新しい全総計画に関するワーキング・グループ/3月27日

新しい全総計画に対する提案


竹内 座長 「新しい全総計画に関するワーキング・グループ」(座長 竹内 宏氏)では、3月27日、経団連ゲストハウスにおいて集中検討会を行った。当日は「アジア太平洋時代の日本のあるべき姿」について東亜経済会議中華民国委員会常務委員・東元電機会長の黄茂雄氏から、また「新しい全総計画の策定に向けた各地域の課題と提案」について各地の経済連合会代表者からそれぞれ説明を受けるとともに懇談した。以下はその概要である。

  1. 黄茂雄氏講演要旨
    1. アジア・太平洋経済の発展
    2. アジア太平洋地域は世界のなかで経済成長のスピードが最も速い地域であり、2004年にはアジア・太平洋地域のGDPが全世界の半分に達するという推測もある。アジア経済は、近年、米国経済の成長鈍化の影響を受けたものの、アジア諸国自体の経済発展に伴う相互交流、取引の増大が対米貿易の低減を十分カバーしている。

    3. 直接投資の効果
    4. 先進諸国から東アジアへの直接投資は、成長の加速と通商の拡大に多大な貢献をした。外資は時として地元産業に圧迫を与えることもあるが、圧倒的な資金力、技術力により比較的短期間に大きな国際競争力のある産業を構築し、雇用の増大と被投資国の経済成長に大きく貢献するという点で非常に有効である。

    5. 21世紀に向けての日本の課題
    6. 経済のグローバル化によって、各国の産業の接触・摩擦が著しく増加しており、それが諸国間の政策にも影響をもたらしている。日本が21世紀の未来に向かって邁進するには、
      1. 内外価格差の是正と規制緩和、
      2. 多国間にわたる国際的水平分業の一層の推進、
      3. 対外直接投資の拡大、
      が重要である。特に対外投資は日本にとって、貿易不均衡を是正するばかりでなく、水平分業の確立により国際競争力を強化する。また受入国も雇用の増大、輸出拡大、経済の発展を享受できる。特に、工業団地の開発とインフラ建設への投資が最も効果的である。

    7. 台湾の対外投資
      1. 台湾では多くの国々と正式な国交関係がないために、台湾政府が設置した基金を使い、民間の第3セクターを通じて相手国の政府に援助することが多い。
      2. 台湾は中国に対しても経済援助を行なっている。台湾は中国との経済関係の拡大によって、大陸にもいずれ訪れるであろう民主化の時代に向けて、触媒としての役割を果たしたいと考えており、今後も善意を示しながら援助を継続する。
      3. しかし資金の援助だけではあまり効果的ではない。インフラを整備し、工業基地の整備・開発と企業投資の誘致を行うことが有効であるとの観点から、現在スービック湾(フィリピン)、パナマシティ、バタム島(インドネシア)など8カ所に投資を行なっている。

    8. 基礎研究と創造的高度技術の開発
    9. 日本は応用技術には長けているが、基礎技術の研究にあまり力を入れていない。また、日本企業は技術移転を渋る傾向がある。国際親善と信頼関係を樹立するためには、基礎研究を推進し、新技術を創出して各国が必要とする技術をタイムリーに移転することが重要である。

  2. 新しい全総計画の策定に向けた各地域の課題と提案
    ―各地経済連合会の説明要旨
    1. 北海道経済連合会 中野事務局次長
    2. 北海道・東北の関係自治体・経済界で構成する「北海道・東北21世紀構想推進協議会」では、94年4月に「ほくとう銀河プラン」を公表した。同提言では、新たな日本の発展のために「ほくとう新国土軸」の形成が必要であると訴えた。
      また道経連では、95年、北海道が優位性を有する産業の高度化・高付加価値化や新産業育成を図る「産業クラスター構想」等を盛り込んだ「21世紀に向けた北海道の指針」を公表し、実現に向けた取組みを強化している。

