インドシナ研究会(座長 荒木正雄氏)/3月27日

インドシナ3カ国のASEAN加盟をめぐる諸問題について意見交換


インドシナ3カ国のうちベトナムは、95年7月にASEAN加盟を実現した。カンボジアは95年7月、またラオスは92年7月にそれぞれASEANのオブザーバーとなっており、97年のASEAN正式加盟に向けて準備作業を進めている。これらの国々のASEAN加盟にかける期待や今後の課題について、インドシナ3カ国政府の中堅幹部に聞いた。

荒木座長

  1. カンボジア
    ―チェン・ヴィチア外務次官
  2. 91年10月のパリ和平協定締結以降、カンボジアは大きく変わった。93年5月に選挙が実施され、同年9月には新憲法が公布された。カンボジアは95年7月に東南アジア友好協力条約(バリ条約)加盟の批准書をASEAN側に提出し、オブザーバーになった。世界経済は相互依存関係を強めており、人口1,050万人のカンボジアにとって地域統合は重要である。政治の安定は経済的な繁栄によってもたらされる。
    97年を目標にASEAN加盟を実現したい。今年4月3日、ASEAN常設委員会のアラタス議長(インドネシア外相)に加盟申請書を提出する。ASEAN加盟については議会からも強い支持を得ている。外務省内にもASEAN担当部局を設置した。ASEAN加盟までには多くの作業が必要であり、主要閣僚が中心となり官庁間で調整を進めている。行政機構のほか、税制、会計制度、会社法、契約法など法制度の整備を進めている。
    政府は経済活動には介入せず、必要最小限の規制だけを行うようにする。ASEAN各国の経済成長は民間の活動によってもたらされた。ASEAN加盟によってカンボジアでも民間企業の成長を促進したい。農業、観光開発などに力を入れ、外資導入を積極的に進めたい。カンボジアは着実な経済成長を続けており、マレーシアやシンガポールの企業はカンボジアでの投資を検討している。日本企業にも進出してほしい。

  3. ラオス
    ―サヤカーン・シースヴォン外務省ASEAN課長
  4. ラオスは内陸国で海岸線がないが、山岳地帯を持ち、鉱物資源や森林資源などが豊富である。メコン河を活用した水力発電を行っており、タイに電力を輸出している。
    75年から85年まで計画経済のもとにあったが、86年以降、市場経済化を進めている。その後、ラオス経済は着実な成長を続けており、現在のペースを維持するためにもASEANへの加盟を目指している。92年7月に東南アジア友好協力条約に調印し、ASEANのオブザーバーになった。95年7月のブルネイでのASEAN外相会議においてラオスは、97年のASEAN正式加盟を宣言した。95年12月にバンコクで開催されたASEAN首脳会議には、カンボジア、ミャンマーとともに、ラオスからはカムタイ首相が出席している。
    ASEANに加盟するにあたり、英語力や技術の面で人材が不足しており、財政面でも制約が多く、解決すべき課題は山積している。これまでラオスは地域機構や経済的なグループのメンバーになったことがない。ASEAN加盟やAFTA参加に伴って、国内経済や財政にどのような影響が出るかを分析する必要がある。日本からも多くのことを学びたい。

  5. ベトナム
    ―グエン・チュン・タイン外務省ASEAN局副局長
  6. ベトナムのASEAN加盟は、86年以降のドイモイ政策に沿うものである。「経済的な繁栄によって平和と安定を築く」というドイモイの目標からもASEAN加盟には意義があり、またドイモイを成功させるためにもASEAN加盟は重要である。ASEAN加盟に伴い、AFTAへの参加に向けて準備を進めている。ベトナムの関税品目のうち約半分は既に税率が0%〜5%になっており、残りの品目についても2006年までに0%〜5%まで引き下げる。ASEANへの投資誘致、知的所有権、サービス貿易などの分野でASEAN諸国との協力を進めており、ASEAN産業協力(AICO)スキームについても合意した。進行中のプロジェクトに途中から参加するのは難しく、財政面で資金が担保されるまで待たなければならないものもある。域内の文化交流を目指すASEAN文化基金など資金が手当てされているものについては、ベトナムも既に活動を開始している。
    ベトナムとASEAN6カ国との間には経済的なギャップがあり、相互の協力を進めるうえで障害となっている。ベトナムの1人当たりGNPはインドネシアの約3分の1、シンガポールの約17分の1である。ベトナムは市場経済体制に移行してまだ間もなく、マクロ経済的な環境も整備されていない。経済、財政、行政、法務などの分野で改革に努めている。将来はWTOへの加盟も実現したい。
    現在ベトナムにとって日本は第3位の投資国である。日本からは投資だけでなく、投資環境改善のためにさまざまな支援を受けている。活力ある市場経済の構築に向けて、政策立案、行政や法制度の整備などの分野においても日本の協力を期待したい。

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