日本イラン経済委員会(委員長 相川賢太郎氏)/5月24日

イランの外交政策と国内政治・経済情勢


イラン・イスラム共和国では、ラフサンジャニ大統領のもと、95年より経済の自由化を柱とした第2次経済5カ年計画を進めている。また、4月に国会議員選挙が行なわれ、今後の経済・社会改革の動向が注目されている。そこで、日本イラン経済委員会では、モッタキ駐日イラン・イスラム共和国大使を招き、イランの外交政策と国内政治・経済情勢について説明を聞くとともに懇談した。

相川委員長

  1. モッタキ駐日大使発言要旨
    1. イランの外交政策
    2. 21世紀、ペルシャ湾は炭化水素エネルギーのメイン・サプライヤーとして国際エネルギー市場において重要な役割を果たすことになる。また、中央アジア、コーカサス、カスピ海地域も新たな石油生産拠点になる可能性が高い。これらの地域に囲まれたイランは、エネルギー生産拠点としてだけでなく、輸送拠点としてもその役割を高めていくことになるであろう。
      さらに、地理的、歴史的、文化的共通点の多いペルシャ湾、中央アジア、コーカサス地域の安定と平和を実現するために、地域協力関係の構築に努めていく。
      5月13日、イラン側のマシャド・サラフス間とトルクメニスタン側のサラフス・テジェン間の鉄道開通式が行なわれた。この鉄道は、中央アジア諸国の国際市場へのアクセスを容易にするのみならず、3億人の人口を有するECO(経済協力機構)10カ国間の協力関係強化にもつながる。
      ペルシャ湾は世界の火薬庫と言われてきたが、イランは常にアラブ諸国と平和的対話を行なってきた。数カ月前にはペルシャ湾沿いの国々の参加を得て、アラブ諸国に侵略行為を行なわないという安全保障の枠組みを提案した。
      中東和平とテロについては「イランは一連のテロの犠牲者であり、いかなるテロにも断固反対する。イランは、パレスチナの独立を求めるハマスの活動は支持しても、テロ行為は支持しない。対話であれば、われわれはいつでも歓迎して受ける」とラフサンジャニ大統領がかねてより述べている。

    3. 国内政治・経済情勢
    4. 4月に第18回国会議員選挙が行なわれ、2,400万人の有権者のうち80%が投票した。イランは1906年から議員制度を有する民主主義国家である。すべての政治団体はイスラムの基本原則に忠実で、選挙終了後の政治情勢は安定している。
      現在推進している第2次5カ年計画では、GDP伸び率を年平均5.1%、1994年〜1999年の政府総支出を1,360億ドル〜1,400億ドルに設定している。主な概要は、
      1. 石油関連産業の代替産業を育成する、
      2. 貯蓄増加により、主要セクターへの投資を促進する、
      3. インフラ・プロジェクトへの外資導入を推進する、
      4. 国有企業を民営化するとともに、民間企業への政府関与を逓減する、
      5. 法律を整備し投資環境を向上させることにより民間投資を促進する、
      などである。
      イランは、中東地域の安定と平和のためには地域協力の推進が必要と考えており、中東地域をカバーするガスパイプラインの調査を進めている。資金とノウハウの面で、日本企業の協力を仰ぎたい。
      また、ケシュム、キシュ、シャバハール、サジャンなどの自由貿易区を安価な労働力、低エネルギーコスト、6,000万人の人口を有するイラン市場へのアクセス、中央アジアへの輸出拠点としてご活用いただきたい。

  2. 懇 談
  3. 経団連側:
    商業銀行のL/Cの決済状況について伺いたい。
    モッタキ大使:
    商業銀行のL/Cは、大蔵省のサポートを受けたものであれば、基本的に中央銀行のL/Cと同じと考えてよい。イランでは、92年に債務の支払い遅延問題が生じたが、93年より債券国側に債務救済を求め、その後、支払いを着実に実行している。第2次5カ年計画には、対外債務の確実な返済についての項目を盛り込み、海外からの信用を得るための努力を払っている。

    経団連側:
    米国のダマト法案はまだ可決されていないものの、既にイランへの貿易・直接投資にかなりの影響を与えているように思う。ダマト法案に対するイランの対応について伺いたい。
    モッタキ大使:
    幸いなことに、EUは「ダマト法案は米国内の法律であって、外国企業に適用することはできない。このようなWTOに反する動きを受け入れることはできない」との姿勢を保ち、ブリタンEU副委員長が米国に抗議文を送ったと聞いている。
    イランは、ダマト法案をユダヤ人票を稼ぐための大統領選挙キャンペーンとしてしかみていない。
    第3国の政治的宣伝のために日本とイランの関係が停滞、もしくは後退してしまうことがどれだけ両国に損失をもたらすか考慮してほしい。EUとイランの関係は着実に強化されていく一方で、ひとり日本が取り残されることのないように留意すべきである。


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