経団連訪中代表団/4月9日〜15日

江沢民国家主席、朱鎔基副総理などと今後の日中関係のあり方やアジア太平洋の問題について懇談


経団連訪中代表団(団長 豊田会長)は、中国国際貿易促進委員会の招待で、北京、上海、蘇州を訪問し、江沢民国家主席をはじめとする中国指導者や企業家と、中国が直面する問題や日中関係、アジア太平洋を中心とする国際関係について意見交換した。主な参加団員は三田、鈴木、米倉、末松、青井、樋口の各副会長、春名評議員会副議長、西尾日本ベトナム経済委員長、熊谷日本・インドネシア経済委員長、槙原アメリカ委員長、川本中国委員長代行、三好事務総長。

  1. 北京での懇談の概要
    1. 江沢民国家主席、朱鎔基副総理をはじめとする指導者とは、日中両国の長期ビジョンを中心に意見交換を行なった。
      中国側からは、第9次5カ年計画や2010年までの長期計画について説明があった。中国は、1人当たりGNPを2000年には1980年の4倍に、2010年のGNPを2000年の2倍にすることを目標としている。これを実現するためには、これまでよりは低いが、8%前後の成長が必要となるとの見方が示された。

    2. 経団連からは、21世紀につながる日中協力のモニュメントになるようなプロジェクトを提案した。(1)環境・エネルギー、農業、(2)長江(揚子江)の総合開発、(3)新幹線等の交通インフラの整備で、経団連として積極的に協力していく旨を表明した。
      中国側からは、内陸部との経済格差是正や食糧自給との関連で、長江の総合開発や農業での協力、また環境分野における協力に大きな関心が示された。

    3. 国家経済貿易委員会の王忠禹主任とは、中国の新産業政策に関し意見交換した。
      中国の産業構造は1次産業が20%、2次産業50%、3次産業30%であるが、先般策定した90年代の産業政策では、経済社会の基礎を固めるため、機械、機械・電子、電子、自動車、石油化学等の基幹産業の育成、国有企業改革、農業基盤の整備を重要な柱としたとの説明があった。

    4. 日中貿易と投資の問題については、対外貿易経済合作部の劉山在副部長と意見交換した。
      劉副部長からは、「95年の中国の貿易総額は2,808億ドル、うち日中貿易は575億ドルを占めるが、2000年には貿易総額5,000億ドル、日中貿易1000億ドルに拡大すると見込まれる。また、日本の対中投資も95年の実行ベースで1,300億ドルを超えており、日中経済関係は拡大の潜在力を秘めている。経団連にはより一層の協力を望みたい」との発言があった。
      また、劉副部長からは、今後の方向として、これまでの地域別の優遇策から産業別の優遇策に移行するとの説明があった。

    5. 中国企業管理協会の袁宝華会長をはじめとする企業家との懇談会では、中国の企業が抱える問題点と改革の方向につき中国側の説明を聞くとともに、意見交換を行なった。
      雇用維持と生産性向上をどのように両立させようとしているのかという経団連側の質問に対して、中国側からは次のような回答があった。国有企業が国民生活に必要な物資を提供し、財政収入の主たる源でもあることに変わりはなく、国民経済において依然重要な位置を占めている。そこで、国有企業に財産権、経営の裁量権を付与するとともに、科学的管理を導入して現代企業制度を確立する。その際、日本企業の経験も参考にしたい。

  2. 上海での懇談の概要
    1. 徐匡迪市長、蒋以任副市長から、上海の経済状況と発展計画について次のような説明があった。

      上海市は中国最大の工業都市としてこの4年間、平均GNP成長率14%、製造業分野の成長率17%、対外貿易量の成長率20%を維持してきた。浦東地区の発展速度はこれを上回っている。上海がここまで発展したのは、中央政府の改革開放政策によるものであるが、上海が多くの優れた人材に恵まれ、経済運営がうまくいったことも大きい。
      現在、外資系企業約14,000社が進出しているが、このうち日本企業は1,100社にのぼっている。日本との交流は緊密で、上海の発展に大きく貢献している。
      中央政府の第9次5カ年計画と2010年までの長期計画に対応して、上海市も発展計画を立てている。経団連にはより一層の協力を望みたい。
      発展計画では、市内の環状高速道路や地下鉄等の建設などの都市建設、飲料水対策、環境保全など総合的なインフラ整備を引き続き進めていくこととしている。また、第3次産業の発展にも力を注ぎ、浦東地区を中心に上海を金融・貿易の中心、21世紀のビジネス・センターとしたい。さらに、文化面の充実に努めたい。

    2. 黄菊上海市党書記からは、「日本経済も回復基調にあるようなので、上海と日本との協力関係は今後より一層拡大するものと期待される。今後は長江流域全体の発展を念頭に置いた上海の開発に努力したい」との発言があった。新幹線建設については、中央政府のプロジェクトであるが、上海市としても積極的に進めていきたいので、日本からもぜひ入札に参加してほしいとの話があった。

  3. 蘇州における経済開発区の視察
  4. 江蘇省の蘇州ではフィリップ・ヨー シンガポール経済開発庁長官、鄭斯林江蘇省長、楊暁堂副省長・蘇州市党書記、章新勝蘇州市長から、シンガポールと江蘇省とが共同で開発中のシンガポール蘇州工業都市(園区)と、蘇州市が独自に開発している工業新区につき説明を聞いた。さらに、稼働中の外資系工場や、商業施設、外国企業の従業員用住宅などを訪問し、工場を中心とする総合的な都市開発の進行状況を視察した。


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