サブサハラ委員会(委員長 笠原幸雄氏)/4月19日

転換期におけるアフリカ大陸

―1990年代中期におけるサブサハラ・アフリカの現状


サブサハラ委員会では、世界銀行のジェイコックス顧問(前アフリカ担当副総裁)ならびにアユブ・シニア・オペレーション・アドバイザーを招き、サブサハラ・アフリカの現状及び同地域の民間部門の発展に向けた世銀の取り組み状況等について説明を聞いた。
以下は両氏の説明の概要である。

  1. ジェイコックス顧問説明概要
  2. ジェイコックス顧問

    1. 南アフリカについて
    2. 南アの経済運営は非常に厳しい状況におかれている。過去12年間、1人当たりの国民所得は一貫して低下しており、経済成長率は2.7%〜3%と低水準である。と同時に、鉱業を除く産業の国際競争力は非常に弱く、輸入数量割当てを行なわなければ収益があがらない状況である。
      失業率については、黒人のプライム・エイジ・グループのそれは45%と極めて高い。その理由として労働組合が非常に強いため最低賃金、平均賃金の水準が非常に高いことが挙げられる。また教育、住宅、水道、保健衛生、医療などの改善も遅々として進んでいないため、ここでも社会的格差の是正が図られていない。RDP(復興開発計画)が策定されたにもかかわらず、新政権下で投資を決定する能力が備わっていないことや、中銀がインフレを恐れるあまり金融政策が保守的になりがちなために、豊富な資金が投資に向けられず、プログラムが実施されていないのである。

    3. 東部アフリカ地域
    4. ケニアは6%を超える経済成長率を達成しており、政治的にいくつかの問題は抱えているものの、民間投資も再び上昇する気配を見せている。ウガンダも一時期の大混乱から回復をみせ、現在7%程度の成長率である。タンザニアは、新政権の下、政府の透明性を確保し、責任を明確にするため政治改革が進められようとしており、経済も良好である。
      これら3国は南部アフリカ地域同様、将来的に大きな可能性を秘めており、世銀も積極的に関与している。現在、東アフリカ共同市場の確立に向けて協力関係を築いており、鉄道、港湾、税制等について研究を開始している。

    5. 西部アフリカ地域
    6. 2年数カ月前にCFAフランの100%切り下げが行われた。これは大成功を収め、各国の競争力を大幅に増強させた。例えば、コートジボワールは、切り下げ後、農業や製造業の貿易・投資が大きなブームを迎え、通貨切り下げ以前のマイナス成長から、今や大きなプラスの成長へと様変わりしている。
      ただし、ナイジェリアは政治的、社会的に問題があり、経済の規模は大きく、比較的開放されているものの、このままの状態が続けば、長期的にはリスキーな国である。

  3. アユブ・アドバイザー説明概要
    1. サブサハラ地域の民間産業
    2. この地域の産業は基本的に農業をベースとしており、近代的な産業は総生産の10%程度である。それも鉱業、繊維やその他の小規模な製造業に集中している。民間部門の投資規模は対GDP比で15%〜16%を占めるにすぎない。これは東アジアのおよそ半分である。
      外国からの直接投資も東アジアは著しく伸びているものの、サブサハラはこのような恩恵を受けていない。途上国向けの直接投資は世界で約600億ドルに達しているが、南アを除くアフリカ全体ではわずか7億ドルである。貿易もまた全世界の貿易量の1%にも達していない。

    3. アフリカにおける成功例
      1. アフリカ製品の競争力について
        アフリカ製品のいくつかの分野では、労働コストの低さが原動力となって競争力をつけてきている。
        例えば、衣料品はインド産と比較しても安価であり、アメリカのアパレル・メーカーはアフリカの一部の国々で生産を開始している。また、シアーズ、ウオール・マート、モンゴメリー・ワードやザ・ギャップといったアメリカの小売り業者がアフリカから調達を開始している。米市場で成功していることは、ガーナの繊維製品に対して新たに輸入数量割当てが課されたことでも明らかである。

      2. 民営化について
        タンザニアでは、カシューナッツ、コーヒー、綿花の輸出が自由化された。これに伴い、外資系の民間の業者が参入し、輸出も増えはじめた。ウガンダでは、3年前にコーヒーの専売公社が廃止され販売コストが大幅にダウンし、外国からの直接投資も大きく伸びた。ガーナでは60年代初めに金の採掘が31トンであったのが、84年には8.5トンに落ち込んだ。しかし80年代半ば以降、国有鉱山が民営化され、今や50トン以上の産出を誇っている。

    4. 世銀の取り組み
    5. 80年代半ば以降、世銀の民間へのサポート内容は以下の5つのカテゴリーに分かれている。
      第1に、民間部門の発展にとって不可欠なマクロ経済の安定化を促進することであり、これは調整貸付を通じて行っている。
      第2に、インセンティブの枠組みを合理化することである。例えば非関税障壁や独占、専売制度の廃止を促進している。
      第3に、ビジネス環境の改善を図るために政府と協力して、経済の効率性を高めるよう努めている。コートジボワールやギニアではインフラ整備において民間資金の導入を促した。
      第4に、多くのアフリカの国々では、公的企業の赤字がGDPの10%〜15%にのぼっているが、調整貸付や技術支援を行なうことによって効率化を図り、また資産の売却を行なうなど民営化を加速させている。
      最後に、金融部門の整備によって、競争力を高めることである。競争原理を導入し、現実的な金利体系にすることで、健全性の確保に努めている。


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