資本対策委員会(委員長 片田哲也氏)/4月9日

資本市場活性化について長野大蔵省証券局長と懇談


経団連では、資本市場の整備・活性化は、活力ある日本経済を構築していく上で不可欠の課題であるとの認識の下、一貫して資本市場の活性化を働きかけてきた。その結果、近年、市場をめぐる規制の撤廃、緩和が進むなど、一定の成果があがっているが、さらに市場の一層の活性化を実現すべく、資本対策委員会では、大蔵省の長野証券局長を招き、証券行政をめぐる当面の諸問題について説明を聞くとともに、懇談した。

  1. 長野証券局長説明要旨
    1. 証券行政の基本的考え方
    2. ニューヨーク、ロンドンと並んで世界の金融を支えていく東京市場の国際的役割を十分に考慮するとともに、21世紀を控えてわが国経済を支えていくべき企業、産業の資金調達の場として、資本市場の活性化を進めることが重要である。また、個人貯蓄の活用、証券会社の金融仲介機能の向上等も今後の重要な課題である。

    3. 株式市場
      1. 先般、日本証券業協会が、エクイティ・ファイナンスにあたってのディスクロージャーの充実について方針をとりまとめたことを受け、時価発行公募増資のガイドラインを撤廃することとした。今後、ファイナンスは、開示された情報と投資判断をもとにすべて発行会社と投資家の間で決められていくこととなる。ファイナンスにあたっては、株主の利益に十分に目を向けることが重要と考えられ、発行会社において十分なディスクロージャーをお願いしたい。

      2. 株式発行に関する残された課題として、金融機関の増資、政府関連企業の民営化株の放出の問題があるが、適切な投資判断につながる十分な情報の開示がなされることが基本的に重要と考える。

      3. ニューヨーク市場の動向は注目されるところであるが、ここ1年をみると、米国では新たにファイナンスされた額よりも自己株式の取得、消却の方が上回るという点に着目する必要がある。わが国においても、みなし配当課税が凍結されたことを背景に、有力企業の中に自己株式の買入消却の動きが出ていることは評価される。時価発行公募増資と自己株式の利益消却という2つの手段が確保されることにより、企業は業務の拡大期、リストラ期それぞれに応じた対応を取れるようになった。

      4. 店頭市場については、21世紀を支える企業の資金調達の場として整備を進め、現在では米国のナスダック市場と比較して遜色のない公開基準となっている。取引所市場、店頭市場はそれぞれが特性を持つ横並びの関係にあり、店頭市場については、自らの投資判断でリスクをとって投資をする積極的な投資家を掘り起こす意味からも、引き続き、整備を進めていきたい。

    4. 公社債市場
      1. 適債基準の撤廃等、規制緩和が大きく進んだことにより、公募発行市場の自由化はほぼ完了したと考えられる。残された課題は私募市場と流通市場の整備である。

      2. 私募債については、公募・私募両市場をともに活性化させるという観点から、今般、1回当たりの発行上限額、年間発行上限額、起債回数といった発行に係る制限を撤廃することとした。また、公募債の流通市場の整備とバランスをとり、機関投資家間における私募債の転売制限についても一定の情報入手が可能になることを前提に、2年後、撤廃したいと考えている。
        なお、CPについては、償還期間が短期金融手段としては最大限の1年未満に延長されるとともに、発行適格基準についても実質的な撤廃が行われたことにより、発行に係る規制はほぼなくなったと考える。

      3. 社債の決済制度については、市場関係者からなる「社債受渡し・決済制度研究会(証券局長の諮問機関)」において検討しているが、決済遅延の解消、証券と資金の同時決済等の実現を図るべく、現在、早急に実現可能で、幅広く利用されることとなるような改善案のとりまとめ作業を行なっている。具体案を早い段階で示したい。

    5. 企業財務を巡る諸問題
      1. 企業経営の国際化・多角化に対応して、開示情報のスクラップ・アンド・ビルドを念頭において、ディスクロージャーの充実に取り組んでいきたい。当面は、デリバティブ取引情報の充実、連結情報の充実が重要であると考える。同時に、開示書類の整理・合理化などディスクロージャーに係る事務負担の軽減についても措置を講じているところである。

      2. 会計制度においては、デリバティブ取引に関して、証券会社、銀行に時価法を導入することとした。今回は商法の特例という形であるが、国際的な流れに合わせ、時価評価も含めたわが国の会計制度の見直しについて、今後、官民一体になった取り組みが求められると考える。

      3. 投資家への適切な情報提供の前提として、公認会計士による監査が重要である。現在、金融機関の不良資産の扱いに関係し、日本公認会計士協会において、監査に係わる問題を検討しているところである。また、公認会計士のみならず、監査役、株主等が様々な角度からチェックする体制を築いていくことが必要ではないか。

  2. 懇 談
  3. 経団連:
    1. 約50年を経過しようとしているわが国の市場システムを洗いなおし、21世紀に向け、今後の対応を検討すべき時期に来ているのではないか。
    2. 連結情報は、企業の国際化、多角化が進むにつれて重視していかなければならないが、連結納税制度が導入されないと連結重視の考え方は普及しないのではないか。経済界としては、純粋持株会社を考える上でも、連結納税制度は必須であると考える。
    3. 市場関係者が力をあわせて、市場機能の向上、株主・投資家重視に積極的に取り組むことが重要と考える。

    長野局長:
    1. 衆知を集め議論することは重要であり、検討していきたい。
    2. 連結納税制度については、関係局に経済界の考え方を伝えたい。
    3. 市場メカニズムを発揮させるためには、市場参加者それぞれが責任をもった行動をとることが重要であり、発行会社においては十分な開示を進めていただきたい。


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