第19回日本カナダ経済人会議結団式(団長 江尻宏一郎氏)/5月7日

アジア太平洋を重視するカナダ


5月13〜14日に福岡で開かれる第19回日本カナダ経済人会議に向けて、結団式を開催した。席上、河野外務省北米第一課長、鈴木通産省通商政策局北米通商調整官、キャンベル駐日カナダ大使から、カナダの政治・経済状況は概ね良好で、クレティエン政権はアジア太平洋を特に重視しており、97年のAPECバンクーバー会議に向けた日加協力、アジアをはじめとする第3国プロジェクトでの協力、草の根レベルの交流の拡大が望まれるとの発言があった。

江尻団長

  1. 河野北米第一課長説明要旨
    1. 高支持率を維持する自由党政権
    2. 84年以来続いた進歩保守党政権に代わり93年に発足した自由党のクレティエン政権は、現在に至るまで50%台の支持率を維持している。公務員の大幅削減などの結果、財政赤字は発足当初の対GDP比5〜6%から96年末には3%に下がる見通しである。
      95年10月末のケベック州民投票では、 0.8%の僅差で辛うじて独立が否定されたが、カナダの統一性の維持が今後の課題となっている。
      ケベック州政府は当面、経済問題中心に取り組むとみられるが、97年頃に予想される総選挙の結果次第で独立への動きが再燃する可能性がある。クレティエン首相は96年1月の内閣改造でケベック州の若手を閣僚に登用するなど、総選挙をにらんだ措置をとっている。

    3. アジア太平洋重視の外交政策
    4. クレティエン政権は発足以来、アジア太平洋担当閣外大臣の任命、首相自身のアジア歴訪など、アジア太平洋重視の姿勢を打ち出している。97年はバンクーバーでAPEC首脳会議が開催されることもあり、「アジア太平洋の年」とされている。
      カナダはミドル・パワーとして、国際機関での役割を重視している。アジア太平洋をはじめ国際場裏における日本との協力が不可欠であるとして、北方領土問題などにつき日本の立場を支持している。また国連平和維持活動(PKO)の先進国として知られ、96年2月に日本がゴラン高原PKOに部隊を派遣した際には、部隊間交流などを通じ協力した。
      日加間の交流の厚みを増すことが今後の課題である。数年前に設置された「日加フォーラム2000」のような賢人レベル交流を続けていくことが検討されている。東京−オタワ間のみならず、地方間の草の根交流を増やすことも重要であろう。

  2. 鈴木北米通商調整官説明要旨
    1. カナダ経済はやや減速
    2. カナダ経済は92年以降回復基調にあるが、95、96年は若干減速している。政府・民間双方で進む人員削減のため国内需要が弱まっている一方、輸出依存度37%という数字に見られるように、輸出力は強い。

    3. バランスのとれた日加通商関係
    4. 日加間の貿易は、ほぼ均衡している。最近は、日本の対加輸出が自動車メーカーの現地進出などの影響で減少傾向にある一方、カナダの対日輸出は伸びている。カナダからは木材、パルプ、石炭、食糧品など、日本からは自動車、原動機、自動車部品などを輸出している。個別分野を対象とする通商問題はなく、良好な通商関係といえる。
      日加間の投資は減少傾向にある。北米自由貿易協定(NAFTA)の影響でカナダからメキシコへ投資先をシフトするケースが増えている。カナダとしては、一層魅力的な投資環境を整備する必要があろう。
      カナダの金利は95年以降急低下している。この傾向は96年夏頃まで続く見通しである。

    5. 最近の主要課題
      1. NAFTAの整合性については、世界貿易機関(WTO)の場で議論されている。
      2. 米加間に60年代からあるAuto Pact の対象企業とその他の企業とで自動車関税に差があり、政府としても善処を要請している。
      3. カナダは日本政府に住宅・建材、酒税、流通、農林産物などの分野における規制緩和を求めている。
      4. カナダは対日アクション・プランを発表して輸出促進に努めており、日本政府もこれに協力している。
      5. 製造技術者交流プログラムとして、カナダ人技術者が日本の工場で研修している。

  3. キャンベル大使挨拶要旨
    1. 貿易は順調に拡大
    2. 95年の日加貿易(輸出入計)は前年比15%増で240億カナダ・ドルに達し、ほぼ均衡している。カナダ側では住宅・建材、牛肉、鉱業、金属、コンピュータ・ソフトなどの分野で新たな機会が生まれている。カナダ経済の競争力強化、日本経済の回復は、さらなる貿易の拡大に資する。
      カナダの競争力は、日本からの直接投資の増加にも現れている。特にトヨタ、ホンダなどの既進出企業による大型再投資は、カナダでの自動車組立能力を2倍に増大させた。
      日加間の人の移動も、ビジネスマン、観光客を中心に、順調に伸びている。

    3. 日加協力のための行動計画
    4. 日加間に既にある良好な関係を継続させるために、
      1. 対日アクション・プランに基づく輸出促進努力、
      2. 第三国プロジェクトでの日加協力、
      3. 日本の住宅分野における規制緩和、
      4. 訪カナダ経団連ミッションの派遣
      などの実施に期待したい。

    5. 日加経済人会議への期待
    6. 97年は「アジア太平洋の年」であるが、そこでビジネスが果たす役割は重要である。来年トロントで第20回を迎える日本カナダ経済人会議は、新時代に入りさらにエキサイティングな可能性を秘めている。その役割に期待したい。


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