ドナニ ドイツ連邦特別顧問との懇談会(司会 石原秀夫氏)/3月8日

日独は既存の社会システムの変革が必要


来日中のクラウス・フォン・ドナニ ドイツ統一関係特別任務庁特別顧問を招き、統一後の東部ドイツの現状とドイツ経済の展望について懇談した。フォン・ドナニ特別顧問は、日本とドイツ経済の展望について「両国の経済復興は、20世紀における奇跡ではあるが、今後、世界経済の急速な変化に対応して力を維持するために既存のシステムを見直す時期に来ている」と強調した。
以下は、フォン・ドナニ特別顧問の発言の概要である。

  1. 日独の奇跡
  2. 1968年に、日本の政治・経済システムを視察するドイツ政府の訪日ミッションに参加した。約30年後の今、改めて日本を訪れ、日本とドイツが、20世紀の経済的奇跡であることを改めて認識した。両国とも、経済復興の過程において、多くの独自の社会システムを創り出し成功をおさめてきたが、今、経済の急速なグローバル化に対応し、従来の力を維持しつつ、既存の社会システムの見直しを迫られる時期に到ったと思う。

  3. ドイツの3つのチャレンジ
    1. 国内インフラの整備
    2. 経済のグローバル化に対応した情報、通信、運輸等のインフラ整備が求められる。

    3. 欧州経済のグローバル化への対応
    4. 1項同様、市場統合のなされた欧州におけるドイツ経済の優位性を保つ社会システムが必要とされている。

    5. ドイツ経済の真の意味での東西統一
    6. ドイツの経済的な東西統一は完了しているとは言えない。東部ドイツ地域は、国土にして全ドイツの1/3にあたるが、人口では1/5、GDPでは1/10、さらに輸出額においては1/50に過ぎない。5〜7年のうちには、東部ドイツ地域の社会インフラの整備は、旧西ドイツ地域並みになるといわれているが、恐らくそれだけでは、東部ドイツ地域の経済が世界に通用するものになるとは言えないだろう。

  4. ドイツ経済の現状と課題
  5. ドイツ経済全体の発展のためには、東部ドイツ経済の自立が必須である。失業率は、西部が 9.6%なのに対し東部は17.5%と極めて高く、工業化も進んでいない。今後は、中小企業の育成などにより、東部経済の振興を図らなければならない。
    一方、高い労働コスト、充実した社会保障制度(健康保険、失業保険等)、東部ドイツ復興のための高い税金等によってドイツの産業は競争力の低下、さらには空洞化の危機に直面している。
    鉱工業を中心とした社会においては、従来のドイツ型システムは非常に適していた。今後は規制緩和、連邦政府の強化などの課題に柔軟に対処する事で、変化に即した新しい社会システムを形成する必要がある。また、経済の展望を悲観せず、社会に意義を見出せる若者を育成することが必要である。


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