1996年度版不公正貿易報告書に関する懇談会(司会 藤原常務理事)/4月22日

不公正貿易報告書は日米半導体取極の延長を支持しない


通産大臣の諮問機関である産業構造審議会は、3月末、1996年度版不公正貿易報告書を通産大臣に提出した。そこで、取りまとめの事務局を務めた通産省通商政策局公正貿易推進室の津上室長を招き、同報告書について聞いた。

  1. 津上公正貿易推進室長発言要旨
    1. 不公正貿易報告書は、WTO(世界貿易機関)諸協定など国際ルールを基準に、各国の貿易政策を評価しているもので、今年で5回目になる。ルールに基づいているので、「製品が売れないのは市場の閉鎖性による」といった主観的評価ではない。

    2. 本年度取り上げた中で特記すべきものは、(1)日米半導体取極、(2)中国のWTO加盟交渉、(3)日米自動車紛争である。
      第2次日米半導体取極は、7月をもって失効するが、米国側がこの延長を求めている。報告書では、
      1. 結果を約束することは自由経済の放棄につながり、経済合理性、資源の最適利用の観点から問題がある、
      2. 第1次取極当時から現在まで、半導体産業の構造には大きな変化が起きており、「資本国籍主義(原産地ではなくメーカーの資本国籍を問題とする立場)」に立つ半導体取極を延長することは問題がある、
      との理由で延長を支持していない。

    3. 中国のWTO加盟については、中国を世界の貿易体制に組み込むという観点から、従来より日本政府は支持している。
      昨年の日米自動車紛争を取り上げたのは、(1)記録に残す意義がある、(2)対米交渉を行なっている他の国への参考にしてもらいたい、と感じたためである。

    4. EU(欧州連合)については、CDドライブ関税分類変更問題やCEマーキング問題を取り上げた。

    5. 巻末には、日本に対する各国からの規制緩和要望を項目別にまとめた。

    6. 「世界の貿易体制は自由貿易と保護主義との間で揺れる振り子である」とよく言われる。ウルグアイ・ラウンド交渉終結時には、自由貿易の側に揺れていたが、現在は保護主義の側に揺れてきたのではないかと懸念している。例えば、途上国における自動車産業への規制措置はその例である。

    7. 通商問題は今後、関税、数量制限といった水際措置から、国内の規制に焦点が移ってくると考えられる。

  2. 質疑応答
  3. 問:
    米国の貿易障壁報告書はマスコミで大きく取り上げられている。不公正貿易報告書はどのような広報を行なっているのか。
    答:
    プレス・リリース、インターネット、在外公館などを通じて行なっている。通商関係者の間では浸透していると考えている。


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