開催された。アジア側から10カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムのASEAN7カ国、日本、中国、韓国)の首脳、欧州側からEUメンバー15カ国の首脳・欧州委員会委員長が参加した(外相ほか関係閣僚も同行)。
アジアと欧州の首脳が史上初めて一堂に会したASEM第1回会合では、政治・安全保障、経済、文化、環境等の地球規模の問題などについて意見交換が行われ、両地域の関係が強化された。外務省の柳井俊二外務審議官より、会議の背景、成果、課題などについて聞いた。
- 柳井外務審議官説明要旨
- ASEMの背景
- 東アジア(ASEAN7カ国、日本、中国、韓国)の目覚ましい経済発展に伴い、この地域の経済的活力に対する欧州の期待が高まっている。
- 東アジア、EU、北米は3大経済センター(GNP比で東アジア23%、北米28%、EU29%)であり、3地域間の貿易は均衡している。ところが投資については、EU・米国間、東アジア・米国間に比して、EUと東アジア間の投資は低いレベルにとどまっている。
- そこで、アジア市場への一層の進出を図ろうとする欧州と、欧州の投資、技術を呼び込み、さらなる経済発展を目指そうとする東アジアの利害が一致し、ASEMが実現した。
- ASEMの成果・評価
- ASEMの成果は、アジアと欧州の関係強化のために、両地域の首脳が初めて集り政治的な決意を固めたことであろう。両地域間の相互理解、相互利益の増進が図られ、冷戦後の国際的な枠組みづくりへの貢献について首脳が共通認識を確認した。
- 各国政府のASEMに対する評価は概ね高い。東チモール問題をめぐってポルトガルとインドネシアとの間で微妙なやりとりがあったことや、人権と核不拡散の問題を議長声明にいかに盛り込むかに苦慮したことが数少ない例外で、全体的には協調的な精神で有意義な対話が行われた。
- 経済的な問題に加えて、政治・安全保障、文化、環境等の地球規模の問題まで包括的に意見交換された。
- ASEAN側は、旧宗主国と旧植民地の首脳が初めて対等の立場で対話したという点を非常に高く評価している。
- ASEMにおいて日本の果たすべき役割は非常に大きい。橋本首相は、北朝鮮の核開発疑惑などの地域問題への対応、国連改革、核不拡散、WTOの下での多角的自由貿易体制の推進、開かれた地域主義の実現、ASEMへの民間の参画などについて問題を提起した。また、経済閣僚会議の開催(97年:日本) やビジネス会議の開催(97年)、シンクタンク同士のネットワーク構築を通ずる両地域間の知的交流の拡大など6つの具体的提案を行い、高い評価を得た。
- 新規参加の問題は継続審議となった。日本は当初から豪州、ニュージーランドを入れるべきだと主張しており、参加の意思を表明しているインド、パキスタンを含めた4カ国の新規参加を支持している。
- ASEMで今後フォローアップすることが合意された主な事項は、
- 外相会議の開催(97年)、
- 経済閣僚会議の開催(97年:日本)、
- アジア欧州投資促進計画策定のための官民作業部会の開催(タイ)、
- アジア欧州ビジネス・フォーラムの開催(96年:フランス、その次はタイ)、
- 貿易・投資の自由化・円滑化の方途を話し合う非公式高級事務レベル会合の開催(96年7月:ブラッセル)
などである。
また、蔵相会議の開催やメコン河流域開発における協力などを今後検討することが合意された。
- 次回会合は98年に英国で、第3回会合は2000年に韓国で開催されることが合意された。
- 懇 談
- 経団連側:
- 日本は東アジアと欧州の2足の草鞋を履いていると思うが、それぞれに対する日本のスタンスはどうか。
- 柳井外務審議官:
- 日本は、アジアと欧州の間の調停役を務めた。例えば人権問題では、欧州側に性急に議論を求めないよう働きかける一方で、アジア側には過度に反応しないよう説得した。また、ASEANは欧州の要塞化を警戒しているので、APECのように欧州も開かれた地域主義を目指してほしいと要請した。
- 経団連側:
- 台湾はAPECでは重要な経済的存在であるが、97年のASEM経済閣僚会議ではどう扱われるのか。
- 柳井外務審議官:
- 今回は台湾や香港の話は一切出なかった。台湾、香港ともAPECのメンバーであるが、APECはもともと経済閣僚会議として発足している。ASEMは首脳会議としてスタートした。ただ、将来ASEMで金融問題を議論する場合、香港抜きでは成立しない。
- 経団連側:
- 米国はASEMをどう見ているか。
- 柳井外務審議官:
- ASEMの目的が、米国・欧州、米国・アジア関係に比べて脆弱な欧州・アジア間の経済関係の補強であることを米国はよく認識しており、ASEMに対する警戒感はない。
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