国際租税委員会(委員長 坂野常和氏)/4月8日

米国の税制改革の動向
―サミュエルズ米国財務省次官補が講演


国際租税委員会では、日本租税研究協会、国際租税学会日本支部との共催で、米国財務省のレズリー・サミュエルズ次官補(租税政策担当)による講演会を開催し、米国の税制改革の動向について説明を聞くとともに、懇談した。
以下は、サミュエルズ次官補の説明の概要である。

  1. 米国の税制改革の動向について
    1. 現在、米国では現行税制の複雑さ、不公平さ、また米国の貯蓄率の低さに対する懸念などを背景に税制改革をめぐる議論が盛んである。租税制度が的確に機能しているかどうかを定期的に見直すことは重要であるが、税制改革にあたっては、公正、効率、簡素という観点から慎重な検討が必要である。

    2. 米国の税制改革案の中でも、フラット・タックスが特に注目を集めている。例えば、アーミー下院議員は、現行の複雑な個人所得税や法人税にかえて、単一税率による支出ベースの課税制度を提案している。この場合、貯蓄、投資からの所得は免税となるが、支払利子、寄附金等は控除できない。フラット・タックスの下では、富裕者層は減税となる一方、低中所得者層は増税となり、税制の公正の観点から問題がある。また、フラット・タックスの最大の魅力である税の簡素化についても、社会的・経済的な目的を達成すべく税制を活用するためには、ある程度の控除(住宅ローンの利子、慈善寄附金等)を認めざるを得ず、結局税制の簡素化は難しくなる。さらに、個人の貯蓄に与える効果も不明確である。
      現段階において、現行制度にかえてフラット・タックスを導入する強い根拠はないと考える。

  2. 移転価格税制をめぐる動向
    1. 移転価格税制に関しては、APA(事前確認制度)が次第に重要なものとなっている。APAは納税者と税務当局が、事前に移転価格の算定方法について合意する制度であるが、これによって移転価格に関する紛争を事前に回避することができる。さまざまな日本企業が既にAPAに参加しているが、移転価格問題に懸念を持つ企業の積極的な参加を期待する。

    2. 財務省では、移転価格課税に関する罰則の最終規則を本年2月に公表した。納税者は、移転価格の算定に関し、文書の作成・提出義務を負い、合理的な理由なくこれを怠った納税者に対しては罰則が課せられる。なお、罰則規則について公正かつ一貫性のある執行がなされるよう、罰則監視委員会を設置し、全てのケースについて検討を行うこととしている。


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