経団連提言/3月26日

創造的な人材の育成に向けて
―求められる教育改革と企業の行動


経団連では、豊かで魅力ある日本を築いていくためには、社会のあらゆる分野で創造的な人材が求められるという認識に基づき、創造的な人材の育成に関する懇談会(座長 末松謙一氏)での議論をもとに、3月26日開催の理事会において、標記提言をとりまとめた。提言の要約となる「創造的な人材育成のための5つの提言、7つのアクション」(概要)を以下に掲載する。

創造的な人材育成のための『5つの提言、7つのアクション』

来るべき21世紀において、豊かで魅力ある日本を築くためには、社会のあらゆる分野において、主体的に行動し自己責任の観念に富んだ創造力あふれる人材が求められる。
しかし、わが国の現状を見ると、教育制度はもとより、企業の人事システムなど社会全般においても、このような創造的人材が育ちにくい状況にあり、このままでは世界における指導的国家の一つとして、活力ある日本を築くことは不可能といわざるをえない。今後、わが国にとって、人材育成の面で、誰もが自分の目標を実現するに相応しい教育や進路を選択でき、その能力を最大限に発揮できるよう、「複眼的」で「複線的」なシステムを実現していくことが大きな課題となっている。
こうした観点から、経団連では、創造的な人材育成のため、以下に「教育界・行政・家庭への5つの提言」、「企業・経済界としての7つのアクション」を掲げ、教育改革の一層の進展を期待するとともに、企業・経済界の自己改革を求めたい。

  1. 教育界・行政・家庭への5つの提言
    1. 教育にかかわる規制緩和を進める。
    2. カリキュラム編成の弾力化、学校選択の弾力化など

    3. 教育機関の多様化・個性化を進め多くの峰を持つ教育体系を構築する。
    4. カリキュラムの改革などを通じた教育機関の多様化・個性化の推進、学生の進路選択幅の拡大のための編入枠や単位互換制度の拡充など

    5. 複眼的評価の大学入試を行う。
    6. 例えば、大学入試センター試験は高校までの基礎学力の有無を判断する資格試験的なものとし、各大学毎の試験はそれぞれの求める人材に合わせ、論文、面接など選抜方法を工夫するなど

    7. 思考力と体験を重視しつつゆとりある学校教育を行う。
    8. 討論やフィールドワークなど思考力と体験を重視する授業の推進、新時代のリテラシーである外国語やコンピュータ関連の教育の拡充、中高一貫教育の拡大などを通じたゆとりある教育の実現、独創的人材を育成するための飛び級の実施拡大など

    9. 家庭の教育力を回復する。
    10. 子供に社会生活の基本を教える、子供の資質・能力に応じた適切な進路選択を行うなど

  2. 企業・経済界の7つのアクション
    1. 採用時に学校名を聞かない〜開かれた採用の推進と求める人材の明確化。
    2. 例えば、オープンエントリー制(公募制)の拡大やリクルーター制の縮小、学校名を一切聞かない採用の実施、職種別の採用などを通じた求める人材の明確化など

    3. 入社式がなくなる〜通年採用への移行。
    4. 通年採用や秋期採用の実施など

    5. 新卒にこだわらない〜経験者採用(中途採用)の拡大。
    6. 例えば、経験者採用の門戸の常に開いておく、社内における経験者の比率を大幅に引き上げるなど

    7. 個人のやる気と能力を引き出す〜柔軟な処遇・評価制度の構築。
    8. 意欲ある個人に活躍の場を与える社内公募制や、高度な専門能力を持つ人材を特別に処遇するための専門職制度の導入など

    9. 「教育支援ネットワーク」を構築する。
    10. 企業の教育支援活動に関する情報を収集・蓄積し、インターネットなどを活用して、教育界などに広く提供していくための「教育支援ネットワーク」の早期構築

    11. 教員の海外派遣研修プロジェクトなど教育への支援活動に取り組む。
    12. 経団連がこれまで実施してきた教育支援プロジェクト(留学・奨学事業など)の充実ならびに、教員の海外派遣研修プロジェクトなど新規プロジェクトの推進

    13. 「フォローアップ協議会(仮称)」を設置する。
    14. 規制緩和の推進や各界との意見交換などに取り組むためのフォローアップ協議会(仮称)の設置


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