経済協力委員会(委員長 米倉 功氏)/3月11日

アジアの経済インフラ整備の現状と今後の通産省の対応


経済協力委員会では、通商産業省細川通政産業局長を招き、去る2月に産業構造審議会経済協力部会より発表された中間報告「アジアの経済インフラを巡る新たな潮流への対応」に基づき、途上国の民活インフラ事業支援に対する通産省の見解ならびに政策につき説明を受けた。
以下はその概要である。

  1. 民活インフラ事業の現状
  2. わが国のODA政策は、途上国の自助努力を促しつつ、経済開発に資することを目的としている。特にアジア諸国を中心に、経済インフラ整備に重点的に取り組んできた。
    しかし、最近、経済協力における新たな動きとして、電力、鉄道、通信、港湾等のインフラ整備に、民間部門の参入を認め、企業活力を利用してプロジェクトを立ち上げようという、民活インフラ・プロジェクトの傾向が強まっている。わが国ODAもこれを受けて政策や対応の変更が必要である。
    アジアにおける民活インフラ事業への資金需要は、1兆から1兆5,000億ドルといわれる。その中でも、特に民活インフラ事業に積極的なのが、タイ、インドネシア、フィリピン、中国でこれにインド、パキスタンを加えると、合計223件のプロジェクトがある。しかし、そのうち現実に稼働しているものが9件、建設中のものが18件と、実際にはほとんどが構想の域を出ていない。資金規模を見ると、223件中、50%が500億円未満、35%が500億円から2,000億円、残りの15%が2,000億円以上のプロジェクトである。セクター別では、電力セクターが圧倒的に多く、223件中162件である。電力セクターの国別件数では、タイ47件、中国32件、インドネシア25件、フィリピン24件となっている。通信セクターのプロジェクトは、タイ、フィリピンに集中している。

  3. わが国政府の取組み
  4. アジア地域において活発化する民活インフラ事業に対して、わが国政府としての方向性を示すために、今回の中間報告を発表した。
    今後、政府は、民活インフラ事業の支援体制の整備に迅速に取り組んでいく。外務、大蔵、通産、経企の4省庁に加え、運輸、建設、郵政、農林水産省の計8省庁をメンバーに、途上国や企業からの要請案件に対して、政府としての統一方針および具体的な支援策を検討するために、民間活力インフラ支援ワーキング・グループを設置した。
    また、個別事業の資金調達などの支援として、海外経済協力基金(OECF)は、既に第1号民活インフラ・プロジェクトであるハブ・リバー・プロジェクトに出資している。従来、OECFの出資は、公的プロジェクトに限られていたが、現行体制でも民活プロジェクトへの出資は可能である。円借については、OECFは、円借対象プロジェクトを民活プロジェクトと有機的に結び付け、民活プロジェクトの立ち上げを支援することを検討していく。
    日本輸出入銀行については、審査機能の充実のため、プロジェクト・ファイナンス部を設置した。貿易保険については、プロジェクト・ファイナンス室を新設し、今後、一層の拡充をはかるつもりである。ドル建て保険の実施については、検討の視野に入っている。

  5. 途上国政府との協力
  6. 途上国において民活インフラ事業が適切に推進されるためには、民活インフラ事業が、途上国の経済開発の全体戦略に沿った事業であること、途上国政府が事業に対し責任ある関与を行っていることが重要である。
    そこで、わが国政府は、従来からの円借款年次協議の場を活用し、途上国政府との政策協議を強化していく。政策協議を通じ、途上国の開発計画や経済インフラ整備計画の策定などの環境整備の支援、民活インフラ整備のための各種制度の整備を行うよう支援していく。

  7. わが国企業への期待
  8. しかし、わが国企業による関与は、全体のわずか1〜2%に過ぎない。企業側も人材の確保、ノウハウの習得等、取り組むべき課題は多い。特に施設の運転や補修・管理などについての経験やノウハウを有する経済インフラ事業者が、海外のインフラ事業に取り組んでいくことが促進されるべきである。そのための国内の規制緩和が不可欠だが、資源エネルギー庁では、公益事業部門の海外展開に関する検討会を2月27日に設置し、5月には報告書を発表する予定である。
    政府および関係機関も民活インフラ事業推進には、前向きに対応しており、企業から具体的なプロジェクトについての相談を歓迎している。また、相手国政府との協議等を通じてリスクを最小限化するなど、プロジェクトの立ち上げを支援していきたい。

途上国におけるインフラ整備の変化


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