経団連くりっぷ No.36 (1996年 7月11日)

第576回理事会/6月18日

総会屋等への対応について警察庁から呼びかけ


株主総会を控え、林・警察庁暴力団対策部長から、総会屋等の反社会勢力からの要求に対しては断固として対処しこれを排除するよう呼びかけがあった。その後、豊田会長から会員各位に対して、経団連「企業行動憲章」の精神に鑑み然るべく対応いただくよう要請がなされた。以下は林部長の説明概要である。

  1. 先般の暴力団系勢力への巨額の資金供与事件を受けて、豊田会長から、経団連会員企業に対して、経団連「企業行動憲章」に鑑み企業行動を総点検するよう呼びかけていただいたが、本日、改めて総会屋等への対応についてお話ししたい。はじめに結論から言うと、総会屋等からの要求に対しては断固拒否し、警察とも連絡を密にしながら、総会屋の介入を絶対に許さないということにつきる。

  2. 先般の事件がわれわれにとりショッキングだったのは、企業行動や行政に一層の透明性・公正性が求められ、また、株主代表訴訟が簡易に行なわれる時代において、刑罰等をもって担保される最低限のルールとして、総会屋等への利益供与は絶対してはならず、また、これが企業自体を破滅させかねないという事実が、一部企業経営者に十分理解されていなかったということである。

  3. 企業防衛には、為替等外部要因に対応するマクロの危機管理と、反社会勢力からの不当な要求等に対応するミクロの危機管理とがある。各企業とも前者には情報収集・分析能力を全社的に高めているが、ミクロの対応については、総務や広報等の一部の部署に任せて事足れりとしているところが依然として少なくない。

  4. 企業や行政の行動に対する社会の監視がより一層厳しくなる時代において、株主総会で各株主の疑問に答えず、総会屋等を使ってこれを抑止することは不可能である。それにも関わらず、ある調査では上場企業の担当者の3分の2が総会屋等に対して何らかの利益供与をしたことがあると回答しているように、企業の法律遵守意識は依然として高くない。

  5. これを是正するためには、経営トップが、反社会勢力からの不条理な要求を断固拒否することを全社的に徹底し、そのために長時間総会となっても自ら受けて立つ旨、総会担当者をバックアップすることが肝要である。さらに、必要な場合は、刑事事件として処理すべきである。まずは短時間の総会が評価される時代は終わったことを認識されたい。なお、総会では株主の意思が最優先であり、一部の無理な要求に対しては、場内の多数の株主の支持を得て議事を進行すれば商法上何ら問題はない。

  6. 総会屋等に対しては一度妥協すると、最終的には巨大なつけが回ってくる。最初に毅然たる対応を行なうことが最良の対策である。


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