最近の欧州情勢と日仏関係に関する懇談会(司会 樋口廣太郎ヨーロッパ委員長)/3月5日

バンコクでの日仏首脳会談は新たな日仏関係の出発点


ヨーロッパ委員会では、一時帰国中の松浦駐仏大使を招き、最近の欧州情勢と日仏関係について聞いた。同大使は、「核実験終了後、フランスは対外的イメージアップのために積極的な外交を展開している」、「先の日仏首脳会談は、新たな日仏関係の出発点となる」と述べた。
以下は松浦大使の発言の概要である。

  1. 最近の欧州情勢には、3つの特徴がみられる。まず第1は、各国で政権交代が相次いでいることである。フランスでは昨年5月に、中道保守連合が政権を奪回しシラク大統領が誕生した。また、スペインでも国民党が第1党となった。さらに、イギリス、ドイツでも、労働党、社会民主党(SPD)といった野党が支持を拡大している。

    各国で政権交代が起こっている理由としては、

    1. 経済に対する国民の不満、
    2. 長期政権に国民の飽きがきていること、
    が挙げられる。

    第2の特徴は、欧州統合が踊り場に来ていることである。各国は、通貨統合に必要な経済収斂条件を達成すべく努力しているが、見通しとしては達成できるかどうかは不透明な状況にある。特に、昨年末頃から欧州全体の景気が後退し始め、失業率も上昇してきている中で、単年度の財政赤字を対GDP3%、累積公的債務を対GDP60%、という経済収斂基準が満たせるかどうかが課題となる。

    第3の特徴は、安全保障政策の再構築である。冷戦時代は、ソ連の脅威にいかに対抗するかがテーマであったが、冷戦終了後、

    1. ロシアを再び脅威にさせないこと、
    2. ユーゴ問題にみられるような地域紛争、テロ、麻薬などへの対応、
    がテーマとなっており、これらに対応できるような新たな安保体制を模索中である。

  2. フランスの外交政策は、従来、
    1. 欧州統合の推進、
    2. 欧州独自の安保体制の構築、
    3. フランス語圏の連携を保つこと、

      が3本柱となっていた。これに加え最近は、

    4. 輸出振興・対仏投資の促進、
    5. 核実験によりダウンしたフランスのイメージ改善
    に努力している。先のアジア欧州会合に対するフランスの積極的な取り組みには、輸出・投資振興への意欲が表れている。また、核実験終了直後のシラク大統領の訪米、直前に取りまとめた核軍縮イニシアチブを携えてのシラク大統領のアジア欧州会合出席など、フランスはイメージ改善のために積極的な外交を展開している。

  3. 核実験の最中には、日仏関係には確かにぎくしゃくしたところがあったが、ここに来て、
    1. シラク大統領の訪日の検討、
    2. 日仏対話フォーラム(仮称)の設置作業の本格化
    など、日仏関係は再構築に向かっている。アジア欧州会合時に開かれた日仏首脳会談は、新たな日仏関係への出発点となろう。


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