まず第1に、中途半端な規制緩和では、実効ある競争はもたらされないという点である。
例えば国内航空路線に引き続き、タクシー事業についても幅運賃制の導入が検討されているが、いずれも参入規制の緩和が伴っておらず、実質的な競争促進には結びつかないのではないか。
第2に、規制緩和、競争促進は世界的な流れであり、規制緩和が進まない国は活力を失っていくという点である。規制で守られている業界も、規制が維持され続けることによってマイナスとなる点を認識すべきである。一見国際競争とは無縁の国内サービス産業も例外ではない。例えば内航海運のコスト高が是正されなければ、貨物は神戸や横浜でなく釜山や香港を経由して外航船で国内各地に配送されるようになる。
また産業間でも労働力等の経営資源の獲得競争が行われており、若年労働者は規制に縛られた産業より、自由度の高い業界で働くよう望むようになってきている。
第3に、消費者や学識経験者などに規制の実態に対する理解が不足している点があげられる。例えば規制が緩和されれば財やサービスの価格が下がる、という期待が消費者にあるが、実際には、繁忙期や混雑時には料金が高くなることもあり、それが市場原理であるということを理解する必要がある。また「市場の失敗を補うために規制が必要である」と主張する経済学者がいるが、実際には規制が経済社会の実態に合っていなかったり、規制により生じた既得権益を守るための大義名分として規制が利用されていたりすることがある。
最後に、運賃・料金の設定面で、事業者の経営合理化努力が反映されやすいとされるプライスキャップ制度などのインセンティブ規制については、上限価格の設定など、かえって行政の介入の余地が生じる可能性があり、安易に導入すべきでない。まず価格規制そのものの必要性を吟味すべきである。