新しい全総計画に関するワーキング・グループ/3月7日

地域の側からみた国土づくり・地域づくりへの期待


新しい全総計画に関するワーキング・グループ(座長 竹内 宏氏)は第3回会合を開催し、元湯河原町議会議員で文化評論家のツルネン・マルテイ氏を招き、地域の側からみた国づくり・町づくりについて、フィンランドとの比較も含めて話を聞いた。なお当日は、新しい国土軸のあり方を巡り、自由懇談を行なった。

  1. ツルネン・マルテイ氏 講演
    1. 日本のくに・まちづくり
    2. 日本の政治は官僚政治であり、地方自治体は国の出先機関としてのイメージが強い。直接選挙で選ばれる議会はあるが、議会は行政が作った計画、予算を追認するに過ぎない。
      戦後の日本では、「欧米に追いつき、追い越せ」という明確な目標の下、自民党の単独政権のおかげで政治は安定していたが、中央政府の画一主義的な政策によりどこも同じような街になってしまった。
      地方から人口が流出して過疎化が進み、食糧自給率も約34%まで低下していることは問題である。

    3. フィンランドのくに・まちづくり
    4. フィンランドの政治は、日本に比べると民主的である。地方自治体は国の出先機関ではなく、すべての決定権は議会が握っている。また、比例代表制なので地方でも政党の役割が強く、各政党の支部がまちづくりのイニシアティブをとっている。予算面では、地方自治体の歳入の約22%が国からの補助金となっているが、それも「ヒモ付き」ではなく使途は議会に任されている。女性の政治への参加は日本より積極的であり、議員の約4割は女性である。
      フィンランドのインフラは、国が中心となって整備するものと地方自治体が整備するものに明確に分けられている。道路・鉄道・空港・国有林等については直接国が整備し、それ以外のほとんどのインフラ整備は地方自治体が行う。
      最近フィンランドでは、都心部のマンションを売り、オフィスから車で1時間程度の森に2〜3haの土地を求め移り住む人が急増している。現代のフィンランド人にとっては、森に住んで都市で仕事をするのが理想的なライフスタイルとなっている。

    5. 国土審議会「21世紀の国土のグランドデザイン」に対するコメント
    6. 国土審議会計画部会がとりまとめた「21世紀の国土のグランドデザイン」の理念は素晴らしいが、全体的に曖昧で具体性がない。農業の再建や新エネルギーの開発についても触れ、21世紀という新時代に向けての夢のある画期的な計画を検討するという方向を示すべきである。

    7. 都市と田舎の新たな関係
    8. 日本では、何が田舎で何が都市なのかよくわからなくなっているのではないか。個人の生活や企業の立地について、都市と田舎の新しい関係を検討してみてはどうか。

    9. 地域活性化のための提案
    10. 地域の活性化のためには、(1)高速道路の整備と海上交通手段の活用、(2)農業再建、(3)新しい時代にふさわしい新首都の建設が不可欠である。

    11. 21世紀の新しいライフスタイル
    12. 21世紀の新しいライフスタイルとしては、心の豊かさ、個人の生き方が重視されていくと思う。また、市民参加型のまちづくり活動が活発化し、地域も独自の海外との交流を進めていくことになろう。女性の政治への参加も積極的に行われる必要がある。

  2. 自由懇談(概要)
    新しい国土軸のあり方について
    1. 第一国土軸が意図的に軸として形成されたものではなく、あくまでも需要追随型のインフラ整備が行われた結果として形成されただけであるという見方もある。新しい国土軸とは、従来の地域割の弊害を打破するような広域連携のための軸であるべきで、むしろ面的に考える必要がある。

    2. すべてについて国が関与するような国土計画を策定する必要があるのか。地域の開発を、軸の形成により進めるのか、面的な整備で進めるかという2つの選択肢があろうが、必ずしも軸を中心とする考え方にとらわれる必要はないのではないか。

    3. 社会資本の整備は全国的に必要であり、東京・大阪間を中心に政策を考える傾向を改める必要がある。

    4. 新国土軸が文化的・歴史的に関連性があるものだとは思えず、その概念もわかりにくい。昔は川筋が交流の中心であったが、そういう発想があっても良い。

    5. 文化も交通基盤がなければ伝達できない。国土軸は交通軸であるべきだ。

    6. 交通手段の発達した現代においては、あえて軸をつくらなくても交流は可能である。無理をして軸をつくるよりは、それぞれの地域の特性を活かした都市づくりを進めるべきではないか。

    7. 新国土軸という言葉はハードのイメージが強いが、情報通信ネットワークが発達すれば、ハードを超越した相互交流的なネットワークが可能となる。そうなると、従来のハード中心の国土計画の考え方を変えなければならなくなる。

    8. 近隣地域よりもむしろ離れた地域との交流・連携を模索する必要がある。また、地方分権を推進しなければ、新国土軸がかえって中央集権的な体制を強化することになりかねない。

    9. 国土軸というと交通基盤のイメージが強いが、交通基盤が必要ならばそれ自体を訴えるべきである。複数の要素を一緒にして新国土軸が必要だと主張するのは分かりにくい。

    10. 都会に人が集まる理由は、文化的な施設があることや、いつでも仲間と会えるというような精神的なところにある。人間の精神的な面は無視できない。

    11. 交通基盤整備により大都市への一方通行的な集積が起こらないよう配慮すべきだ。


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