インドシナ研究会(座長 荒木正雄氏)/5月22日

ラオスのソムサワート外務大臣と懇談


ラオスは、86年に市場経済化の改革路線を打ち出してから、安定的な経済運営に成果を上げている。メコン河の水資源を活用した開発に力を入れるほか、隣国タイとの経済関係が拡大するなか、97年のASEAN加盟を目指して準備作業を進めており、市場のフロンティアとしても将来の発展が期待される。ソムサワート外務大臣から、最近のラオス情勢やASEAN加盟にかける期待などについて聞いた。
なお、同外務大臣は、研究会の後、豊田会長にも面会した。

ソムサワート外務大臣

  1. 外務大臣説明要旨
  2. 96年3月に第6回人民革命党大会が開催された。86年の第4回党大会で「新経済メカニズム」が国家目標とされ、その後、市場経済化に基づく経済改革路線が続けられている。今回の党大会では、この改革路線の継続が再確認された。過去10年間の改革は多大な成果を上げている。86年〜90年の実質GDP平均成長率は4.8 %で、91年〜95年については6.4 %であった。今回の大会では96年〜2000年までの経済成長率を8%〜8.5 %に引き上げることを決定した。目標達成のために最大限努力する。対外開放路線は継続される。

    ラオスはASEANへの加盟を希望しており、またASEAN諸国もラオスの加盟を歓迎している。今年7月にインドネシアで開催されるASEAN外相会議でラオスの加盟について正式に合意される予定である。ASEAN加盟によってラオスは、ASEAN地域ひいては世界市場と結びつくことになる。

    日本は、ナム・ルック水力発電所計画に対してアジア開発銀行との協調融資による円借款供与を検討している。優先順位の高い案件に対して円借款が受けられることを希望する。

    日本からラオスへの投資はまだまだ少ない。今回の訪日によって相互理解が深まり、ラオスへの投資が増えることを願っている。政府開発援助の分野では日本はラオスにとって最大のドナー国である。ODAと同じように日本の民間企業による投資も第1位になってほしいと思う。経団連でもラオスへの投資を増やす方策について研究してほしい。その意味で、今年7月の「経団連訪メコン河流域開発協力ミッション」のラオス訪問に期待している。メコン河流域の総合開発計画は、世界的に注目を集めている。韓国もメコン開発に強い関心を示しており、近くミッションが来ると聞いている。経団連ミッションがラオスへの投資を促進するきっかけになれば良い。ラオス政府としては、あらゆる便宜を図り、協力したい。ラオスにとって日本は最も大切な国のひとつである。

  3. 懇談
  4. 経団連側:
    優先的な投資分野はどこか。
    ブンオム外国投資管理委員会局長:
    環境に悪影響のあるもの、政治的な安定を揺るがすもの、従業員の健康に悪影響のあるものなどを除き、すべての分野への外国投資を歓迎する。ラオスの比較優位は何かについて日本企業でも研究してほしい。ラオスは地下資源や水資源に恵まれている。最近はメコン河流域の広域的な開発協力の動きが注目されている。国際機関や域内各国政府の協力によって地域全体を繋ぐインフラ整備計画が立案されている。外国投資管理委員会としても、ラオス外務省と協力して経団連ミッションが成果を上げられるよう協力する。
    外務大臣:
    タイの電力需要は増加の一途を辿っており、ラオスはタイと電力供給契約を結んでいる。ベトナムとの間でも契約を結んでいる。カンボジアとはまだ契約していないが、電力需要は増加している。

    経団連側:
    中国はメコン河上流に14のダム建設計画を持っていると聞く。中国とは、どのような話をしているのか。
    外務大臣:
    メコン河委員会は、カンボジア、ラオス、ベトナム、タイで構成されているが、中国の計画についても下流域への影響などについてメコン河委員会で検討することになっている。

    経団連側:
    優先順位の高いODAプロジェクトは何か。
    外務大臣:
    インフラ整備、農業、運輸などである。

    経団連側:
    ASEAN諸国ではBOT方式やBOO方式によるインフラ案件が増えている。ラオスの場合はどうか。
    ブンオム局長:
    水力発電の分野ではBOT方式によって外国企業に便宜を与えている。政府と民間企業との契約に基づくものである。水力発電は、すべてを海外に輸出するのではなく、そのうち10%程度は国内用である。国内向けのプロジェクトについてもBOT方式が使える可能性はあると思う。

    経団連側:
    2000年までの経済計画では、工業のどの分野に重点が置かれているのか。
    外務大臣:
    電力開発を重視している。セメントの製造や鉄鉱石を活用した工業化も考えているが、2000年までに資源調査が終わるかどうかわからない。その他、衣料品を国内で加工して輸出を増やしたい。

    経団連側:
    環境保護への対策はどうか。
    ブンオム局長:
    環境保護対策はラオス政府にとって重要な課題である。外国投資家に対しても環境問題への配慮を求めている。国際的な環境保護に関する基準と同じようなものを整備している。

    経団連側:
    運輸分野の現状はどうなっているのか。
    外務大臣:
    運輸関係のインフラは日本などからの無償援助によって改善している。貨物輸送量の8割程度は陸上輸送(道路)であり、水上輸送(河川)は2割程度である。メコン河は急流や浅瀬が多いため、輸送量には限界がある。旅客輸送については、9割以上が陸上輸送である。


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