日本ベトナム経済委員会(委員長 西尾 哲氏)/3月25日

ベトナムのルオン副首相との懇談会を開催


ベトナムでは今年6月、第8回共産党大会を開催し、96年〜2000年の5カ年計画などについて審議する。折から来日していたチャン・ドゥック・ルオン副首相を招き、懇談会を開催し、豊田会長、歌田評議員会副議長ほかの出席を得て、同計画の準備状況や今後の経済運営について説明を聞いた。日本ベトナム経済委員会は91年11月の設立以来、ベトナムとの間で既に3回の合同会議を開催しているが、93年2月の第1回ハノイ会議、また94年4月の第2回ホーチミン会議にはルオン副首相も出席している。

  1. 拡大する日越経済関係
  2. ベトナムは日本との関係を重視している。両国は、経済、政治などあらゆる分野で良好な関係にある。特に93年3月のキエット首相の訪日、94年8月の村山首相の訪越、95年4月のムオイ書記長の訪日など、両国要人の相互訪問によって、両国の関係は一層確固たるものになってきている。また、ベトナム市場に対する日本企業の関心も高まっている。日本ベトナム経済委員会との間では既に3回の合同経済会議が開催されており、95年2月には豊田会長もベトナムを訪問された。ベトナム政府は、これらの経団連の活動を高く評価するとともに感謝している。
    日本からはODAのほか、民間企業による直接投資も多く受け入れている。95年までの累計で日本の対ベトナム直接投資は台湾、香港に次いで第3位であるが、95年だけをみると日本からの投資は件数・金額ともに第1位であった。しかもベトナム経済の発展にとって重要な分野に多くの投資が行われている。ベトナム政府としては、外国からの投資を促進するために、あらゆる努力を続けていきたい。
    95年2月に豊田会長が訪越されたとき、経団連からは9項目の要望(「日越経済交流のさらなる発展に向けた経団連の要望」95年2月10日)をいただいた。ベトナム政府は経団連の要望に沿うよう、可能な限り投資環境の改善に努めたい。両国の関係は今後も発展するだろう。経団連においても、ベトナムに対して引き続き関心を持ってほしい。

  3. 2000年までの5カ年計画
  4. ベトナム政府は91年の第7回党大会では、西暦2000年のGDPを90年の2倍にすることを目標にした。その後、予想を上回る経済成長が続いているため、 2.5倍になる可能性もある。91年〜95年の実質GDPの平均成長率は 8.2%であった。96年〜2000年は9%〜10%の成長を想定して計画を立てている。
    計画のなかでは、いままで以上に投資を促進することを明記する。2000年までの経済発展には 400億ドル程度の資金が必要となり、そのうち約半分は国内で調達する計画である。すなわち全体の約2割は政府予算、約3割は国内民間投資、残りの5割は外国からの資金調達を見込んでいる。海外資金については、各国政府による援助、国際金融機関からの融資、外国の民間企業による直接投資などに期待している。
    ベトナム政府は、インフラ整備、人材育成などを重視するとともに、あらゆる分野を広く開放することで、海外の投資家を迎えたい。インフラの整備については、経済効果が期待でき、投資資金を回収できる案件を中心に、BOT方式で海外投資家の協力を得たいと考えている。また、経済開放による市場経済化を目指している以上、今後の経済運営は国際的なルールに従ったものでなければならない。ただ、不健全な競争は避ける必要がある。ベトナムの経済発展に貢献する投資案件やプロジェクトを高く評価しており、既に良い結果を出しているものも多い。今後とも利益の本国送金は保障されるし、ベトナム憲法は外国資産の国有化はしないと明記している。
    ベトナム政府は、各国政府との間で投資保護協定を結ぶべく作業を続けており、近く日本との間でも締結される予定である。

  5. ベトナム国会の模様と共産党大会
  6. 3月2日〜19日、ベトナムでは国会が開催された。ここ数年の国会での中心的な審議事項は、法律の整備と経済に関する政府報告である。
    今国会で成立した法律として、まず第1に鉱山資源に関する法律がある。ベトナムの地下資源は豊富であり、外国資本による資源開発を計画している。過去数年間は石油開発に集中していたが、これは石油法が先に制定されたからである。今回の鉱山資源法の重要なポイントは、ベトナムの民間企業や外国企業がベトナムの地下資源を直接開発できるようになったことである。
    第2に国家予算法の制定である。この法律に基づき、歳入・歳出など国家予算を組むことになる。ベトナム国民に対する政府の責任が明記され、また国家予算と地方予算の区分が明確になった。
    第3に農村の協同合作社に関する法律の制定である。民間企業に関する法律は既に施行されており、95年は国営企業法が制定された。これによって、ベトナム経済の基盤となる経済組織に関する法律はすべて揃ったことになる。
    一般的な経済運営については、インフレや投機を防ぐためにはどうすればよいか、経済の安定成長を持続させるためにはどうすればよいかなどを中心に討議した。資本市場や金融制度の整備についても議論した。その他、一般労働者に関する政策、熟練労働者の養成、国民生活の向上などが主要なテーマとなった。ベトナムの国会議員も以前とは異なり、政府に対して多くの要求を出すようになっている。
    今年6月には第8回共産党大会が開催される。ドイモイ路線の一層の促進を確認することが重要なポイントである。また、これまでの政策を完成させるために、さらに何をすべきかが主要なテーマとなる。共産党大会に関連して話題になるのは世代交代であるが、大きな変化はないだろう。結果をみれば、誰もが納得するようなものに落ち着くと思う。


豊田会長と握手するルオン副首相


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