流通委員会(委員長 前田勝之助氏)/3月21日

消費者行動の変化と流通業のあり方について
―西友 坂本専務取締役からきく


流通委員会では、西友の坂本春生専務取締役を招き、「消費者行動の変化と流通業のあり方」について説明を聞くとともに懇談した。なお、当日は、規制緩和推進計画の改定に向けた、流通分野における経団連の再要望事項についても審議した。

  1. 坂本西友専務取締役説明要旨
  2. 坂本 専務

    1. 消費者の変化
    2. 流通業は消費者により変化する。消費者のあり方は、バブル期とその後の平成不況を経て、本質的に変化した。今や消費者は、市場と流通事業者と対等に取引きする存在となっている。

      (1) 選択の豊かさ
      消費者は、第2次世界大戦後には量的な豊かさを、高度経済成長期には質的な豊かさを求めてきたが、現在では、選択肢の豊かさを追求するようになっている。
      例えば、現在の消費者は、「欲しい商品がなければ選ばない」という「無の選択」を行う。
      また、第2次大戦後は消費者の欲しいものは皆同じという「十人一色」、高度成長期には各人が異なるライフスタイルを持つという意味で「一人一色」であった。現在は、一人の消費者がそれぞれのライフシーンに応じた消費を行うという「一人十色」となっている。

      (2) 消費範囲の拡大
      自家用車・新幹線・飛行機の利用、海外旅行の増加、通信販売、さらにはバーチャル・ショップ等により、消費者は、広域で比較して購買するようになった。例えば、海外旅行先で使われる金は既にわが国百貨店の年間売上高の半分に達している。こうした「広域比較購買」により、大店法は無意味なものになりつつある。
      また、「生活の24時間化」が進み、休日が土日以外の人も増え、時間的な範囲の拡大も進んでいる。

      (3) 価格志向とゆとり志向の増大
      かつての消費者は、価格が高いほど品質が良いと判断したが、バブル期を経て、自分の価値観と価格とを相対的に判断して買うようになった。
      また、平成不況の下でも、海外旅行とチケット等の選択的消費支出は伸びており、ゆとり志向が見られる。

      (4) 安心・安全・容易志向と自己責任志向
      女性の社会進出や高齢化の進展の中で、安全・安心・容易なものへの志向が高まっている。同時に、大衆薬ぐらいは自己責任で購入したいといった、自己責任志向も強まっている。

      (5) 個人消費の社会化
      リサイクルや地球環境問題への意識の高まり等、個人消費も社会性を持つようになっている。また、消費者からの苦情も、本質的な内容を含むものが増えており、これに受動的に対応するのではなく、アンテナ的存在、マーケティングの道具として積極的に活用することが必要となっている。

    3. 流通業の対応
    4. (1) 差別化と総合化
      消費者の多様性に応えるには差別化が必要である。差別化しつつ集客力を上げるため、ショッピング・センター(SC)が形成されてきている。これまでのSCは郊外型が中心であったが、今後は市街地開発の一環として、都心型も出てくるとみられる。

      (2) 価格リーダーシップの川下化
      流通事業者がPB商品や直接輸入に取り組んだ結果、価格リーダーシップが川下に移ってきている。

      (3) 小売業の装置産業化
      生活の24時間化に伴い営業時間が伸びてきており、小売業の装置産業化が進んでいる。こうした中で、交替勤務制やパートタイマーのさらなる活用、フレックス・タイムの導入が重要な課題となっている。

      (4) サービス化・情報化
      今後、有店舗小売業が、通信販売やインターネットによる商品販売と競争していくためには、配達やコンサルタント、メンテナンスなどのサービスの提供や、顧客に対する商品情報の提供が重要なポイントとなる。

      (5) 苦情処理・環境対策の本流化
      消費者対応や環境対策をいかに企業活動の主流に据えるかが、今後の重要な課題である。

  3. 質疑応答
  4. 問:
    わが国の商品サイクルは短かすぎないか。
    答:
    消費者の発展段階は欧米ほど成熟していないが、今後徐々に変わっていくと見ている。

    問:
    現在の消費者行動の変化は、マスコミやメーカー等に誘導されているだけではないか。
    答:
    その面もあるが、例えば「無の選択」は誘導できるものではない。景気回復により反動もあろうが、本質的な変化の兆候は現れてきている。

    問:
    消費者が求めるものをどう把握するか。
    答:
    マーケティングを徹底することである。多様化のためには商品の絞り込みが必要である。

    問:
    現在ない商品のニーズをいかに発掘するのか。また、規制緩和により、弱肉強食型の流通にならないか。
    答:
    競争が新しい商品を生み出す。規制緩和にはプラスとマイナスがあるが、基本は市場原理に委ね、独禁法違反は公正取引委員会に任せるべきである。今後、農業分野で規制緩和が進むと、流通業にも大きな影響が及ぶことになろう。


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