日本ブラジル経済委員会(委員長 齋藤 裕氏)/4月4日

着々と進展するブラジルの憲法改定
―ブラジル連邦共和国連邦議会議員団と懇談


日本ブラジル経済委員会では、来日中のブラジル連邦共和国連邦議会マガリャンイス下院議長一行を招き、同国の憲法改定の審議状況を中心に説明を聞いた。同議長は、「過去、わが国において、これほどまでに精力的に改革を進めてきたことはなく、現在、進められている憲法改定作業も極めて前向きな姿勢で行われており、もはやこの改革の流れは後戻りすることはない」と強調した。以下はマガリャンイス議長一行との懇談の概要である。

  1. マガリャンイス下院議長説明要旨
  2. マガリャンイス議長

    1988年の新憲法では、いくつかの基本的枠組みが定められた。その特徴として基本的人権の擁護を唱ったこと、および各種の改革が可能となるようにしたことなどが挙げられる。現在の改革はこの基本的な枠組みの下、民主的な手続きに則ったものであり、国民の圧倒的な支持を背景に迅速に進展しつつある。

    憲法を制定した当初、政府与党が多数を占めていなかったことから、この憲法の暫定期間を5年と定め、5年後には憲法改正に取り組む予定であった。しかし当初期待したほどの成果を挙げるにはいたらなかった。その後、94年の選挙で政府与党が過半数を獲得し、改正のための基盤が整ったことにより、今日、一連の改定作業を進めることが可能となった。

    これまでのブラジル型の政治モデルでは国家の責任があまりにも大きすぎたと言える。したがって、改革の主たる目的は、ブラジル国内外の各種資源を適切に活用するため民間部門を活性化し、国家の本来果たすべき役割を管理上あるいは安全上の分野に限定すべきとの考えに基づいている。

    改革の中で経済秩序に関する憲法改正は既に完了しており、石油、電気通信分野など国家が独占しているいくつかの分野の民営化あるいは独占を緩和し、国内外の資本に対して開放した。電気通信分野では国家が行なっている投資額よりも数十億ドルもの大きな投資を見込んでおり、現在、所要の法整備を着々と進めつつあり、今年の前半にすべての審議が終了する予定である。具体的には、携帯電話など多くの部門で投資を行えるよう法律を整備し、また、外資に対する制限も完全に撤廃する方向で検討を進めている。

    これら改革に加えて、現在、行政面の改革を進めている。最も大きな課題は福祉改革である。すなわち、公務員の恵まれすぎた条件の変更であり、困難を伴うテーマではあるが精力的に取り組んでいる。税制改革もまた大きなテーマである。改革により適切な税収を確保することによって、財政収支のバランスを図る考えである。さらに知的所有権に関してもしかるべき制度を導入して、国際的な枠組みの中で十分な対応ができるよう体制を整えていきたい。

    かかる一連の改革はカルドーゾ大統領1人で推進しているわけではなく、国内の多くの政治勢力が結集し、取り組んでいることを付言したい。過去の政権の犯した過ちを繰り返すことのないよう、現在の安定を維持していきたい、と強く望んでいる。この決意は来日した与党、野党含めた私ども議員団の一致した見解である。

  3. 質疑応答
  4. 経団連側:
    ブラジリアへの首都移転をどう評価しているか?
    議長:
    ブラジリアへの首都移転はクビシェッキ大統領時代の1960年に行われた。当時の首都リオデジャネイロへの過度の集中を取り除くことと内陸部の発展を促すという目的があった。首都移転の結果、当初、ブラジリアは連邦政府の直轄下にあり、知事は政府により任命されていたが、88年憲法制定により自治権を獲得し、知事も選挙で選出されるようになった。問題として官僚機構だけがブラジリアに集中したこと、および行政機構の多くがリオに残ったために、行政上、リオとブラジリアの二重構造ができ上がり、コストが2倍になった点が挙げられる。官僚機構だけが集中したブラジリアは、基本的に生産はほぼゼロの都市であり、税収も少ないことから、連邦政府に多大な費用負担を強いている。
    しかしながら、悪い面ばかりではない。リオのように風光明媚ではないが、ブラジル国内のアクセス面は改善され、内陸地域の発展が促されるというメリットもある。


齋藤委員長と握手するマガリャンイス議長


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