国際産業協力委員会(委員長 中村裕一氏)/4月24日

OECD非加盟国の理解と参加が重要課題

―多国間投資協定(MAI)交渉


OECD加盟国政府が行なっているMAI交渉は折り返し地点を迎えようとしている。国際産業協力委員会では、交渉の副議長である外務省国際機関第2課齋木課長より説明を聞いた。
以下は齋木課長の説明の概要である。

  1. MAI交渉の背景
    1. WTOの発足で国際ルールが確立された貿易分野と異なり、投資の分野にはグローバルな包括的ルールがない。投資は、現地に入り込んで生産活動を行ない利益を国外に送金するという複雑な活動であるためだ。

    2. OECD加盟国は、既存の2国間投資保護協定等で投資を律することは難しいとの認識を強め、MAI交渉を開始した。

    3. OECDはこれまで、国際的なコンセンサス形成のためのディベートの場を提供してきた。今回のMAIのように国際条約の交渉を行なうことは異例である。WTOで交渉すべきとの声も根強い。

  2. 交渉の場と非加盟国の参加
    1. 先の四極通商閣僚会議の共同コミュニケは、WTOシンガポール閣僚会議での貿易と投資に関するワーキング・グループの設置を目指し、四極がWTO本部での準備のイニシアチブを取るとしている。

    2. OECD加盟国は、非加盟国が交渉に加わることで本来望んでいる高水準の条約ができなくなることを懸念し、むしろできあがったMAIに非加盟国が順次加入するという方法が望ましいと考えている。これに対し、わが国は、MAI交渉の過程で非加盟国の意見を取り入れるべきだと主張している。

    3. 途上国の大半は、WTOのTRIMs、TRIP、GATSに含まれる投資ルールを守ることで手一杯であり、現状では新たにマルチの投資ルールは必要ないと考えている。ただし、チリやアルゼンチンなどラ米諸国はMAIに前向きであり、条約策定後参加したいとの意向を表明している。

    4. WTOでは、参加国が多様なために議長選定、討議項目や交渉期間の設定等の調整に時間がかかる。そのため、来年5月のOECD閣僚会議でMAI交渉が一応の期限を迎えるまでに、WTOにおいて投資に関する交渉が立ち上がることはないと予想されている。

  3. 第6回交渉(4月18・19日)の合意事項
    1. OECD非加盟国に対して交渉の節目毎に議長等から説明を行ない、理解を求める。

    2. 米国などの州レベルの履行確保、EUなど地域経済統合における例外措置について、今後、継続して検討する。

    3. 条約策定に加えて、何らかの自由化交渉を行なう。なお、自由化交渉の方式につき、わが国より、通常の2国間貿易交渉におけるリクエスト・アンド・オファーではなく、多国間で1国ずつ目標と成果をレビューするピアプレッシャー方式が望ましいとの提案を行なった。


くりっぷ No.33 目次日本語のホームページ