第542回常任理事会(議長 豊田会長)/5月14日

この明るい兆しをしっかりしたものに

―証券市場の機能強化に向けて―


第542回常任理事会において、東京証券取引所理事長の山口光秀氏より、現在のわが国証券市場の現状、今後の課題と機能強化への取り組みについて話を聞いた。山口理事長は「ようやく明るさを取り戻しつつあるわが国の証券市場を、本格的な回復軌道に乗せるためには、対症療法的な改革ではなくて、基盤となっている制度全体を見直し、国際的に通用するものに改革していくことが必要である。」と指摘した。以下は講演の概要である。

  1. 証券市場の今後の課題
  2. ここ数年、極度の不振に陥っていた証券市場にも、今年になってようやく明るい兆しが見えはじめた。今後、これを本格的な回復に繋げていくためには、すべての市場関係者が、国際的な競争力のある証券市場の早急な確立の必要性を認識した上で、国際的な市場間競争の本格化への適切な対応と、経済が構造的に抱える課題への証券市場サイドからの対応を図ることが、非常に重要である。

  3. 証券市場の機能強化への取り組み
  4. 東証は以下の措置を実施している。
    1. 内国株市場の拡充
      上場審査基準および子会社上場要件の緩和ならびに上場基準の特則の制定を本年1月に実施した。
    2. 信用取引銘柄の拡大、一般気配の直接提供
    3. 外国株市場の整備・充実
      1. 外国株の上場基準を緩和し、売買取引・決済制度およびコスト面などの整備を行なっている。
      2. アジア地域の企業の新規上場の実現に向けて努力を重ねてきた。
    4. 上場商品の多様化(中期国債先物の上場)
    5. 証券市場に対する理解向上
      投資者向けセミナーを頻繁に開催し、また中・高校生を対象とした株式学習ゲームを実施するなど、若年層への証券教育の充実を図っている。

  5. 上場会社への要望事項
  6. 上場会社には以下のことをお願いしたい。
    1. 株式投資魅力の向上
      1. ROE(自己資本利益率)を重視した経営姿勢への転換。
      2. 配当性向や株主資本配当率等に配慮した配当政策の実施。
      3. 自己株式の利益消却の積極的な活用等。
    2. 投資環境の整備
      1. 投資単位の引下げの実施。
      2. ディスクロージャーの一層の充実。
    3. 決算発表、株主総会の集中化の改善

  7. 証券税制の要望など
  8. 証券市場の機能強化などの観点から、証券税制や諸規制の見直しも重要である。

  9. おわりに
  10. 国民が「証券市場は国民の重要な財産である」という認識を持ってこそ、真に魅力ある証券市場の創造も可能になる。今後とも国民各層へPR活動を続けていきたい。


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