首都問題委員会 特別フォーラム/3月21日〜22日
特別フォーラム『首都機能移転をどう進めるか』を開催
首都問題委員会(委員長:河野俊二氏)では、今後の首都機能移転への取組み方策を検討すべく標記特別フォーラムを開催した。当日は、西田司自民党行政組織・首都機能移転委員長、島田晴雄慶応義塾大学教授、宮智宗七産能大学教授の講演に加え、恒松制治埼玉総合研究機構理事長、柴田守日本商業労働連合会会長、竹澤清隆東北経済連合会副会長、阿久津一中部経済連合会常任顧問、水上萬里夫経団連首都移転部会長をパネリストに迎えパネルディスカッションを行なった。
- 西田委員長講演要旨
- 今後の手順について
- 今国会で調査選定機関の設置法を成立させる必要がある。
- 最終的には国会が移転先地を決定すべきである。
- 国会等移転調査会の「東京から60〜300km」という条件は最大限に尊重すべきだが、そのために他の重要な要素を犠牲にすべきではない。
- 調査選定機関の設置法について
議員立法による「国会等の移転に関する法律」の改正で対応することが望ましいが、首都機能移転の「検討」から「推進」へと位置づけを明確に変更する必要がある。また、内閣総理大臣の諮問を受けて、審議会が候補地を選定する形が望ましい。
- 新首都のイメージ
新首都は十分な情報収集・発信機能を備えるとともに、自然と調和し、風格と親しみを兼ね備えた都市とすべきである。また、東京をはじめとする主要都市との連携、外国との交流も重視すべきである。
- 経済界への要望
国民の関心を喚起するためには、国民の目、耳に繰り返し入れることが有効である。経済界には、討論会・シンポジウム・世論調査等による世論の醸成という側面からの支援をお願いしたい。
- パネルディスカッション
- 島田教授基調講演要旨
- 東京一極集中のメリットのおかげで、我々は「超先進国日本」を築いたが、キャッチアップの段階は10年前に終わっており、今新しい時代が始まろうとしている。
- 首都機能移転は、(1)災害の回避と安全の確保、(2)ゴミ・環境・水資源問題の緩和、(3)居住条件の向上とゆとりあるコミュニティの発展、(4)一極集中の是正と新しい東京の発展、(5)個性ある全国のバランスのとれた発展に役立つ。
- 首都機能移転の意義として、(1)未来を拓く長期の国家戦略、(2)内外に先進国としての政治スタイルを示す機会、(3)地方分権、行政改革・規制緩和推進の契機、(4)未来を先取りする新たな都市像の創造などがあげられる。
- 今後の人口の高齢化、貯蓄率の低下を考慮すると、財政的にこの10年が首都機能移転を実現する最後のチャンスである。新首都建設は景気刺激的な経済対策であると同時に、貯蓄・投資バランスを是正し安定的な為替レートの基盤を築くという面でも効果がある。
- 各省庁のどの部署を移転させるか具体的に検討する段階が難航すると思われる。また、教育機能が東京に集中していることから、子女の教育の面で新首都への移住を望まない人が多く、教育問題が最も重要な戦略課題になる可能性がある。
- 首都機能移転は総合的なオペレーションとなることから、コンピュータを利用したバーチャルオペレーションを行う必要があり、そのための予算・組織・計画等を法律に盛り込むべきである。
- 移転先地が決まってしまうと移転先地以外の国民の関心が薄れてしまうので、移転先地は最後に決定すべきである。
- 世論の醸成のためには、議論を国民が見ることができるよう国会をテレビ中継すべきである。首都機能移転が現実味を帯びてくると、官僚の強硬な抵抗が起こると思われるが、それに対抗できるのは世論の力である。
- パネルディスカッションでの主な意見
- (1) 首都機能移転の進め方について
- 世論の醸成のためには女性や若い世代の声を聞く場を設ける必要がある。
- 首都機能移転を実現するためには徹底的な議論が必要である。
- 一極集中の是正は、東京から首都を移転することよりも、地方分権、規制緩和によって実現できる。
- 国会等移転調査会の最終報告は、官主導型のシステムに則って検討され、生活者の論理が欠けている。
- 既存の近隣都市の文化・教育施設等を活用することによって、投下資本をなるべく少なくすべきである。
- (2) 新首都のイメージについて
- 自然の地形を活かした都市づくりを行い、自動車と人間の空間は切り離すべきである。
- 住・職・遊のゾーニングが必要である。
- 首都機能移転を地方分権のきっかけとして考えるのであれば、60万人都市である必要はない。
- 今後の情報通信、交通機関等の発達を考えると既存の都市に首都機能を分散しても良い。
- (3) 移転後の東京について
- 移転跡地を居住環境の改善、防災のために活用すべきである。
- 移転後も東京は経済・文化・情報の中心でありつづける。
- (4) まとめ
- 従来の延長線上の改革では抜本的な行革や中央省庁の再編・合理化は期待できず、首都機能移転を梃子にすべきであるとの意見が多かった。
- 新首都はスリムで、移転先の環境を活かしつつ、第2の東京ではない、環境・自然と調和のとれた新時代の街づくりが必要である。特に、生活する住民の視点が大切であるとの意見が多かった。
- 世論の醸成については、移転先を選ぶ上でも、受け入れる地域から歓迎されることが必要であるし、何よりも国民自身が関心を持ち、議論に参加して内容を深めていく必要がある。
- 東京圏は、首都機能移転後も、経済首都として、活性化、発展が期待される。
- 国民世論の喚起と理解の推進は、経済界、特に経団連の大きな役割のひとつである。その際シンポジウムの開催やアンケート調査の実施、パンフレットの作成等、より国民に広く語りかけるようなアプローチが必要である。
- 宮智教授講演要旨
- 首都機能移転が一般の関心を引きつけられない理由
- ネガティブ・イメージの報道(阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件、住専問題等)の先行
- 政治・行政への不信感
- 移転候補地以外の人々の無関心
- 移転先地が決まっていないことによる具体的な議論の不足
- 土地取引の思惑、公共事業への漫然たる反感、並びに長びく不況による悲観的な保守ムードの蔓延
- 何を強調すべきなのか
ナショナルプロジェクトとしての重要性、在来型の公共投資にはない経済効果が期待できることを強調するとともに、首都機能移転によって規制緩和、行政改革・地方分権が実現するという論理を補強する必要がある。また、新首都の都市としての魅力をアピールすることも重要である。
- 世論の醸成を促すには
(1)新首都のデザインの国際コンクールの開催による話題づくり、(2)移転候補地の早期決定、(3)民間主導での推進、(4)「新しい時代の文化を創造する」ことを強力に押し出したキャンペーンが必要である。
- マスメディアとの関係
- 首都機能移転に関する新聞の主張は、(1)情報の公開、(2)民意の反映、(3)政・官・財の癒着の打破、(4)財政負担の抑制、(5)既存の枠組みにとらわれない新しい発想の5点に要約できる。これらの点を念頭に置いて世論の醸成を図るべきである。
- 一般の目に触れる頻度が高まらなければ世論は盛り上がらない。経済界は新聞のコラム等でわかりやすく説明すべきである。また、経団連会長の定期的な記者会見の場で発言をしてもらうことも有効であろう。
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