環境安全委員会(委員長 関本忠弘氏)/3月13日

97年は「地球環境の年」
―環境問題における重要課題


97年は国連環境特別総会(地球サミットのフォローアップ)が開催されるなど「地球環境の年」になると思われる。通産省の鈴木環境立地局長より環境問題の重要課題を聞いた。

  1. 通産省鈴木環境立地局長説明
  2. 97年の「地球環境の年」を控え、本年は準備の年として重要な位置づけにある。環境問題の背景とともに、環境管理・監査、地球温暖化問題、廃棄物処理・リサイクル問題、有害大気汚染物質対策、環境産業の振興の具体的課題について説明をしたい。

    1. 環境問題の背景
    2. 近年の環境問題を捉えるポイントは3つある。
      1. 都市型・生活型の廃棄物問題や地球温暖化問題に代表されるように排出形態が複雑・多岐になってきていること、
      2. 規制緩和の流れの中で環境についても規制のとらえ方を再定義する必要があること、
      3. 来年の地球環境の年に向けての内外の関心が高まってきていること
      である。
      さらに、環境問題には3つの広がりがある。まず1つ目は、WTOでも貿易と環境について議論されているように、環境問題はもはや一国だけの問題ではなく、地域的広がりがあること、2つ目は低濃度であっても長期間暴露すると健康に影響があるというベンゼンなどの有害大気汚染物質問題のように時間的な広がりがあること、3つ目は廃棄物問題や地球温暖化問題のように日常の生活をしている国民が加害者であり同時に被害者であるという主体者の広がりが見られるということである。
      環境問題の質とともに、対策も変化している。まず、従来からの規制的手法については規制緩和の流れの中で規制をかけることが難しくなってきている。次に自主的対策については、現段階では科学的知見が十分ではないが、地球環境や人体への著しい影響が予想されるために予防的に対策をとる必要がある地球温暖化や有害大気汚染物質のような問題に対して効果がある。これからは自主性を尊重した対策と規制的な対策のベストミックスをはかる必要がある。
      このような環境問題や環境対策の変化を背景に、具体的課題は次の通りである。

    3. 環境管理・監査
    4. 環境管理・監査は法に基づくものではなく、企業などの組織が自主的に社会から評価を受けることにより環境対策を促進するメカニズムである。本年7月頃に予定されている環境マネージメントに関するISO(国際標準化機構)規格の発行に合わせて、国内でも環境JISの制定や第3者認証制度の構築を準備している。また、今後ISOではLCAや環境ラベリングなどの規格作りにシフトしていく。

    5. 地球温暖化問題
    6. 2000年以降の国際的な地球温暖化対策の方針を決める気候変動枠組み条約第3回締約国会議を来年、日本に誘致する方向である。そのためには、温暖化問題に対する日本としてのスタンスが決まっていなければならない。安定成長と環境のバランスが大事である。2000年以降の国際的な温暖化対策においては共同実施活動など、途上国も参加できる仕組みを作っていく必要がある。日本でもジャパン・プログラムを発足させ、4月から6月までプロジェクトを募集することとしている。企業の参加をお願いしたい。
      2000年以降の地球温暖化対策をどうするのか、第3回締約国会議にどのように臨むのかは重要な課題である。第3回締約国会議を日本で開催することとなれば日本は難しい舵取りを迫られることになる。

    7. 廃棄物・リサイクル
    8. 産業廃棄物処分場の残存容量は残り2年分しかなく、その対策は重要な課題である。処分が難しくなれば引渡しコストの増加、生産そのものへの障害になる可能性すらある。
      一般廃棄物については、当面は、95年に成立した容器包装リサイクル法を円滑に施行することが大事だ。
      今後は、粗大廃棄物(廃自動車、廃家電)、産業廃棄物に焦点が移行していくと予想される。また、産業廃棄物の処分場の問題、業者の在り方、処分場が不足したときにおきる不法投棄、違法投棄対策も重要な課題である。その他の廃棄物問題においても、産業界による費用負担が課題となってくると予想される。

    9. 有害大気汚染問題
    10. 長期間暴露すると人の健康に何らかの影響のある有害大気汚染物質に対して、国際的なハーモナイゼーション等を背景に、わが国においても、従来のパイプエンド対策に止まらない生産工程を含めた対策強化の動きが出ている。通産省としては、法的規制ではなく、産業界の自主的取組みが対策の中に組み込まれるように主張してきた。その結果、都道府県知事が一定量以上を排出した事業者に対しては罰則のない勧告を行うこととなった。来年4月より施行され、3年後に見直しを行う。産業界の自主的取組みはますます重要になっている。

    11. 環境産業の振興
    12. 環境産業を定着化させることはきわめて有効な環境対策であると考えている。異業種民間企業を中心としたエコ・レギュレーション・フォーラムを新設し、検討を行なっている。環境産業振興のためには規制バリア、技術バリア、情報流通バリア、コスト・バリアの4つのバリアを突破することが必要であると考えている。

  3. 質疑応答
  4. 経団連側:
    大気汚染物質対策の具体的な対策にあたっては政府内でも十分調整を行い、二重三重の規制を避け、一本化していただきたい。
    通産省:
    環境庁と良く話し合い、二重三重の規制にならないように努力していきたい。有害大気汚染物質防止対策のように発生源が多様で複雑な問題は、地方自治体のような個別の組織が別々に対策を行うものではない。それよりも中央で、通産省や厚生省などの審議会同士をうまく連携させて一貫した対策を取る方が意味があるのではないかと考えている。


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