農政問題委員会食品工業政策部会(部会長 浅田健太郎氏)/4月25日

条件不利地域における農業政策について聞く


農政問題委員会食品工業政策部会では、食品工業の原料調達問題の改善に係る報告書のとりまとめに向けた検討を行なっている。今回は、ダイエーから、食品工業への期待・要望等について説明を聞くとともに、東京大学農学部の生源寺助教授から、条件不利地域における農業政策について説明を聞き、意見交換を行なった。

  1. 条件不利地域における農業政策
  2. 生源寺東京大学助教授説明要旨

    1. EUの条件不利地域政策
      1. EUでは、共通農業政策(CAP)として、1960年代後半から、基本的な農産物について、政府系買入機関の市場介入による価格支持政策を行なっている。併せて、75年以降、条件不利地域の農家に対する直接所得補償を行なっている。
        具体的な施策は国ごとに異なるが、一般に、
        1. 地域指定をきめ細かく行なう、
        2. 経営のタイプにより補償対象を限定する、
        3. 地域条件に応じ段階的な補償条件を設定する、
        4. 補償対象を原則3ha以上の規模に限定する、
        等が特徴としてあげられる。

      2. CAPは92年に大幅に改革され、94年末にはUR農業合意が成立したが、条件不利地域政策は従来通り維持されることになった。

      3. イギリスやフランスでは、条件不利地域の農業所得に占める補償金の割合が7〜9割を占めている。他方、兼業機会の多いドイツでは、補償金依存度は低い。

    2. 中山間地域政策の確立にむけて
      1. わが国における中山間地域政策の検討に当たっては、政策目的の明確化が求められる。歴史的・文化的遺産の保全、居住環境維持、自立農家育成など、政策目的を明確にし、目的に適合した政策手段を講ずるべきである。

      2. 自立農家を育成する上では、労働力の不足を考慮すると、粗放的な農業を目指すことも検討すべきである。
        また、平場に対し比較優位にある作物の開発や多角化も重要である。少なくとも稲作については比較優位にあるとはいえず、見直しが必要である。
        さらに、農業制度金融など、既存の農業政策は、運用面において中山間地域農業に不利に働いている面があり、見直しが必要である。

  3. 意見交換
  4. 問:
    比較優位性の追求は、農業に限らず、他産業も含めて検討を行うべきではないか。
    答:
    加工・外食など他産業との連携も必要であるし、場合によっては林業や原生的な自然への回帰も考えられる。


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