経団連くりっぷ No.36 (1996年 7月11日)

WTO閣僚会議に向けた貿易課題に関する懇談会(座長 北岡 隆氏)/6月20日

WTO閣僚会議に向けて、議論が進展


95年1月に設立されたWTO(世界貿易機関)は、本年12月にシンガポールで第1回閣僚会議を開催する。閣僚会議はWTOの最高意思決定機関であり、今後のWTOの活動、ひいては世界貿易秩序に多大な影響を与えるとみられる。貿易投資委員会では、最近の主要国際会議におけるWTO閣僚会議に向けた議論の進捗状況について、佐野忠克通産省通商政策局国際経済部長より聞いた。

  1. 主要国際会議とWTO閣僚会議
    1. WTO閣僚会議に向けて、4月の四極貿易大臣会議(神戸)、5月のOECD閣僚理事会等を経て、議論が進んでいる。

    2. 今後、6月末のリヨン・サミット、7月のAPEC貿易大臣会議、9月の四極貿易大臣会議、11月のAPEC閣僚会議・非公式首脳会議などが節目となり、WTO閣僚会議での議論の内容が固まっていく。

  2. WTO閣僚会議に向けての課題
    1. 四極貿易大臣会合においてWTO閣僚会議への課題として以下の点が議論された。
      1. ウルグアイラウンドの実施状況の点検
      2. サービス分野の継続交渉(基本電気通信、海運サービス)
      3. 報告事項である貿易と環境
      4. ITA(情報技術協定)、ウルグアイラウンド合意の前倒し、政府調達・贈収賄と汚職等さらなる自由化
      5. 貿易と投資、貿易と労働基準、貿易と競争政策などの新たな課題

    2. OECD閣僚理事会においても上記とほぼ同様の議論がなされた。ただし、貿易と投資の問題については、目下OECDで交渉中のMAI(多国間投資協定)の進展に努力すべき点が強調された。

  3. 主要課題の最新の論点
  4. 現時点における主要課題の論点は以下のとおりである。

    1. 電気基本通信
      本年4月30日の交渉期限までに合意に至らず、来年2月に期限を再設定。交渉を継続する。

    2. ITA(情報技術協定)
      情報関連の新製品・新技術(コンピュータ関連、半導体、製造装置等)の関税をゼロにしようという提案であり、日米などはWTOベースでの議論を目指している。

    3. 貿易と投資
      閣僚会議における作業部会設置に向けて、ジュネーブに非公式作業部会を設置する。

    4. 貿易と労働基準
      団結権等の基本権の整備を急ぐべきとする米国、WTOではなくILOやOECDで検討すべきとする日本等の間で調整中。

    5. 政府調達・贈賄と汚職
      外国政府への贈賄行為を罰する法律を持つ米国は、他の先進国企業にも同様の取り締まりを要求している。WTO閣僚会議の議題となるかどうかは未定。


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