    3. 東北経済連合会 藤咲企画部次長
    4. 東北経連では、95年5月、緊急提言「ポスト四全総への提言・中間報告―“安全”と“創造”の国土づくりに向けて―」を公表し、首都機能移転の実現、複線型国土の形成、新事業・新産業の創出を訴えた。
      95年12月に国土審議会計画部会が公表した「グランドデザイン」では、地域の個性や主体性の発揮が強調されているが、現状、地域の自立のための条件整備が未だ十分でないことを認識すべきである。また「広域国際交流圏構想」についても、三大都市圏に偏ることのないよう国土全体のバランスに配慮する必要がある。

    5. 中部経済連合会 安木常務理事
    6. 中部地域では、94年10月「ニューHEART中部―環伊勢湾総合開発構想―」をとりまとめた。単一産業都市が多い中部地域では空洞化の懸念が大きいため、既存産業の高度化や研究開発型産業の育成等が急がれる。
      「グランドデザイン」では、東京一極集中問題が第一国土軸(太平洋ベルト地帯)のリノベーションにすり替えられているが、首都圏と中部等その他の地域を一律に論ずるべきではないと考える。

    7. 北陸経済連合会 塚本常務理事
    8. 北経連では94年3月に「日本海国土軸の形成に向けて」を公表し、さらに現在、新しい全総計画への提言のとりまとめ作業を進めている。
      新しい全総計画でも、「国土の均衡ある発展」という基本理念は受け継いでいくべきであり、交通・通信基盤の整備は国土軸形成のための前提条件である。そのうえで地域が自立し発展する国土形成の進め方について具体的検討を行なっていくべきである。

    9. 関西経済連合会 宮川事業推進部主任研究員
    10. 関経連では、95年10月に「新しい全総計画に向けて―中間報告―」を公表したが、基本的考え方は「グランドデザイン」とほぼ共通している。
      しかし、西日本国土軸に関西圏、中部圏が一律に論じられているのは問題である。また従来のブロックという概念を完全に否定することもいかがなものか。
      なお今後は、関西に通じる3本の国土軸との南北の連携や西日本・中部圏との連携のあり方について検討する必要がある。

    11. 中国経済連合会 向井事務局長
    12. 中国経連および関係自治体から成る中国地方発展推進協議会では、96年2月「中国地方発展ビジョン」を公表した。これは3本の国土軸と4本の地域連携軸から成る多極・多軸・分散型の三海二山交流圏の形成により、世界に開かれた分散的な「中四国経済文化交流圏」の形成を図ろうとするものである。

    13. 四国経済連合会 窪田事務局長
    14. 四経連では95年2月に「新しい全総計画への提言―21世紀新四国創造に向けて―」をとりまとめた。近年、四国地域の地位が低下している原因のひとつに、社会資本整備の立ち遅れがあげられる。社会資本の機会均等を図る観点から、立ち遅れが目立つ地域への公共投資の傾斜配分を行うべきである。

    15. 九州・山口経済連合会 大石企画部長
    16. 九経連では95年3月に「2020年に向けた九州地域の戦略」をとりまとめた。
      「グランドデザイン」では、開発が国主導から地域の選択と責任に委ねられるとしているが、現在の仕組みではそうしたかたちは難しいのではないか。新たな社会資本整備の財源の制度的枠組みについて、地域の主体性が活かされるよう具体的検討を行う必要がある。

  3. 意見交換
    1. 太平洋岸と日本海岸とをつなぐ、国土の肋骨部分の連携についてはこれまで十分な検討が行われてこなかった。今後必要なのは、こうした面ではないか。
    2. 関東圏をどうするのかについても検討を行う必要がある。
    3. 中央省庁が補助金や地方交付税交付金によって地方をコントロールするシステムはうまく機能しなくなっている。今後、国主導の開発を継続していくのか、地域に財源を含め真の意味での自治権を与えるのかについて議論する必要があろう。
    4. 社会資本整備を巡っては、これ以上非効率な投資をやめるべきであるという意見や、効率性のみで投資の優先順位を判断すべきでないという意見、さらに自治体間の連携が十分でないが故に、非効率が生じているという意見など多様な意見がある。
    5. 情報通信基盤については、既にハード面の整備はかなり進んでおり、問題なのは地域が発信する情報の内容である。

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