第114回関西会員懇談会/6月6日

震災被災地の復興へのプロジェクトが続々


「阪神・淡路大震災被災地の復興と当面の経済運営」をテーマに標記懇談会が開催された。
今回は、被災地の復興状況を少しでも実感し、また復興進展への願いを込めて、懇談会の会場を大阪から神戸に移して開催した。懇談会に先立ち、豊田会長、久米・関本・伊藤・樋口・今井・古川の各副会長が、神戸港の復興状況等を視察した。
懇談会では、来賓として、貝原兵庫県知事、笹山神戸市長が挨拶するとともに、牧神戸製鋼所相談役、川上住友電気工業会長をはじめ、関西地区の会員から、各般の復興プロジェクトやその推進のための諸課題が提起された。それに対して豊田会長は「被災地の産業復興を、経済界をあげて積極的に支援していく」と応えた。

  1. 震災地の復興状況
  2. 豊田会長はじめ経団連一行は、関西国際空港から海路、神戸ポートアイランドに向かい、船上から神戸港内を視察するとともに、六甲アイランドに上陸して輸入住宅展示場や仮設住宅などを視察した。船上、港湾の復旧状況につき神戸市の江口港湾整備局長から「震災前のコンテナクレーン稼働バース35、コンテナクレーン55基に対して、17バース35基が稼働、24時間・365日荷役体制の確立により、神戸港の空洞化を食い止めている」との説明を受けた。また、神戸製鋼所の横山常務取締役から、WHO神戸センターなどを核とする「神戸東部新都心計画」について説明を受けた。

  3. 関西側発言
    1. ソフト面の施策重視の復興を
      ―貝原俊民 兵庫県知事
    2. 道路・港湾などの復旧は着実に進んでおり、また98年の明石大橋や山陽自動車道の開通、関空2期工事の着工によって神戸は、国内外の交通の結節点となりつつある。
      しかし、被災地の経済・雇用の状況は停滞している。アジア太平洋時代においては、ハード面のみならず、ソフト面での施策の充実を図り、新しい社会システムを作り上げていかなければ、真の経済復興は実現できない。今後、そのためのアクションプランを作って推進していきたいと考えているので支援願いたい。

    3. 規制緩和推進の「モデル地区」創設を
      ―笹山幸俊 神戸市長
    4. 震災後、市内の人口は約10万人も減少した。市内の全産業中、観光関連産業の従業員数は約2割を占め、港湾関連事業の復興と並んで観光業の復興も重要な課題である。
      被災地の経済復興のために、経団連が提唱する、「モデル地区」(一定区域内での特例的な規制緩和の実施等)の創設が神戸で実現されることを望んでいる。

    5. 神戸をメディアポートに
      ―牧 冬彦 神戸製鋼所相談役
    6. 集客・観光産業の振興を図るため、これまで5月に開催していた神戸まつりを7月20日に開催することとし、京阪神の3商工会議所とともに「京阪神三都夏まつり」として、京都の祇園祭、大阪の天神まつりと連携させることとした。
      また、マルチメディア関連産業の集積を目指したKIMEC構想も神戸リサーチセンターのオープンなど進展が見られる。神戸をメディアポートとしても発展させたい。

    7. マルチメディア産業の振興を
      ―川上哲郎 住友電気工業会長
    8. 復興には、伝統産業の再生と同時に新産業・新事業の創造が必要である。ネットワークとバーチャルリアリティ技術の進展により、例えば「けいはんな」から、奈良・京都の歴史的資産を臨場感あふれる形で神戸の博物館に展示することができる。KIMEC構想は、近隣の優れたソフトとの連携・集積効果を図るものであり、大阪湾ベイエリアをサンフランシスコ・ベイエリアに匹敵するようなマルチメディア産業の拠点としたい。

    9. 新産業創造研究所を設立したい
      ―大庭 浩 川崎重工業社長
    10. 現在、兵庫県、神戸市、産業復興推進機構、および地元企業を中心に、産業復興の核となる「新産業創造研究所(仮称)」を設立すべく検討を進めている。これは、基盤産業技術の研究を特徴とする米国マサチューセッツ工科大学を中心に国内外の先端的研究機関のシーズを活用することを目的とするものである。政府、経団連、関経連の支援をお願いしたい。

    11. 上海・長江交易促進プロジェクト
      ―太田俊郎 ノーリツ会長
    12. 歴史的なつながりが深い上海・長江経済圏と阪神経済圏を結び付ける、上海・長江交易促進プロジェクトは、従来、上海などで外洋用大型船舶から河川用船舶に積み替えていた貨物を、直接河川用船舶で運搬する方策を確立しようという試みである。これは中国を米国に次ぐ第2位の貿易相手国とする神戸港のみの問題ではなく、日本の国家的課題である。

    13. 民活法適用範囲の拡充を
      ―亀高素吉 神戸製鋼所社長(フロア発言)
    14. 構造改革を成し遂げ、安全、健康で住み心地のよい都市づくりを推進するためには、起業家が都市に入りやすい環境をつくることが必要である。民活法の適用範囲を拡大し、民間企業にも第3セクター同様、NTT無利子融資等が受けられるようにしてほしい。

  4. 経団連側発言
  5. 「復興に港、ハイカラなセンス、美しい環境という特性を活かせ」(関本副会長)、「中央地方一体となった税制改革への取り組みを」(久米副会長)、「弾力的な財政により復興に効果的な政策を」(伊藤副会長)、「復興に役立つ規制緩和を」(今井副会長)、「上海・長江交易プロジェクトに協力する」(樋口副会長)といった発言の後、豊田会長が「阪神・淡路地域の産業復興は緊急の課題であり、経済界を挙げて支援していく」と締めくくった。


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