なびげーたー

情報化社会に必要な制度・慣行の見直し

産業政策部長 太田 元


21世紀の情報化社会に備えて情報通信市場を競争的な枠組みに変えることと並んで、情報通信の利用を想定していない制度や慣行の見直しが重要である。

技術が進歩し、経済環境が変化するなかで、さまざまな制度や仕組みが陳腐化していく。21世紀を左右するともいわれる情報通信の発達は、ビジネスや個人の生活はじめ社会の隅々まで変革を迫るものと考えられている。

政府は、行政の情報化を進めるため5カ年計画を策定したほか、高度情報通信社会推進本部や行政改革推進委員会において制度見直しや規制緩和の観点から、法律によって保存を義務づけている書類の電子保存のあり方、申請・届出手続きの電子化・ペーパーレス化等の課題に取り組んでいる。通産・郵政両省においても検討が行なわれており、通産省は、所管の法律について省令・告示などで、書類が再現できることが担保されるなどの一定の用件の下で電子保存を認める方針を明らかにしている。

経団連では、本年1月、高度情報通信ネットワーク社会を実現する上で重要な情報通信市場のあり方について意見を発表した(「今後の情報通信市場のあり方に関する見解」)。その中で、市場を活性化させるためには、規制緩和を中心とする競争促進的な枠組みの構築が必要であるなどの提言を行なった。

一方、かかる市場の活性化を踏まえて、情報通信を活用するには、企業はじめ行政分野や社会全般の情報ネットワーク化も不可欠である。しかしながら、現状は情報通信の利用を想定していない諸制度がネックとなりつつあり、わが国が情報化の面で米欧などに後れをとることになりかねない。

そこで、去る4月、会員企業を対象にアンケートを実施し、企業活動および公共サービスの効率化・高度化、新事業創出のための情報化などに係わる現行制度の問題点と改善意見を調査し、要望をとりまとめることとした。まだ集計の途中であるが、目立った意見を挙げると、電子保存については法人税法に基づく帳簿や労基法に基づく賃金台帳等に関するもの、申請・届出の手続きに係わるものでは、オンラインサービス(例えば住民票の交付)の実現、また、遠隔学習に対する単位の付与、遠隔医療の診療報酬の整備、テレビ会議による取締役会の開催についての指摘などがある。新しい問題として、電子商取引において何をもって契約とするかといった指摘もある。

いずれにせよ、これらの問題の中には社会システム全体に係わるものもあり、会員各位の協力を得て、高度情報化に相応しい制度の構築に向けて絶えず見直していく必要がある。


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